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2021/10/28

 楽しく学ぶ…微分積分

ラグランジュの未定乗数法

(lagrange's method of undetermined multiplier)
 --目 次--
2変数関数の条件付き極値
ラグランジュの未定乗数法
図形的イメージと解説
ラグランジュの未定乗数法の証明

極点の候補を求めたあとの判定
 有界閉集合について

例題1:極点・極値を求める

 \(F(x,y)=x^2+2xy+y^2\)
 \(g(x,y)=x^2+y^2-1=0\)


例題2:極点・極値を求める

 \(F(x,y)=x y\)
 \(g(x,y)=x^2+4y^2-4=0\)

例題2の別解(縁付きヘッセ行列による判定)

例題3:長方形の面積最大の各辺の長さ

例題4:直方体の体積最大の各辺の長さ
   
 2変数関数の条件付きの極値問題  
 今回のテーマは前回の「2変数関数の極値問題」の続きとして制約条件があるときの極値問題を扱います。
このテーマは経済学、力学においても応用されている。
例えば、決まった予算の条件下で最適な予算の使い方を求める問題。
または直方体の3辺の和が一定の条件で最大の体積を与える縦、横、高さの長さを求める問題など、
これらは具体的には制約条件の式の\(g(x,y)=0\)における、目的関数の \(f(x,y)\)の極値を求めることに帰着します。
まず、これに対応するラグランジュの未定乗数法(定理)を紹介します。

ラグランジュの未定乗数法  
 目的関数 \(f(x,y)\)と 制約条件の\(g(x,y)\) は\((a,b)\)近傍において\(C^1\)級(※a)
新たな変数 \(\lambda\) はラグランジュ乗数という。(\(\lambda \in \bm{R} \))
\(g_x(a,b) \ne 0 \) かつ \( g_y(a,b) \ne 0 \)であるとする。
このとき制約条件の\( g(x,y)=0 \) のもとで \(z=f(x,y)\) が \((a,b)\) で極値をとるならば次式が成り立つ。

\(f_x(a,b)-λg_x(a,b)=0\) :❶
\(f_y(a,b)-λg_y(a,b)=0\) :❷

式❶❷の変形:

\(f_x(a,b)=λg_x(a,b)\) :❶’
\(f_y(a,b)=λg_y(a,b)\) :❷'

上式の連立方程式から x、y が求まる。(または以下に示す式❼(後述)を使う)

また制約条件の\( g(x,y)=0 \) のもとで
 \(F(x,y,λ)=f(x,y)-λg(x,y)\)
とおくと、次式が成り立つ。(変数 λ が増えた)

\(F_x(a,b,λ)=f_x(a,b)-λg_x(a,b)=0\) :❸
\(F_y(a,b,λ)=f_y(a,b)-λg_y(a,b)=0\) :❹
\(F_λ(a,b,λ)=-g(a,b)=0\) :❺

上記の式についての連立方程式の解が\(f(x,y)\)の極値の候補点となる。
   

 \(∇f\quad ∇g\quad λ\) のイメージ 

・fig1 は目的関数 \(f\) の立体図
・fig2 は真上から見た \(f\) の等高線と制約条件の式 \(g\) の曲線

ラグランジュ未定乗数法
   fig1 \(f=x^2-2y^2\)

ラグランジュ未定乗数法
  fig2 等高線とベクトル勾配
\(λ\) は \(∇f\) と \(∇g\) が等しくなるように作用

 解 説  
--理解の助けに、少し物理を利用して説明する。--
ここで勾配ベクトル(gradient)を導入する。
位置\(x,y\) にある \(f\)の値(スカラー場)をもつものがあるとすると: 
 \(\color{red}{grad\ f(x,y)}= ( \pder{f(x,y)}{x},\pder{f(x,y)}{y})\) \(=(f_x,f_y)\)
と書いて「勾配ベクトル f (グラディエーション f)」という。
「grad」はスカラー f を ベクトル(向きと大きさ持つ)に換える働きがある。(※b)
fig2 のように勾配ベクトルは等高線と直交する。またその向きは\(f\)が増加する向きである。
fig2 での4つの\(∇f\) の向きはfig1 での関数 f の増加方向である。
勾配ベクトルは電磁気学では電場、力学では重力場であり、いずれもポテンシャルの勾配であり、質点/電荷が「一番きつい勾配」を転がっていくイメージである。
(\(grad \bv{f}\) はベクトルだから\((f_x,f_y)\)は「\( grad \bv{f} \)」 の成分であることに注意。)
  
ベクトル\(( \pder{f}{x},\pder{f}{y} )\) を\(\nabla\)記号をつかい、次のように表わす。
 \(\nabla f= grad\ f = (\pder{f}{x},\pder{f}{y})\)
\(\nabla\)(ナブラ)は微分作用素(または演算子)である。
(※b)(\(f\) はスカラーだが \(\nabla\)を作用させた\(\nabla f\)はベクトルである。)
勾配ベクトル \(\nabla\bv{f}\) の特徴は関数\(f\) の「等高線と直交する」に留意する。
(\(\nabla\bv{f}\) は曲面\(f\) のある点における最大傾斜の向きとなる)
 \(\nabla\) \(=(\pder{}{x},\pder{}{y} )\) \(\ →\ \) \( \nabla f\) \(=( \underline{ \pder{f}{x},\pder{f}{y}} ) \)
注:上記の下線部はベクトルの\((x成分,y成分)\)である。
 ( \(\bv{f}=(\underline{f_x,f_y)}\) \(\ ,\ \) \(\bv{g}=(\underline{g_x,g_y})\) )

式❶’ ❷'を ベクトルで表すと1つの式となる。

 \(f_x(a,b)=λg_x(a,b)\) :❶’  \(f_y(a,b)=λg_y(a,b)\) :❷'

 \(\nabla \bv{f} =\color{red}{ λ }\nabla \bv{g} \)  (式❶’ ❷'をまとめた式)
ベクトル\(\bv{f}\) は「 ベクトル\(\bv{g}\)の λ 倍に等しい」
未定乗数 \( λ\) は両ベクトルが等しくなるための係数である。
(※a):上記の通り\(f,g\) は微分可能が前提であるから「定理の条件に \(C^1\)級」を明記している。
    
 ラグランジュの未定乗数法の証明 
\(g(x,y),f(x,y)\) は(a,b)近傍において\(C^1\)級とする。
(a,b)近傍において 制約関数の \(g(x,y)=0\) となる\(f(x,y)\) が存在するとする。
ここで新たな関数を\(y=\varphi(x)\)とすると, \(f(x,y)=f(x,\varphi(x) )\)となる。 →これで1変数関数になる。

 \(\varphi(a)=b \) → \( f(a,b)=f(a,\varphi(a) )\)

 \(g(x,y)\) はx,y の陰関数、\(g_x(a,b)\ne 0\) または\(g_y(a,b)\ne 0\) とする。
準備として陰関数定理を適用すると:【参照先】
 (\(\color{red}{ f'(x)=- \frac{F_x(x,f(x))}{F_y(x,f(x))} } \)

\(g_x=\pder{g}{x}(x,\varphi(x))\) \(\ ,\ \) \(g_y=\pder{g}{y}(x,\varphi(x))\)
\(\frac{dy}{dx}=\frac{d\varphi(x)}{dx}=(\color{red}{\varphi(x))'}\) \(=\color{red}{ -\frac{g_x(x,\varphi(x))}{g_y(x,\varphi(x))} }\)

さて\(f(x,\varphi(x))\) は x=a において極値をとるから:
以下の式が成り立ち、合成関数の連鎖律をつかい式変形していく。

\(\underline{\frac{d}{dx}(f(x,\varphi(x))}=0\) \(\quad (y=\varphi(x))\)
合成関数の連鎖律をつかい展開する
\(=\pder{f}{x} \der{x}{x}\)\(+\pder{f}{y} \der{\varphi}{x}\) \(=\pder{f}{x}\)\(+\pder{f}{y} (\varphi(x))'\)
\( (\varphi(x))'\)に上記の結果を代入
\(=\pder{f}{x}-\pder{f}{y} \color{red}{\frac{g_x(x,\varphi(x))}{g_y(x,\varphi(x))} }\)
\(=f_x-f_y \frac{g_x(x,\varphi(x))}{g_y(x,\varphi(x))} \)
変数を換える:\((x,y)→(a,\varphi(x)) →(a,b)\)
\(\underline{ =f_x(a,b)-f_y(a,b)\frac{g_x(a,b)}{g_y(a,b)} }\)
\(λ=\frac{f_y(a,b)}{g_y(a,b)}\)とすると:
\(f_x(a,b)-λ g_x(a,b)=0\) :❶
同様にして:
\(f_y(a,b)-λ g_y(a,b)=0\) :❷
式❶、❷ をベクトル表示すると:
\( \nabla \bv{f}- λ \nabla \bv{g}=0\) \(\ ⇒\ \) \( \nabla \bv{f}= λ \nabla \bv{g}\)

❶❷の証明終わり
    
次に未知変数 λ を連立方程式にいれるため新たな関数\(F\)を導入した、次式を考える。
 \(F(x,y,λ)=f(x,y)-λ g(x,y)\)
\((a,b,λ)\)はF の停留点とすると次式が成り立つ。
 \(\pder{F}{x}(a,b,λ)=\pder{F}{y}(a,b,λ)=\pder{F}{λ}(a,b,λ)=0\)
関数\(F(x,y,λ)\)の(a,b,λ)における偏微分を求める。

\(\pder{F}{x}(a,b,λ)\)\(=\pder{f}{x}(a,b,λ)-λ\pder{g}{x}(a,b)=0\)  :❸
\(\pder{F}{y}(a,b,λ)\)\(=\pder{f}{y}(a,b,λ)-λ\pder{g}{y}(a,b)=0\)  :❹
\(\pder{F}{λ}(a,b,λ)\)\(=-g(a,b)=0\)  :❺

❸、❹、❺の証明終わり
ここで式❶❷の変形式の実用的な式を紹介します

式❶❷の証明中の式を以下のように式変形する。
( \((a,b)\)を省略して表記する)
\(f_x=f_y \frac{g_x}{g_y}\) \( \rightarrow \) \(\color{red}{ \frac{f_x}{g_x}=\frac{f_y}{g_y} }=λ\)  :❻ 

また \(f_x g_y=f_y g_x\) が成り立つので
以下の実用的に有用な行列式が得られる。

\( \color{red}{ \begin{vmatrix} f_{x} & g_{x}\\ f_{y} & g_{y} \end{vmatrix} }\) \(=f_x g_y-f_y g_x=0 \)  :❼ 
例題1 は本式を使って解答した。

    
極点の候補を求めたあとの判定  
 ラグランジュの未定乗数法は関数の極点の候補を与えれるだけだが、 曲線より複雑な情報をもつ曲面の極点の候補をあたえてくれる意義は大きい。
制約条件の式(陰関数)\(g(x,y)=0\) が有界閉集合※であり目的関数\(f(x,y)\) が連続ならば\(f(x,y)\) は必ず、最大と最小がある。
(これはB.W(ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理)の応用から証明されている)
閉曲線で囲まれた集合は有界であり、さらに境界を含めば閉集合です。
(放物線などは有界閉集合ではない)
陰関数の円、楕円などは有界閉集合、目的関数が(a,b)近傍で連続であれば、候補点(a,b) は極点である。
従って、求めた候補点を目的関数\(f(x,y)\)に代入して、極大・極小を決める。

有界閉集合について※
有界閉集合を一言でいえば「1変数の有界閉区間と同じような役割をもつ集合」である。
例えば[-1,1]は最大値/最小値の 1/-1 の端点(境界)を含んだ閉区間であるが、一般化の集合では有界閉集合である。
以下は大雑把な説明です。
2次元\(R^2\)では、\(R^2\)の部分集合\(D\) 、その中にある点列(数列)の集まりをあつかう。
(1次元では数直線上の数列 \(a_i\) 、2次元では数列の代わりに点列 \(a_{ij}\) をあつかう)
・集合\(D\) の内部に属する点を内点という。
・集合\(D\) の境界線上にある点を境界点という。
・集合\(D\) の外部(D の補集合)に属する点を外点という。
有界とは点列のすべてが\(D\)に収まっていて外には発散いていない。(一定の円内に収まっている)
閉集合とは\(D\) の任意の点列が\(D\) の点に収束する集合、また内点と境界\(∂D\)を含んでいる集合。

 例題1
次の条件式 \(g(x,y)\) のもとで目的関数\(f(x,y)\)の極値を求めよ。
\(g(x,y)=x^2+y^2-1=0\)
\(f(x,y)=x^2+2xy+y^2\)

fig3   \(x^2+2xy+y^2\)
  
ラグランジュ未定乗数法
ラグランジュ未定乗数法
 fig4 \(f(x,y)\) の等高線と\(g=0\) (円グラフ) 

解) 式❼を使って解く。
\(f_x=2x+2y\) \(\ ,\ \)\(f_y=2x+2y\)
\(g_x=2x\) \(\ ,\ \) \(g_y=2y\)
式❼を使う
\(\begin{vmatrix} f_{x} & g_{x}\\ f_{y} & g_{y} \end{vmatrix}\) \(=f_x g_y-f_y g_x\)\(=(2x+2y)2y-(2x+2y)2x\)\(=\cdots\) \(=4(y+x)(y-x)=0\)
\(\therefore y=-x \ ,\ y=x\)
これを\(g(x,y)\) に代入して
(1) \(y=-x\) のとき

\(g(x,y)=x^2+(-x)^2-1=0\) \(\ \rightarrow \ \) \(2x^2=1\) \(\ \rightarrow \ \) \(x=\pm \frac{1}{\sqrt{2}}=\pm \frac{\sqrt{2}}{2}\)
\(y=-x=-( \pm\frac{\sqrt{2}}{2} ) \) \(=\mp \frac{\sqrt{2}}{2} \)
\(\underline{ (x,y)=( \pm \frac{\sqrt{2}}{2} , \mp \frac{\sqrt{2}}{2} ) }\) (複号同順)

(2) \(y=x\) のとき

\(g(x,y)=x^2+(x)^2-1=0\) \(\ \rightarrow \ \) \(2x^2=1\) \(\ \rightarrow \ \) \(x=\pm \frac{1}{\sqrt{2}}=\pm \frac{\sqrt{2}}{2}\)
\( y=x=\pm \frac{\sqrt{2}}{2} \) 
\(\underline{ (x,y)=( \pm \frac{\sqrt{2}}{2} , \pm \frac{\sqrt{2}}{2} ) }\) (複号同順)

(3) 極値の評価
まとめると極点は:
\(( +\frac{\sqrt{2}}{2} , - \frac{\sqrt{2}}{2} )\) \(\ ,\ \) \(( -\frac{\sqrt{2}}{2} , + \frac{\sqrt{2}}{2} )\) \(\ ,\ \) \(( +\frac{\sqrt{2}}{2} , + \frac{\sqrt{2}}{2} )\) \(\ ,\ \) \(( -\frac{\sqrt{2}}{2} , - \frac{\sqrt{2}}{2} )\)
条件式\(g(x,y)\)は円の有界閉集合、目的関数\(f(x,y)\) は連続であるから求めた候補に極点最大値、最大値が存在する。
\(f(x,y)\) に候補点を代入して求めると:

極大値:\(f(xy)=2\)
極大点:\((x,y)=\)\(( \pm \frac{\sqrt{2}}{2} , \pm \frac{\sqrt{2}}{2} )\) (複号同順)
注:極大点は第1、第3 の象限にある。

極小値:\(f(x,y)=0\)
極小点:\((x,y)=\)\(( \pm \frac{\sqrt{2}}{2} , \mp \frac{\sqrt{2}}{2} )\) (複号同順)
注:極小点は第2、第4 の象限にある。

 例題2
次の条件式 \(g(x,y)\) のもとで目的関数\(f(x,y)\)の極値を求めよ。
\(g(x,y)=x^2+4y^2-4=0\)
\(f(x,y)=xy\)

fig5   \(f=xy\)
  
ラグランジュ未定乗数法
  
ラグランジュ未定乗数法
 fig6 \(f\)の等高線と\(g=0\)の楕円 

解) 式❸❹❺を使って解く。

条件式を変形すると(各項を4で割る)
\(\frac{x^2}{2^2}+\frac{y^2}{1^2}=1\)
楕円の式です:長軸\(2a=4\) ,短軸\(2b=2\) 

\(F(x,y,λ)=f(x,y)-λg(x,y)\)\(=xy-λ(x^2+4y^2-4)\)
与式を偏微分する。
\(F_x=y-2λx=0\) \(\ ,\ \)\(F_y=x-8λy=0\) \(\ ,\ \) \(F_{xx}=-2λ \) \(\ ,\ \)\(F_{yy}=-8λ \)
上式より

\(y=2λx\) :ⓐ \(\ ,\ \) \(x=8λy\) :ⓑ
\(x=8λy=8λ(2λx)=16λ^2x\)
\(16λ^2x-x=0\)\(\ ,\ \) \(x(16λ^2-1)=0\)
\(\color{blue}{x=0}\)\(\ または\ \) \(\color{teal}{ λ=\pm \frac{1}{4} }\)

(1) \(\color{blue}{x=0}\)のとき:

\(y=2λx=0\) \(\ より\ \) \((x,y)=(0,0)\) であり、これは \(g=0\)を満足せず。
これより\(x=0\) は対象から除外する。

(2) \(\color{teal}{ λ=\frac{1}{4} }\)のとき:

\(y=2λx=2\cdot \frac{1}{4}\cdot x=\frac{1}{2}x\)
\(g=x^2+4(\frac{1}{2}x)^2-4=2x^2-4=0\) \(\ \ \) \(\therefore x=\pm \sqrt{2}\)
\(y=\frac{1}{2}x=\frac{1}{2}\cdot (\pm \sqrt{2}) \)\(=\pm \frac{\sqrt{2}}{2}\)
\(\therefore \color{red}{(x,y)=(\pm \sqrt{2},\pm \frac{\sqrt{2}}{2})}\)

(3) \(\color{teal}{ λ=-\frac{1}{4} }\)のとき:

\(y=2λx=2\cdot -\frac{1}{4}\cdot x=-\frac{1}{2}x\)
\(g=x^2+4(-\frac{1}{2}x)^2-4=2x^2-1=0\) \(\ \ \) \(\therefore x=\pm \sqrt{2}\)
\(y=2λx=2\cdot -\frac{1}{4}\cdot x=-\frac{1}{2}\cdot (\pm \sqrt{2}) \)\(=\mp \frac{\sqrt{2}}{2}\)
\(\therefore \color{red}{(x,y)=(\pm \sqrt{2},\mp \frac{\sqrt{2}}{2})}\)

(4) 極値の評価:
条件式\(g(x,y)\)は楕円の有界閉集合、目的関数\(f(x,y)\) は連続であるから求めた候補に最大値、最大値が存在する。

\(f\ (\pm \sqrt{2}, \pm \frac{\sqrt{2}}{2})\) \(=xy\) \(=\pm \sqrt{2}\cdot \pm \frac{\sqrt{2}}{2}\)\(=1\)
\(f\ (\pm \sqrt{2},\mp \frac{\sqrt{2}}{2})\) \(=xy\)\(= \pm \sqrt{2} \cdot \mp \frac{\sqrt{2}}{2} \) \(= -\frac{2}{2}=-1\)

\(\begin{cases} 極大値& f(xy)=1 \\ 極大点& (\pm \sqrt{2},\pm \frac{\sqrt{2}}{2})(複号同順) \end{cases}\)
\(\begin{cases} 極小値& f(xy)=-1 \\ 極小点& (\pm \sqrt{2},\mp \frac{\sqrt{2}}{2})(複号同順) \end{cases}\)

(5) (別解)「縁つきヘッセ行列」による判定
極点の候補を定量的に極値か否かを判別する方法を紹介します。
出処は以下の参照先です。(経済学に関するHPです。)
【参照先1】 【参照先2】
以下の行列式を「縁つきヘッセ行列」と呼んでいる。
 \(H= \begin{vmatrix} 0    & g_{x}  & g_{y}\\ g_{x} & F_{xx} & F_{xy}\\ g_{y} & F_{xy} & F_{yy} \end{vmatrix}\) \(=g_x F_{xy} g_y + g_y F_{xy} g_x - g_x g_x F_{yy} - g_y F_{xx} g_y\)
(行列式の計算「サラスの公式」【参照先】
(判定):

・\(H \gt 0\) :(a,b)において極大である。
・\(H \lt 0\) :(a,b)において極小である。
・\(H = 0\)   :(a,b)での極値については不明。

さて例題2 の求めた極値の候補をこの行列式を使って極値か否か判定しみよう。
まず行列式の各成分を求めていく
\(F_{xx}=-2λ \) \(\ ,\ \)\(F_{yy}=-8λ \)
\(F_{xy}=F_{yx}=1\) \(\ ,\ \) \(g_x=2x\) \(\ ,\ \) \(g_y=8y\)

(5.1) \(λ=\frac{1}{4}\) \(\ ,\ \) \( (\sqrt{2},\frac{\sqrt{2}}{2}) \)のとき

\(F_{xx}=-2λ=-\frac{1}{2}\) \(\ ,\ \)\(F_{yy}=-8λ=-2\)
\(F_{xy}=F_{yx}=1\) \(\ ,\ \) \(g_x=2x=2 \sqrt{2}\) \(\ ,\ \) \(g_y=8y=8\frac{\sqrt{2}}{2}=4\sqrt{2}\)
これを行列式に代入:
\(H= \begin{vmatrix} 0& 2\sqrt{2} & 4\sqrt{2} \\ 2\sqrt{2}& -\frac{1}{2} & 1\\ 4\sqrt{2}& 1 & -2 \end{vmatrix}\) \(=16+16+16+16=64 \gt 0\) (※)

(※)
\((=(2\sqrt{2} \cdot1 \cdot 4\sqrt{2})\) \(+(4\sqrt{2}\cdot 1 \cdot 2\sqrt{2}) \) \(-(2\sqrt{2} \cdot 2\sqrt{2} \cdot -2)\) \(-(4\sqrt{2} \cdot -\frac{1}{2} \cdot 4\sqrt{2}) )\)

解=極大点である。
(5.2) \(λ=\frac{1}{4}\) \(\ ,\ \) \( (-\sqrt{2},-\frac{\sqrt{2}}{2}) \)のとき

\(g_x=2x=2(-\sqrt{2})=-2\sqrt{2}\) \(\ ,\ \) \(g_y=8y=8(-\frac{\sqrt{2}}{2})=-4\sqrt{2}\)
\(H= \begin{vmatrix} 0& -2\sqrt{2} & -4\sqrt{2} \\ -2\sqrt{2}& -\frac{1}{2} & 1\\ -4\sqrt{2}& 1 & -2 \end{vmatrix}\) \(=16+16+16+16=64 \gt 0\)

解=極大点である。
(5.3) \(λ=-\frac{1}{4}\) \(\ ,\ \) \( (\sqrt{2},-\frac{\sqrt{2}}{2}) \)のとき

\(F_{xx}=-2λ=\frac{1}{2}\) \(\ ,\ \)\(F_{yy}=-8λ=2\)
\(F_{xy}=F_{yx}=1\) \(\ ,\ \) \(g_x=2x=2\sqrt{2}\) \(\ ,\ \) \(g_y=8y=8(-\frac{\sqrt{2}}{2})=-4\sqrt{2}\)
\(H= \begin{vmatrix} 0& 2\sqrt{2} & -4\sqrt{2} \\ 2\sqrt{2}& \frac{1}{2} & 1\\ -4\sqrt{2}& 1 & 2 \end{vmatrix}\) \(=-16-16-16-16=-64 \lt 0\)

解=極小点である。
(5.4) \(λ=-\frac{1}{4}\) \(\ ,\ \) \( (-\sqrt{2},\frac{\sqrt{2}}{2}) \)のとき

\(g_x=2x=-2\sqrt{2}\) \(\ ,\ \) \(g_y=8y=8(\frac{\sqrt{2}}{2})=4\sqrt{2}\)
\(H= \begin{vmatrix} 0& -2\sqrt{2} & 4\sqrt{2} \\ -2\sqrt{2}& \frac{1}{2} & 1\\ 4\sqrt{2}& 1 & 2 \end{vmatrix}\) \(=-16-16-16-16=-64 \lt 0\)

解=極小点である。
極値点について上記(4)と同じ結果がえられた。

 例題3
縦・横の和 L (cm)が一定の長方形、このとき 面積が最大となる各辺の長さを求めよ。
(ラグランジュの未定乗法を使うこと)

解)縦:x (cm) 横:y (cm) とする。
目的関数:\(f=xy\) 但し、\(L=x+y\)とする
制約関数:\(g(x,y)=x+y-L=0\)
を公式❸❹を使うと:
 \(F(x,y,λ)=f(x,y)-λg(x,y)\)\(=xy-λ(x+y-L)\)
 \(F_x=0\) \(\ ,\ \) \(F_y=0\)
これより以下のように解いていく。

\( F_x=y-λ\) \(\ ,\ \) \( F_y=x-λ\)
\( g_x=1\) \(\ ,\ \) \( g_y=1\)

式❼を使う

\(\begin{vmatrix} F_{x} & g_{x}\\ F_{y} & g_{y} \end{vmatrix}\) \(=f_x g_y-f_y g_x\)\(=(y-λ)\cdot 1-(x-λ)\dot 1\)\(=y-x=0\)

\( \therefore y=x \) …正方形である。
\(y=x=\frac{L}{2}=ℓ\) とする。
条件式\(g(x,y)\)は楕円の有界閉集合、目的関数\(f(x,y)\) は連続であるから求めた候補に最大値、最大値が存在する。

これを集合の記号を使い次の表し方もある:
\(\{(x,y)|x,y \ge 0,\ g=x+y-L \}\)
の有界閉集合上において連続な関数は\(f=xy\) は最大値/最小値をもつ。

最小値は \(F=0\) は明らかである。 従って
・極点 \((x,y)=(ℓ,ℓ)\)  ・極大値 \(F_{max}=ℓ^2\)

別解)一般的な方法(ラグランジュの未定乗数を使わない。)
\(F=xy=x(L-x)\)
\(F'=(x(L-x))'=L-2x\)\(=x+y-2x\)
極値は\(F'=0\)ときだから:
\( \therefore\ y=x\)   ⇒\(=\frac{L}{2}=ℓ\)    

 例題4
直方体の縦・横・高さの和 ℓ (cm)が一定の直方体、このとき 容量が最大となる各辺の長さを求めよ。

解)縦:x (cm) 横:y (cm) 高さ:h (cm) とする。
目的関数:\(V=xyh\) 
但し、\(L=x+y+h\)とする
制約関数:\(g(x,y,h)=x+y+h-L\)
から次式が成り立つ
\(F=xyh-λ(x+y+h-L)=0\)
上式を以下に偏微分する。
\( F_x=yh-λ=0\) \(\ ,\ \) \( F_y=xh-λ=0\)
\( F_h=xy-λ=0\) \(\ ,\ \) \(F_λ=x+y+h-L=0\)
\( \ ( \because F_λ=-(x+y+h-L)=0 )\)
\(yh=xh=xy=λ\)
\(\therefore x=y=h \)  
各辺の長さ=ℓ とすると \(ℓ=\frac{1}{3}L\)

\(\{(x,y,h)|x,y,h \ge 0,\ g=x+y+h-L \}\)
の有界閉集合上において、連続な\(V=xyh\) に最大値/最小値が存在する。
最小値は \(V=0\) は明らかである。 従って
・極点 \((x,y,h)=(ℓ,ℓ,ℓ)\)  ・極大値 \(V_{max}=ℓ^3\) …立方体

別解):一般的な方法(ラグランジュの未定乗数を使わない。)
高さh を \(h=L-x-y\) とする。
\(V=xyh=xy(L-x-y)\)
V を x と y について偏微分して
\(\pder{V}{x}=0\) \(\ ,\ \) \(\pder{V}{y}=0\) 
を満足する \(x,y\) が答えである。
\(V_x=Ly-2xy-y^2\):ⓐ  \(\ ,\ \) \(V_y=Lx-2xy-x^2\):ⓑ
ⓐ-ⓑ=0:
\(Ly-Lx-x^2-y^2\)\(=L(y-x)-(y-x)^2\)\(=(y-x)(L-(y-x))\)
\(\therefore y=x\)   これをⓐに代入すると:
ⓐ\(=y(L-2x-y)=x(L-3x)=0\)
\(L=x+y+h=2x+h=3x\)
\(\therefore y=x=h\) …立方体

  

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした

ボルツァノ–ヴァイヤシュトラスの定理:以下の2人の名前がついた定理
1817年にボルツァーノが初めに証明、その後ワイエルシュトラスが再び証明した。
・ベルナルト・ボルツァーノ(Bernard Bolzano) 1781-1848年、チェコの数学者
・カール・ワイエルシュトラス(Karl Weierstrass)1815–1897年、ドイツの数学者
その頃の世界は:

1814年頃ジョージ・スチーブンソン/英 蒸気機関車の実用化
1831年頃マイケル・ファラデー/英 電磁誘導の発見
1840年  アヘン戦争
1853年  日本は米国のマシュー・ペリーから開国を迫れる。