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湘南理工学舎
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2023/08/07
2022/04/05

 楽しく学ぶ…物理数学
 ベクトル場の線積分
(line integral at vector field)
 --目 次--
ベクトルの内積
ベクトル場の線積分の基本式
曲線の接線ベクトル
ベクトル場の線積分に関連する式
ベクトル場の線積分の各式
例題1: \( F(x)=2x+1,\ xy \) \( (y=2x) \)
例題2: \( F(x)=2x+1,\ xy \) \( (y=x^2) \)
例題3: \( F(x)=1+y^2,\ 2xy\) \( (y=2x,\ y=x^2) \)
勾配ベクトル場の線積分
 **経路によらない積分**

始点と終点が同じ周回積分
   

  
 前回のスカラー場における接線積分に続き今回はベクトル場における線積分を学びます。
同じ線積分ですが、物理的な意味はことなります。
 ベクトルの線積分    (接線積分)
 ベクトル場の曲線C に沿った線積分(接線積分ともいう)の公式はいくつかあります。
2種類のパラメータ (媒介変数) と座標空間である x,y,z 表示による3つの式があります。
2つのパラメータとは以下に述べる弧長パラメータS と一般のパラメータt ですが、これらが混乱させている…かと思います。
ここではこれらを明確にしていくつもりです。
本題に進む前に!
ベクトルの内積を理解しておこう:  
力と距離の内積
   fig1 力と距離の内積
\(\bv{F}\)と\(\bv{L}\)の内積は次式で表せる。(ドット「\(\cdot \)」で示す)
\(\color{red}{\bv{F} \cdot \bv{L} }=|F||L|cosθ\)\(=|F|cosθ|L|=|F_t||L| \)
\(|F|cosθ=F_t\)はベクトル\(\bv{F}\) のベクトル\(\bv{L}\) への射影である。
\(\bv{F}\)(N) を物体に作用する力、\(\bv{L}\)(m) をその移動距離とすると:
ベクトル\(\bv{F}\)とベクトル\(\bv{L}\)の内積は \(F\) がする仕事を意味する。
仕事を例にすると、 内積は距離L とそれに平行なF の有効成分\(|F|cosθ\)の積である。
電力の場合も電圧ベクトルV と電流ベクトルI の内積が電力W である。
 \(P=V\cdot I=VIcosθ\)   電圧V に平行な電流\(Icosθ\) が有効電流である。
電圧V に平行でない電流 は無効電流となり、単に回路を流れる無駄な電流である。

その無駄電流は「抵抗のある電線」に流れ、熱が発生し、外部に放出される、エネルギーの損失を起こします。
超電導電線(電気抵抗がない)が実現されれば熱の発生なくエネルギーの損失を起こしませんね!
(\(θ\) を位相角といい、家庭や工場で使っている電気機器・装置により決まります。 )


ベクトル場の線積分の基本式 
先にベクトル場の曲線C に沿った線積分の1つを示します。
導出は後で行います。

\(\displaystyle \int_{C} \ \bv{F} \cdot \bv{u} ds\) \(=\displaystyle \int_{C} \ \bv{F} \cdot d\bv{r}\) \(=\displaystyle \int_{a}^{b} \ \bv{F} \cdot \frac{d\bv{r}}{ds} ds\)

・\(\bv{u}=\frac{d\bv{r}}{ds}\): 単位接線ベクトル
・\(\bv{r}\): 位置ベクトル
・\(s\): 弧長パラメータ
・\(t\): 一般パラメータ

\(F_u\) は \(\bv{F}\)の曲線Cの接線方向の成分とすると:
\(F_u=\bv{F} \cdot \bv{u}\)
上式は次式で表せる。

\(\displaystyle \int_{C} \ \bv{F} \cdot \bv{u} ds\) \(=\displaystyle \int_{c} \ F_u ds\)

 被積分項はベクトル場\(\bv{F}\) と単位接線ベクトル\(\bv{u}\) の内積であり、ベクトル場の線積分は 複雑な動きをする 物体の(微小)仕事の総和を示している。

積分経路の曲線の接線について説明します。
曲線の接線ベクトル  

接線について…思い出そう!
1変数の接線の方程式は:

\(f(x)=\color{red}{f'(a)}(x-a)+f(a)\)でした。
\(\color{red}{f'(a)}\)は「x の単位長"1"あたりのy の進み長」すなわち\(f(a)\)における単位接線です。
単位接線ベクトル1階微分の\(f'(a)\)に相当します。 
そして\(\color{red}{f'(a)}\)は次式で表せた。
\(\color{red}{f'(a)}=\displaystyle \lim_{h \to 0}=\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\) \(=\displaystyle \lim_{x \to a}\frac{f(x)-f(a)}{(x-a)}\)

力と距離の内積
   fig2 弧長S と接線r'
曲線の接線は上記と同様に次の位置ベクトル\(\bv{r}(t)\)の一階の微分式で表せます。
 \(\bv{r}\):曲線の位置ベクトル,   t :一般のパラメータ(媒介変数) として:
\(r'(t)=\frac{d\bv{r}}{dt}\)  \(= \displaystyle \lim_{Δt \to 0}\frac{\bv{r}(r+Δt)-\bv{r}(r)}{Δt}\) \(\ ❶\)
と表わせる。

次にベクトル場の線積分の各式を導くために使う式を示します。
本によって用いてしる式が異なります。(参考にして下さい) 

 ベクトル場の線積分に関連する式 

・\(\frac{d\bv{r}}{dt}=\bv{r}'(t)\) \(\ (a)\)

曲線の接線の式❶ より

・\(\bv{u}=\frac{\bv{r}'(t)}{|\bv{r}'(t)|}\) \(\ (b)\)

単位接線ベクトル\(\bv{u}\)は上記のようにベクトル\(\bv{r}'\)を自分自身の大きさで割ったものをいう。
本によっては \(\bv{t}\) を使っているが、ここでは一般パラメータ\(t\) と明確に区別するため\(\bv{u}\) とした。


・\(\frac{ds}{dt}=|\bv{r}'(t)|\) \(\ (c)\)

曲線の長さの公式【参照先】 \(L=\int_a^b \sqrt{ (\frac{dx}{dt})^2 +(\frac{dy}{dt})^2 }\ dt\)
すなわち
\( s=\int_a^b \sqrt{ |x'(t)^2 +y'(t)^2|} \ dt\) \(=\int_a^b \sqrt{ |r(t)^2| }dt\)
(\(ds=\sqrt{|r(t)^2|}ds\))
これより
\(\frac{ds}{dt}=|\bv{r}'(t)|\) \(\ (d)\)


・\(\frac{d\bv{r}}{ds}=\frac{d\bv{r}'(t)}{|r'(t)|}=\bv{u}\) \(\ (e)\)

∵ここで\(\bv{r}\) を考えて、次のように\(s\)で微分する。
\(\frac{ d\bv{r}}{ds}=\frac{d\bv{r}(t)}{dt}\frac{dt}{ds}\) \(=\bv{r}'(t) \frac{1}{|\bv{r}'(t)|}\)\(=\bv{u}\)


・\(d\bv{r}=\bv{u} ds\) \(\ (e')\)
\((e)\)より

・\(\bv{u}=\frac{d\bv{r}}{ds}=\frac{d\bv{r}(t)}{dt}\frac{dt}{ds}\) \(\ (f) \)

・\(\frac{d\bv{r}}{ds}\)\(=(\frac{dx}{ds},\frac{dy}{ds}) \) \(\ (g)\)

\(r(s)=(x(s),y(s))\)として、上式の成分表示は明らかである。

・\(d\bv{s}=\bv{u} ds\) \(\ (h)\)

ベクトル場の線積分の各式
以上の関連式からベクトル場の線積分である次式:

\(\int_{c}\ F_u ds\) \(=\int_{c}\ \bv{F} \cdot d\bv{r}ds\) \(=\int_{c} \ \bv{F} \cdot \bv{u} ds\) \(=\int_{c} \ \bv{F} \cdot d\bv{s}\) \(\ (i)\)

を次のように展開・変形できる。

\(\underline{\int_{c} \ \bv{F}(s) \cdot \bv{u} ds}\) \(= \int_{c} \ \bv{F}(s) \cdot \frac{d\bv{r}}{ds} ds\) \(=\int_{c} \ \bv{F}(t) \cdot \frac{d\bv{r}(t)}{dt}\frac{dt}{ds} ds\) \(=\underline{ \int_{c} \ \bv{F}(t) \cdot \frac{d\bv{r}(t)}{dt} dt }\) \(\ (j)\)

パラメータs から パラメータt の式が得られた。

パラメータ \(\underline{\ t\ }\) による式:
\(\ (j)\)より

\(\displaystyle \int_{c} \ \bv{F} \cdot \bv{u} ds\)  \(=\displaystyle \int_{c} \ \bv{F} \cdot \frac{d\bv{r}(t)}{dt} dt\)\(\ ❷\)


パラメータ \(\underline{\ s\ }\) による式:
\(\ (e)\)より

\(\displaystyle \int_{c} \ \bv{F} \cdot \bv{u} ds\) \(=\displaystyle \int_{c} \ \bv{F} \cdot \frac{ d\bv{r'(t)}} {|r'(t)|} ds\) \(\ ❸\) 
\(=\displaystyle \int_{c} \ \bv{F} \cdot \frac{ d\bv{r}(s) }{ds} ds \) \(\ ❸’\) 


座標の変数 \(\underline{\ x,y,z\ }\) による式:
\(\ (g)\)より \(\frac{d\bv{r}(s)}{ds}\)\(=(\frac{dx}{ds},\frac{dy}{ds}) \)
\(F=(F_x,F_y)\) … ベクトルの成分

\( \int_{c} \ \bv{F} \cdot \frac{d\bv{r}(s)}{ds} ds\) \(=\int_{c} \ (F_x,F_y) \cdot (\frac{dx}{ds},\frac{dy}{ds}) ds\)
\(=\int_{c}(F_x(x,y)\frac{dx}{ds} + F_y(x,y)\frac{dy}{ds})ds\) 
以上より
\(\displaystyle \int_{c} \ \bv{F} \cdot \bv{u} ds\)  \(=\displaystyle \int_{c} \left( F_x(x,y)dx + F_y(x,y)dy \right) \) \(\ ❹\)

3次元も同様にして  

\(\displaystyle \int_{c} \ \bv{F} \cdot \bv{u} ds\)  \(=\displaystyle \int_{c} \left( F_x(x,y,z)dx\right.\) \(\left. + F_y(x,y,z)dy + F_z(x,y,z)dz \right) \)\(\ ❹’\)   

 (e')より  

\(\displaystyle \int_{c} \ \bv{F} \cdot \bv{u} ds\)  \(=\displaystyle \int_{c} \ \bv{F} \cdot d\bv{r}\) \(\ ❺\)   

 線積分の計算の補足  
経路が「\(C:a→b\)」の逆の「\(-C:b→a\)」 のとき:

\(\displaystyle \int_{-C} \ f(x,y)\ ds\) \(=-\displaystyle \int_{C} \ f(x,y)\ ds\)


経路\(C\) の分割(\(C=C_1+C_2+\cdots+C_n\))のとき:

\(\displaystyle \int_{C} \ f(x,y)\ ds\) \(=\displaystyle \int_{C_1} \ f(x,y)\ ds\) \(+\displaystyle \int_{C_2} \ f(x,y)\ ds\) \(+\cdots\) \(+\displaystyle \int_{C_n} \ f(x,y)\ ds\))


 例題1 
ベクトル場\(F(xy)\) の曲線C に沿っての線積分を求めよ。(式❷、❸、❹の3通りで求めよ)
\(F(x,y)=(2x+1,xy)\) \(\quad \)
\(c:y=2x\) \(\ (0\le x \le 2)\)
  
積分経路
   fig3 積分経路
式❹による解:
\(C:y=2x\)より \(\frac{dy}{dx}=2\) \(\quad \therefore\ \) \(dy=2dx\)
\(\displaystyle \int_{c} \ \bv{F} \cdot \bv{u} ds\)  \(=\int_{c} ( F_x(x,y)dx + F_y(x,y)dy ) \) \(=\int_{c} ( (2x+1)dx + (xy)dy ) \) \(=\int_{c} ( (2x+1)dx + (x2x)2dx ) \) \(=\int_{c} \color{red}{( 2x+1 + 4x^2)dx } \) \(=\left[x^2+x+\frac{4}{3}x^3 \right]_0^2 \) \(=4+2+\frac{4}{3}8\)\(=6+\frac{32}{3} \) \(=16+\frac{2}{3}\)

式❷による解:
\(c:y=2x \) \(\ (0 \le x \le 2) \)に対し、以下のパラメータt を使う。
\( C:(t,2t)\) \(\ (0\le t \le 2)\)
位置ベクトル \( r=(t,2t) \)
接線ベクトル \( \frac{dr}{dt}=r'(t)=(1,2) \)
\(F=(2x+1,xy)=(2t+1,2t^2)\)
\( \int_c (F \cdot \frac{dr}{dt})dt\) \(=\int_c ((2t+1,2t^2) \cdot (1,2))dt\) \(=\int_c \color{red}{(2t+1 + 4t^2)dt} \) \(=\left[t^2+t+\frac{4}{3}t^3 \right]_0^2 \)\(=16+\frac{2}{3}\)

式❸による解:
\( C:(t,2t)\) \(\ (0\le t \le 2)\)
位置ベクトル \( r=(t,2t) \)
接線ベクトル \( \frac{dr}{dt}=r'(t)=(1,2) \)
\(\frac{ds}{dt}=|\bv{r}'(t)|\) \(\ (c)\) より 
\(ds=|\bv{r}'(t)|dt\)
\(\int_{c} \ \bv{F} \cdot \bv{u} ds\) \(=\int_{c} \ \bv{F} \cdot \frac{d\bv{r'}(t)}{|r'(t)|} ds\) \(\ ❸\) 

\(\int_{c} \ \bv{F} \cdot \bv{u} ds\) \(=\int_{c} \ \bv{F} \cdot \frac{d\bv{r'}(t)}{|\bv{r}'(t)|} |\bv{r}'(t)|dt\)  \(=\int_{c} \ \bv{F} \cdot \bv{r'}(t)dt\)  \(=\int_{c} \ (2t+1,2t^2) \cdot (1,2) dt\) \(=\int_c \color{red}{(2t+1 + 4t^2)dt} \) \(=16+\frac{2}{3}\)

考察:式の展開の結果、式❷による計算結果となりました。
(途中計算でsが登場するだけ、実質はパラメータt を使っています。)


 例題2 
積分経路C のみ例題1 と異なる問題: \(c:y=x^2\) \(\ (0\le x \le 2)\)
経路C をパラメータt で表すと:
\( C:(t,t^2)\) \(\ (0\le t \le 2)\) となる。
位置ベクトル \( r=(t,t^2) \)
接線ベクトル \( \frac{dr}{dt}=r'(t)=(1,\ 2t) \)

\(F=(2x+1,xy)=(2t+1,\ t^3)\)
\( \int_c (F \cdot \frac{dr}{dt})dt\) \(=\int_c ((2t+1,\ t^3) \cdot (1,\ 2t))dt\) \(=\int_c (2t+1 + 2t^4)dt \) \(=\left[t^2+t+\frac{2}{5}t^5 \right]_0^2 \) \(=(4+2+\frac{2}{5}32)\)\(=18+\frac{4}{5}\)

例題1と例題2の結果から同じベクトル場でも経路(曲線) が違えば、結果は異なる。
しかし、以下の例題ではこの結果を覆す…どんな場合だろうか!

 例題3 
次のベクトル場\(F(xy)\) の2つの曲線C に沿っての線積分を求めよ。

\(F(x,y)=1+y^2,2xy\) \(\quad \)
\(C_1:y=2x\)  \(\ (0\le x \le 2)\)
\(C_2:y=x^2\)  \(\ (0\le x \le 2)\)

\(C_1:y=2x\)に対し\(\frac{dy}{dx}=2\) \(dy=2dx\)

\(\int_{c_1} \bv{F} \cdot \bv{u} ds\) \(= \int_{c_1} ( (1+y^2)dx + 2xy dy)\) \(= \int_{c_1} ( (1+(2x)^2)dx + 2x(2x)2dx) \) \(= \int_{c_1} ( dx +4x^2dx +8x^2dx)\) \(= \int_{c_1} ( dx +12x^2dx )\) \(= \left[x + \frac{12}{3}x^3\right]_0^2\) \(=2+4\cdot8\)\(=34\)

\(C_2:y=x^2\)に対し\(\frac{dy}{dx}=2x\)\(,\ \) \(dy=2xdx\)

\(\int_{c_2} \bv{F} \cdot \bv{u} ds\) \(= \int_{c_1} ( (1+y^2)dx + 2xy dx)\) \(= \int_{c_2} ( (1+(x^2)^2)dx + 2x(x^2)2xdx)\) \(= \int_{c_1} ( dx +x^4dx +4x^4dx)\) \(= \int_{c_1} ( dx + 5x^4dx )\) \(= \left[x + \frac{5}{5}x^5\right]_0^2\) \(=2+32\)\(=34\)

以上の結果から:
\(\int_{c_1} \bv{F} \cdot \bv{u} ds\)\(=\int_{c_2} \bv{F} \cdot \bv{u} ds\) を得ました。
経路は異なるが、始点と終点が同じの線積分は同じであった。
この例題のベクトル場\(F\) は次の特定のもの。

\(\phi(x,y)=x+xy^2\) とすると
\(F=grad\ \phi= (\pder{\phi}{x},\pder{\phi}{y}) \) \(=(1+y^2, 2xy) \)

このベクトル場\(F\)はスカラー場\(\phi\)の勾配ベクトル(\(F=grad\ \phi\))でした。
 (スカラー場\(\phi\)の勾配 【参照先】)

山登りはポテンシャルエネルギーである重力に逆らって移動する行動です。
山登りを最大傾斜(最短)で登る経路、くねくね曲がり登る経路のどちらの経路をとっても勾配ベクトル場の線積分の値(仕事量)は変わりません。(後述します)

勾配ベクトル場の線分
 勾配の線積分 
スカラー場\(\phi\) の勾配\(F\)、すなわち

 \(F=grad\ \phi=∇\phi\) のときの線積分:
\(\displaystyle \int_{a}^{b} \bv{F} \cdot \bv{u} ds\) \(=\displaystyle \int_{a}^{b} ∇\phi \cdot \bv{u} ds\) \(\ ❻\)

は積分経路の始点a終点bのみに依存し、経路にはよらない。
物理ではこれを保存力という。
上記の式の根拠:
\(d\bv{r}=(dx,dy,dz)\) とする。
スカラー場\(\phi\) の勾配は\(∇\phi\)である。 
\(F=grad\ \phi=∇\phi\)\(=(\pder{\phi}{x},\pder{\phi}{y},\pder{\phi}{z}) \)
\(\int_{c} \bv{F} \cdot \bv{u} ds\)\(=\int_{c} \bv{F} \cdot d\bv{r}\) \(=\int_{a}^{b} ∇\phi \cdot d\bv{r}\)
\(=\int_{a}^{b} (\pder{\phi}{x},\pder{\phi}{y},\pder{\phi}{z})\)\(\cdot (dx,dy,dz)\)
\(=\int_{a}^{b} \underline{ (\pder{\phi}{x}dx+\pder{\phi}{y}dy+\pder{\phi}{z}dz)} \)

下線部は\(\phi\) の全微分\(d\phi\)、 その積分は\(\phi\) ですね。
\(d \phi=\pder{\phi}{x}dx+\pder{\phi}{y}dy+\pder{\phi}{z}dz \)

\(=\int_{a}^{b} \underline{ d \phi}\) \(=\left[\ \phi\ \right]_{a}^{b}\)
\(=\phi(b)-\phi(a)\)\(=\phi(x_b,y_b,z_b)-\phi(x_a,y_a,z_a)\)
\(\therefore\) 勾配の線積分は始点と終点により決まる。
注:\(\phi\) はスカラー関数、 \(∇\phi\) ベクトル関数。

冒頭では内積が示すものの例として仕事を挙げました。
ここでは万有引力(重力)\(F\) であるスカラー場\(\phi\)での仕事を考える。
ベクトル\(\bv{F}\) はスカラー\(\phi\)の勾配ベクトルです。
x-y平面が地面、z軸は高度とする。

\(\bv{F}=-∇\phi=-(\pder{\phi}{x},\pder{\phi}{y},\pder{\phi}{z})\)\(=(0,0,-mg)\)
\(d\bv{r}=(dx,dy,dz)\)

とおくと、質量m の物体を a から b まで移動(上げる)したときの仕事W は:
仕事W は万有引力\(f\) と移動距離の内積だから

\(W=\int_{c} \bv{F} \cdot \bv{u} ds\)\(=\int_{c} \bv{F} \cdot d\bv{r}\) \(=\int_{a}^{b} ( (0,0,-mg)\)\(\cdot (dx,dy,dz) )\) \(=-\int_{a}^{b} mgdy\)
\(=- \left[ mgz \right]_{a}^{b}\)\(=-mg( z(b)-z(a))=-mgh\)
 (\(h=z(b)-z(a)\))
この線積分は経路によらず、高さにより決まるので万有引力(重力)は保存力です。

 始点と終点が同じ周回積分 
始点と終点が同じときの勾配ベクトルの線積分
 このとき 曲線\(C\) は下図のように閉曲線です。
  
積分経路_閉曲線
   fig4 閉曲線
 周回積分の式 
経路の曲線C の始点と終点が同じの 閉曲線の線積分を周回積分といい次式で表します。
\(F=∇f\) \(\ ,\) \(d\bv{r}=(dx,dy,dz)\) \(\ ,\) \(f=(f_x,f_y,f_z\)) とする。
\( \color{red}{ \displaystyle \oint}_C \bv{F} \cdot \bv{u} ds\) \( =\color{red}{ \displaystyle \oint}_C \bv{F} \cdot d\bv{s}\) \(= \displaystyle \oint_C \bv{F} \cdot d\bv{r}\) \(= \displaystyle \oint_C ∇f \cdot d\bv{r}=0\) \(\ ❼\)
この結果は今まで説明から十分推測できるが、以下で確認します。
\(=\displaystyle \oint_{a}^{b} ( \pder{f}{x},\pder{f}{y},\pder{f}{z}) \) \(\cdot (dx,dy,dz)\)
\(=\displaystyle \oint_{a}^{b} ( \pder{f}{x}dx+\pder{f}{y}dy+\pder{f}{z}dz ) \) \(=\displaystyle \oint_{a}^{b} df \) \(= \left[\ f\ \right]_{a}^{b}\)
\(=f(b)-f(a)=0\)

  

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした

ベクトルの演算について
スカラーとベクトルの線積分を続けて説明してきました。ここで「ベクトルの演算」について考えてみました。

スカラーとベクトルの掛け算はベクトルの各成分をスカラー倍。
(スカラーは単なる数(実数)です。)
ベクトル同士の加減算は各成分を単に加減すればよい。

さて、ベクトル同士のかけ算は…それが内積と外積です。
(これをかけ算と呼ぶのかどうか、単なるかけ算とは違いますよね)
2つのベクトル\(\bv{A},\bv{B}\)とする。
・内積は\(\bv{A} \cdot \bv{B}\)=スカラー値 【参照先】
・外積は\(\bv{A} \x \bv{B}\)=ベクトル値 【参照先】
数のかけ算とは異なりますね、物理的な意味が濃いのです。一例として:
\(\bv{A} \cdot \bv{B}=0\)なら\(\bv{A},\bv{B}\) は互いに直角を示す。
\(\bv{A} \x \bv{B}=0\)なら\(\bv{A},\bv{B}\) は互いに平行を示す。
ベクトル同士の演算式なら「\(\x\)」か「\(\cdot\)」の演算子がつきます。
以下はベクトルの演算式はありません。
 「\(\bv{A}\ \bv{B}\)」…これは演算式ではない。
(もし\(A ,\ B\)が行列なら\(A\)と\(B\)の積ですね)