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湘南理工学舎
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2020/06/03

 楽しく学ぶ…線形代数

 線形空間(ベクトル空間)

(linear space / vector space)

 --目 次--
  • ♦線形空間について(1)
  • ♦線形空間の定義

  • ♦線形空間の適用と検証
  • • 1) 幾何ベクトル
  • • 2) n次数ベクトル
  • • 3) 実数値関数
  • • 4) 2次正方行列
  • • 5) 実数の数列
  • • 6) 高々n次 実数多項式
  • • 7) 2階線形微分方程式の階

  • • 一意性の検証
  • •補足1:高々とは
  • •補足2:実数値関数とは
  • ♦空間について(2)補足
  • ♦実数体とは(群・環・体)
  • ♦閑話:群・環・体

  • 線形空間について(1)


     数学にはユークリッド空間,非ユークリッド空間,計量空間など 様々な空間があります。
    ユークリッド空間は中学に学ぶ幾何学の公理・定理をみたす空間です, 非ユークリッド空間はそうでない空間です。
    空でないある集合が特定(△△)の公理・定義を満されている, その空間を「△△空間」のように呼ばれています。
    今回学ぶ 線形空間(ベクトル空間)は抽象的で一般化された概念で 難しい半面, 幅広く応用されています。
    以下の定義の冒頭では \(\b{a}, \b{b}\) が何であるか 定義していません。
    「\(\b{V}\) とその任意の元 \(\b{a}, \b{b}\)」とあるだけ, しかし文字は太字なのでベクトルを匂わせいるが この段階では言及していない。
    全公理の説明した後に「線形空間を全て満たす\(\b{V}\)元が ベクトル」であると結んでいます。
    参考/空間ついて【参照先】

    以下は線形空間になるための条件(公理Ⅰ,Ⅱ)です。
     線形空間の定義  

     空でない集合\(\b{V}\) とその任意の元(要素) \(\b{a}, \b{b}\) が次の「和の公理」と「スカラー倍の公理」をみたすとき, 集合\(\b{V}\) を 実数体 (実数全体である) \(\b{R}\)上 の線形空間 (またはベクトル空間)という。 …(実数体の【参照先】
    Ⅰ)和の公理
    \(\b{V}\) の任意の元 \(\b{a},\b{b}\) に対して 和\(\b{a}+\b{b} \) が定義され,次の性質を満たす:
    1)\(\ (\b{a}+\b{b})+\b{c}=\b{a}+(\b{b}+\b{c})\) \(\quad\)[結合則]

    2)\(\ \b{a}+\b{b}\) \(=\b{b} + \b{a} \) \(\quad\)[交換則]

    3)\(\ \b{a} + \b{0}\) \(=\b{0} + \b{a}=\b{a}\)\(\quad\)[加法 単位元 の存在]
     ⇒\(\b{0}\)元(単位元)という, \(\b{0}\) がただ1つ存在する。

    4)\(\ \b{a} + \b{x}\) \(=\b{x} + \b{a}=\b{0}\) \(\quad\)[加法 逆元の存在]
     ⇒任意の元\(\b{a}\) に対し ただ1つの逆元 \(\b{x}\) が存在する。
     \(\b{x}\) を\(\b{a}\) の逆元といい,\(\b{x}=-\b{a}\) である。

    Ⅱ)スカラー倍(乗法)の公理
    \(\b{V}\) の任意の元 \(\b{a},\b{b}\) と任意の実数\(k , l\) に対しスカラー倍\(k\ \b{a}\) が定義され, 次の性質を満たす:
    5)\(\ k(\b{a}+ \b{b})=k \b{a}+k \b{b}\) \(\quad\)[分配則1]

    6)\(\ (k+l) \b{a}=k\b{a}+l\b{a}\) \(\quad\)[分配則2]

    7)\(\ kl \b{a}=k(l \b{a})\)

    8)\(\ 1 \b{a}= \b{a}\)\(\quad\)[乗法の単位元の存在] 

    上記の公理が成り立つなら集合\(\b{V}\) を線形空間(またはベクトル空間)といい, その線形空間\(\b{V}\) の元をベクトルという。
    さらに\(\b{0}\)元(単位元)を零ベクトル, 逆元\(\b{x}=-\b{a}\) を逆ベクトルという。

    【補足】:
    a)公理 1),2) より \(\ (\b{a}+\b{b})+\b{c}=\b{a}+\b{b}+\b{c}\)
    ( =\(\ \b{a}+(\b{b}+\b{c})=(\b{b}+\b{c})+\b{a}\) より )
    b)公理3)は 単位元を加算しても影響を受けない。(変化しない)
    c)公理8)は 単位元を乗算しても影響を受けない。(変化しない)
    d)減算は公理4)の「加法の逆元」により行われます。
    e)除算の概念はないが, 割る数(実数)の逆数のスカラー倍により行われます。
    【補足】(幾何)ベクトルと数ベクトル
    一般に 矢印の向きと大きさを持つ ベクトルは 数学/物理で使われ, ここでは太文字, 例えば "\(\ul{\b{a}}\), \(\ul{\b{b}}\) "で表す。
    数ベクトルとは2次元で表すと 例えば "\(\ul{(a_1,a_2)}\)"(横ベクトル表示) の2個の数の順序列のこと。
    \( \b{a}=(a_1,a_2) \), \( \b{b}=(b_1,b_2) \)
    \( \b{a}+\b{b}=(a_1,a_2)+(b_1,b_2)\)\(=(a_1+b_1,a_2+b_2)\)

    線形空間の適用と検証

    (ベクトル空間)
     上記で定義した線形空間の適用は広く, その代表的な適用例は次の通りです。
    線形空間であるためには 定義の 1)~8) までの全公理を満たすことが必要です。
    ここで分かるようにベクトル以外も含め広い概念が線形空間です。
    以下では多くの例を説明したいので 要点を絞って 証明を行います。

    1)幾何ベクトル全体の集合

    線形空間の定義は幾何ベクトルを基本に抽象的・一般化した定義だからそのまま受け入れます。

    2)n次ベクトル全体の集合

    n次ベクトルとは(縦ベクトル表示):
      \( \b{x}= \left( \begin{array}{c} x_1 \\ x_2 \\ \vdots\\ x_n \end{array} \right) \)です。
    以下では簡略のため2次縦ベクトルで説明します。

    和: \(\ \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \end{pmatrix}\)\(+\) \(\begin{pmatrix} y_1 \\ y_2 \\ \end{pmatrix}\ \) \(= \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \end{pmatrix}\) \(+\) \( \begin{pmatrix} y_1 \\ y_2 \\ \end{pmatrix}\)

    積: \(k \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \end{pmatrix}\) \(=\begin{pmatrix} k x_1 \\ k x_2 \\ \end{pmatrix}\) (kのスカラー倍)
    として以下について確かめる。

    1)の\(\ (\b{a}+\b{b})+\b{c}=\b{a}+(\b{b}+\b{c})\)の確認
    \(\ \b{(} \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \end{pmatrix}\)\(+\) \(\begin{pmatrix} y_1 \\ y_2 \\ \end{pmatrix}\ \b{)} \) \(+\) \( \begin{pmatrix} h_1 \\ h_2 \\ \end{pmatrix}\) \(= \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \end{pmatrix}\) \(+\) \( \begin{pmatrix} y_1 \\ y_2 \\ \end{pmatrix}\) \(+\) \( \begin{pmatrix} h_1 \\ h_2 \\ \end{pmatrix}\) \(= \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \end{pmatrix}\) \(+\) \(\b{(} \begin{pmatrix} y_1 \\ y_2 \\ \end{pmatrix}\) \(+\) \( \begin{pmatrix} h_1 \\ h_2 \\ \end{pmatrix}\b{)} \)

    3)の\(\ \b{a} + \b{0}\) \(=\b{0} + \b{a}=\b{a}\) の確認: [単位元 \(\b{0}\) の存在]
    \(\ \b{0}=\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ \end{pmatrix}\ \) とすると \( \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \end{pmatrix}\)\(+\) \(\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ \end{pmatrix}\ \) \(= \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \end{pmatrix}\)

    4)の\(\ \b{a} + \b{x}\) \(=\b{x} + \b{a}=\b{0}\) の確認: [逆元 \(\b{x}\)(=\(\b{-a}\)) の存在]
    \(\ \begin{pmatrix} a_1 \\ a_2 \\ \end{pmatrix}\)\(+\) \(\begin{pmatrix} -a_1 \\ -a_2 \\ \end{pmatrix}\ \) \(= \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ \end{pmatrix}\)

    5)の\(\ k(\b{a}+ \b{b})=k \b{a}+k \b{b}\) の確認
    \(\ k{(} \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \end{pmatrix}\)\(+\) \(\begin{pmatrix} y_1 \\ y_2 \\ \end{pmatrix}\ \b{)} \) \(= \begin{pmatrix} k x_1 \\ k x_2 \\ \end{pmatrix}\)\(+\) \(\begin{pmatrix} k y_1 \\ k y_2 \\ \end{pmatrix} \) \(=k \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \end{pmatrix} \) \(+\) \(k\begin{pmatrix} y_1 \\ y_2 \\ \end{pmatrix} \)

    3)実数値関数全体の集合
    実数値関数とは
    実数上のある区間で定義された関数\(f(x),g(x)\)の集合を\(\b{V}\)とする。
    \( f(x),g(x) \in \b{ V }\), \( k,x \in \bv{ R }\)
    和と積を次のように定義します:
    和:\((f+g)(x)=f(x)+g(x)\)
    左辺は関数 "f+g" が"x"の関数,右辺は一般的な関数表示。
    積:\( (k\ f)(x)=k f(x)\)
    左辺は関数 "fのk倍" が "x"の関数,右辺は一般的な関数表示。
    として以下の証明をします。

    1)の\(\ (\b{a}+\b{b})+\b{c}=\b{a}+(\b{b}+\b{c})\)の確認
    \((\ul{(f+y)+p})(x)=(f+y)(x)+p(x)\)\(=\underbrace{f(x)+g(x)+p(x)}_{各項が自由な形}\)\(=f(x)+(y+p)(x)=(\ul{f+(y+p})(x)\)

    3)の\(\ \b{a} + \b{0}\) \(=\b{0} + \b{a}=\b{a}\) の確認:
    \((f+\b{0})(x)=\underbrace{f(x)+\b{0}(x)}_{零関数は0をかえす}=f(x)+0\)\(=0+f(x)=f(x)\)

    4)の\(\ \b{a} + \b{x}\) \(=\b{x} + \b{a}=\b{0}\) の確認:
    \((-f)(x)=-f(x)=g(x)\)とすると
    \( (f+(-f))(x)=f(x)+(-f)(x)=f(x)-g(x)\)\(=f(x)-g(x)=0\)
    [\(f\)の逆元\(g\)の存在]

    5)の\(\ k(\b{a}+ \b{b})=k \b{a}+k \b{b}\) の確認
    \(\ul{k(f+g)}(x)\)\(=k(f(x)+g(x))\)\(=kf(x)+kg(x)\)\(=(kf)(x)+(kg)(x)\)\(=(\ul{kf+kg})(x)\)

    4)2次元正方行列がつくる集合

    \(\ a_i,\ b_i \) を実数として, 和と積を 次のように定義すれば線形空間の公理を満たします。
    和:
    \(\begin{pmatrix} a1+b1 & a3+b3\\ a2+b2 & a3+b3 \end{pmatrix} \) \(=\begin{pmatrix} a1& a3\\ a2& a4 \end{pmatrix}\) \(+ \begin{pmatrix} b1& b3\\ b2& b4 \end{pmatrix} \)
    積:(kのスカラー倍)
    \(\begin{pmatrix} ka1& ka3\\ ka2& ka4 \end{pmatrix} \) \(=k \begin{pmatrix} a1& a3\\ a2& a4 \end{pmatrix} \)
    上記を使い, 数列全体の集合は線形空間の公理を満たします。

    5)実数の数列全体がつくる集合

    \(\{a_n\}=(a_1,\cdots a_n)\) \(, \ \) \(\{a_n\}=(a_1,\cdots a_n)\)として
    和:
    \(\{a_n+a_n\}\)\(=(a_1+b_1+\cdots+a_n+b_n)\)\(=(a_1+\cdots+a_n)\)\(+(b_1+\cdots+b_n)\) \(=\{a_n\}+\{a_n\}\)
    積(kのスカラー倍):
    \( (k\{a_n)\})=(ka_1,\cdots ka_n)\) \(=k(a_1,\cdots a_n)\) \(=k(\{a_n)\}\)
    上記を使い, 数列全体の集合は線形空間の公理を満たします。

    6)高々n次 実数多項式 全体の集合
    高々n次とは
    係数\(a_i,b_i,c,d \in \b{R}\) について:
    和:
    \( (a_1x + \cdots + a_n x^n + c) \)\(+(b_1x + \cdots + b_n x^n + d)\) \(=(a_1+b_1)x + \cdots + (a_n+b_n)x^n +(c+d)\)
    積:(kのスカラー倍)
    \( k(a_1x + \cdots + a_n x^n + c) \) \(=k(a_1)x + \cdots + k(a_n)x^n +c\)
    上記を使い, 多項式全体の集合は線形空間になります。

    7)2階線形微分方程式の解全体がつくる集合

    \(\frac{y}{x}=y'\)として方程式は:
    \(y''+P(x)y'+Q(x)=0\)
    微分方程式の解は関数であり複数存在します。
    その解を\(y_1,y_2\)とし
    和: \((y_1+y_2)(x)=y_1(x)+y_2(x)\)
    積: \((Cy_1)(x)=Cy_1(x)\) …(スカラーのC倍)
    とすると方程式の解の集合\(\b{V}\)は線形空間になります。

    一意性の検証
    (ただ一つ存在する)
    公理 3), 4) における 一意性の証明をしましょう。
    公理3):\(\b{0}\)元 がただ 1つ存在する。
    \(\b{0}\)と同じ性質 \(\b{0’}\) (公理3)を満たす)を用意する。
    \(\b{0}\)の性質: \(\b{0'}+\b{0}=\b{0'}\)
    \(\b{0'}\)の性質: \(\b{0'}+\b{0}=\b{0}\)
    \(\therefore \ul{\b{0}}=\b{0'}+\b{0}=\ul{\b{0'}}\)

    公理4):元\(\b{a}\) の逆元\(\b{x}\) はただ 1つ存在する。
    \(\b{x}\)と同じ性質 \(\b{x’}\) (公理4)を満たす)を用意する。
    \(\b{x}\) \(=\b{x}+\b{0}=\b{x}+(\b{a}+\b{x'})=(\b{a}+\b{x'})+\b{x}\)
    \(\b{x'}\) \(=\b{x'}+\b{0}=\b{x'}+(\b{a}+\b{x})=(\b{a}+\b{x'})+\b{x}\)
    \(\therefore \ul{\b{x}}=(\b{a}+\b{x'})+\b{a}=\ul{\b{x'}}\)

    注:(補足説明)

    1.高々とは (数学において)
    「高々」は「多くても」と同じ、「~以下」という意味です。
    例えば、「高々3」は「多くても3」です。
    高々n次 実数多項式」の意味は "次数がn以下の 係数が実数の多項式" のことです。

    2.実数値関数とは 実数を入力(定義域)したら, 実数が出力(値域)される関数。
    連続関数は実数値関数ですが、すべての実数値関数が連続関数であるとは限りません。
    \(f(x)=x^2\)は実数値関数かつ連続関数です。
    \(f(x)=\frac{1}{x}\)は実数値関数だが, 連続関数ではありません。

    線形空間について(2)


     線形空間では \(\bv{ R }^1\)(R:実数全体) は1次元の数直線空間, \(\bv{ R }^2\) は2次元の平面空間, そして\(\bv{ R }^3\) は3次元の立体空間…私たちがイメージする空間です。
    4次元以上では人間は知覚化/可視化できません。 しかし数学/物理では\(\bv{ R }^n\)(\(\s{n\gt 3}\))のように 高次元があります。
    例えば 相対性理論では 3次元に時間(時空)を加えた4次元空間です。
    線形空間はユークリッド空間(線形空間の概念を満たす)の一部と言われますが, 後で学ぶ計量線形空間を導入した線形空間はユークリッド空間とよく似ています。
    参考/ユークリッド空間【参照先】

    実数体とは


     定義の冒頭にある「実数」の体は代数学の「群論」に使われている用語,「群・環・」の分類の一つです。(群:Group, 環:Ring, 体:Field)
    早く進みたい方は, 実数全体ぐらいにして読みとばして次のテーマに進んで下さい。
    ユークリッド空間【参照先】 【次のテーマ】先に進む

    さて 実数体 は次の の定義をみたすことを強調している。 (実数は体の定義をみたしています)
    この群論では線形代数の知識が使われています。
    「群・環・体」は一冊の本で出版されるくらいなので, 大雑把いうと:
    実数:\(\s{\bv{R}}\) ,有理数:\(\s{\bv{Q}}\),整数:\(\s{\bv{Z}}\),複素数:\(\s{\bv{C}}\) の集合として

    ★環は加法・減法・乗法に閉じた集合, その例は \(\s{ \bv{Z,\ Q,\ R,\ C} }\)の和と乗において可換環です。
    正方行列の加と乗において環であるが可換ではない(交換法則がきかない)

    は加法・減法・乗法・除法に閉じた集合,その例は \(\s{\bv{Q,\ R,\ C}}\)の四則演算において体です。
    \(\s{\bv{Z}}\)は乗法の逆元が存在しないから除算が不可。

    ★群は 加法と減法について閉じた集合,その例は \(\s{\bv{Z,\ Q,\ R,\ C}}\)の和は群です。
     "閉じている" とは 例えば \(\s{\bv{Q}}\)に対し,演算後も\(\s{\bv{Q}}\) である。
    上記の数は0を含むので積では閉じていない
    減算が逆元により実現できる

    ここで深入りを避けて先に進むのもよいですよ!

    coffe

    [コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした

    …ここから先は興味のある方へ…

    "群・環・体"の定義


    まず 環 から説明します。
    環R の定義
    (Ring)
    集合R(\(a,b,c \in R\))について:
    I)加法(可換群(アーベル群(※))という):
    ※:ab=baをみたす群をいい、可換群ともいう
    1) \((a+b)+c\)\(=a+(b+c)\) [結合法則]
    2) \(a+0=0+a=a\) [加法 単位元 0 の存在]
    3) \(a+(−a)=(−a)+a=0\) [加法 逆元 −a の存在]
    4) \(a+b=b+a\) [可換性]
    Ⅱ)乗法(モノイド(※)):
    ※:次の5),6)をみたす集合, 演算ペアをいう
    5) \((ab)c=a(bc)\) [結合法則]
    6) \(1a=a1=a\) [乗法単位元 1 の存在]
    Ⅲ)加法と乗法の間の分配法則:
    7) \(a(b+c)\) \(=ab+ac\)
    8) \((a+b)c\) \(=ac+bc\)
    以上の条件をみたすときR はという。
    9)\(ab=ba\)
    また9)をみたすとき集合R は可換または可換環という。

    代表例
    \(\s{\bv{Z}}\)・\(\s{\bv{Q}}\)・\(\s{\bv{R}}\)・\(\s{\bv{C}}\)は、加・減・乗法について閉じているので、環です。
    \(\s{\bv{N}}\)は加法の逆元\(-a\) が存在しないから環ではない。

    体の定義は,ここまでの環の定義を基本に,以下の定義を追加したもの。
    体F の定義
    (Field)
    集合がF が可換環であり, さらに(次の乗法逆元が存在する)
    10)0を除くFの元a が\(aa^{-1}=a^{-1}a=1\)
    をみたすとき F は あるという。
    故に体は環の特別な場合であるといわれている。

    代表例:
    \(\s{\bv{Q}}\)・\(\s{\bv{R}}\)・\(\s{\bv{C}}\)は、加・減・乗法に加えて 除法についても閉じているので、体です。
    \(\s{\bv{Z}}\)は乗法の逆元\(a^{−1}\)が 存在しないから体ではない。


    群G の定義
    (Group)
    元 a,b \(\s{\in G}\) にある操作して新たな元を作る、これを演算といい,ここではこの演算子を"\( \circ \)"で表す。
    二項演算とは2つ元 a,b に対し\(\s{a \circ b} \) 例えば\(\sc{a+c,a\x b}\) などの演算のこと。
    群は演算を対象にしています。
    集合G(\(a,b,c \in R\))について:
    集合G の元a,bの二項演算が閉じていること,すなわち \( a \circ b \in G \) であり:
    1)任意の\(a,b,c \in G\) に対し, \( (a \circ b) \circ c= a\circ (b\circ c) \) [結合法則]
    2)任意の\(a \in G\) に対し,\(a\circ e=e\circ a=a\) となる \(e \in G\) が存在する。[単位元の存在]
    3)任意の\(a \in G\) に対し, \(a\circ b=b\circ a=e\) となる \(b \in G\) が存在する。[逆元の存在]
    (b をa の逆元と呼び \(a^{-1}\) と表す)
    上記をみたすとき群 (group)といい, また1) をみたすとき半群 (semigroup), 1) と2) をみたすときモノイド (monoid) といいます。
    また, 群Gの演算が可換のときG は可換群(アーベル群)という。

    代表例:
    …以下「閉じていればその演算に関し群」である
    \(\s{\bv{R}}\),\(\s{\bv{Q}}\),\(\s{\bv{C}}\) \(\s{\bv{Z}}\)は 加算,減法に関し群です。
    \(\s{\bv{R}}\),\(\s{\bv{Q}}\),\(\s{\bv{C}}\)は0 を外せば乗算に関して群ではない。
    \(\s{\bv{N}}\)は、減法について群ではない。(加法逆元が存在しない)
    \(\s{\bv{Z}}\)は乗法逆元の存在がないから乗法に関し群ではない。
    参考本:現代数学社 「初学者のための群論」
     著者:永田 雅宜