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湘南理工学舎
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2024/04/22   
2021/07/21

 楽しく学ぶ…微分積分

 陰関数の微分

(implicit differentiation) 
 --目 次--
陰関数について
陰関数定理
例題1:導関数を求める
 \(F(x,y)=x^2+y^2-1=0\)

例題2:接線を求める
 \(F(x,y)=x^2+y^2-1=0\)
陰関数の特徴
陰関数定理の証明1
陰関数定理の証明2

例題3:葉状曲線の特異点
 \(F(x,y)=x^3+y^3+3axy=0\)
【参考】葉状曲線のグラフ化
   
 陰関数とは  
 陰関数定理に進む前に、陰関数(陰伏関数) とは何か?…について説明をします。
私たちが多く扱っている \(y=f(x)=\cdots\)の形の関数は陽関数です。
変数 x に対し y が唯一決まるのが関数です、これが陽関数です。
ちなみに、次の呼び方をする。
\(y=f(x)=\cdots\) を陽関数表示
\(F(x,y)=0\) を陰関数表示(※)
(※)この式を関係式、方程式などということもある。
陽と陰の名前のイメージとして:
関数とはf(x)の内容がはっきりし, 明確である。
関数とは以下に述べるように方程式\(F(xy)\)の中に隠れている。

ここで陰関数表示の \(x^2+y^2-1=0\) を変形して \(x^2+y^2=1\) は ご存じの半径1の単位円の方程式である。
この方程式の解 \(y=\pm \sqrt{1-x^2}\) から1つの x に対し\(+y_b\) と \(-y_b\)の、y が2つ存在するので(fig2)、y は唯一ではない。
 ⇒ 従って、この場合 y は x の関数ではない。

しかし、定義域、値域を限定すれば1つの x に対し 唯一の y が存在することになる。
関数 \(F(x,y)=x^2+y^2-1\) には \(F(x,y)=0\) を満たす (x,y) の組がある、これを\(F(x,y)=0\) の零点という。
(\(F(x,y)=0\) は拘束条件に似ています)
\(x^2+y^2=1\) (半径 1 の単位円) のグラフは 零点(\(F(x,y)=0\))を満たす点(x,y) の集合全体である。
このままではy が一意ではないので 関数にはならないが、fig2 のように 領域を x 軸の上部(\(y \gt 0\))に限定すれば \(y\) は一意となる。
上半分の半円のグラフは(\(y \gt 0\))を満たす 零点(\(F(x,y)=0\))の集合でもある。

注:\(y=\pm \sqrt{1-x^2}\)を「+」と「-」の領域の2つの関数に分けると、これを陰関数の「枝」という。
またfig2 での上下の分割は、曲線の一部の「分枝」ともいう。

平面上の区間 \(I\) で定義された関数 \(f(x)\)が\(F(x,y)=0\) を満たすとき、\(y=f(x)\)を\(F(x,y)\)の陰関数という。

・陰関数\(y=f(x)\) は\(F(x,y)=0\) を満す、1変数関数である。
・陰関数\(y=f(x)\) は\(z=F(x,y)\)とx y平面との交わり(交線)である。(このことをfig1 で表した)
・すなわち\(F(x,y)=0\)の解の集まりが陰関数\(y=f(x)\) が描く曲線である。

陰関数
 fig1 \(F(x,y)\)と\(y=f(x)\)
 

上半分の半円の場合:

区間 \(I=-1 \lt x \lt 1 \) で定義した関数 \(f(x)= \sqrt{1-x^2} \) が \(F(x,y)=0\) を満たすとき、\(f(x)=\sqrt{1-x^2} \) を \(F(x,y)=x^2+y^2-1=0\) の陰関数という。

下半分の半円の場合:

区間 \(I=-1 \lt x \lt 1 \) で定義した関数 \(f(x)=-\sqrt{1-x^2} \) が \(F(x,y)=0\) を満たすとき、\(f(x)=-\sqrt{1-x^2} \) を \(F(x,y)=x^2+y^2-1=0\) の陰関数という。

参考:
円のグラフの見方を換えると、この円のグラフは\(F(x,y)=0\) を満たした陰関数\(y=f(x)\) の点の全体の集合でもある。
これを\(F(x,y)=0\) の零点集合G という。
集合記号では \(G=\{(x,y) \in \bv{R^2}|F(x,y)=0\}\)

陰関数
 fig2 円と楕円
 

次は陰関数定理です。
定理式(1)によりグラフの接線が陰関数を使わないで求まるなど便利です。
 陰関数定理  

\(F(x,y)\)は平面上の開領域 \(D\) において\(C^1\)級とする。
(1回偏微分可能、その偏導関数は連続)
\(D\) 上の点 \(A(a,b)\) において以下を満たすとする:
 ⓐ \(F(a,b)=0\) (\(F(a,b)\) が曲線上の点であること)
 ⓑ \(F_y(a,b) \ne 0\) ( \(F_y\) は式(ⅲ)の分母だから )
(これから\(F(x,y)=0\) により 陰関数\(f(x)\)として一意的に定まる)
このとき, 点 \(x= a\) の近くで、次を満たす 陰関数 \(f(x)\)が ただ1つ 存在する。
 (ⅰ) \(b=f(a)\)

 (ⅱ) \(F(x,f(x))=0\) を満たす。 (\(f(x)\) は \(F(x,f(x))=0\) が定める陰関数である。)

 (ⅲ) \(\color{red}{ f'(x)=- \frac{F_x(x,f(x))}{F_y(x,f(x))} } \)  (1)
 ( \(\frac{dy}{dx}=f'(x)=- \frac{F_x}{F_y} \) )
   
   

注1:(ⅲ)は陰関数\(f(x)\) が求めなくてもその導関数が求まること意味している。
注2:上記のような、陰関数\(f(x)\) が唯一存在する。
注3:例題の後で証明を行う。


 補 足
本によっては方程式を\(f(x,y)=0\), 陰関数を\(g(x)\)と表記している。
これによる因数定理の表記は:
\(f(x,y)=0\)によって定まる陰関数を\(g(x)\)が一意的である。
\(f(a,b)=0\ ,\ f_y(a,b) \ne 0 \) ならば
 ・\(g(a)=b\)
 ・\(f(x,g(x))=0 \)
 ・\(g'(x)=- \frac{f_x}{f_y}\)
が成り立つ。

 例題1 次の関数の導関数 \(\frac{dy}{dx}\)を求めよ。
陰関数定理を「使わない/使う」の2通りで求める
\(F(x,y)=x^2+y^2-1=0\)

陰関数定理を使わない(高校数学では)
(\(y^2\)の項は合成関数の微分法を使う)

\(\frac{dF}{dx}=2x +2y \cdot \frac{dy}{dx}=0\)
\(2y \frac{dy}{dx}=-2x\)
\(\frac{dy}{dx}=f'(x)=- \frac{2x}{2y}=\underline{- \frac{x}{y}}\)

与式が平易であったので、容易に解けた。
与式が複雑、例えば 「複数の\(y^2\)項, \(y^3\)項、三角関数、対数、指数などが混在する」 など、場合によっては求まらないこともある。

陰関数定理を使う

\(F(x,y)=x^2+y^2-1\)として
\(F_x=\pder{F}{x}=2x\) \(\ ,\ F_y=\pder{F}{y}=2y\)
\( f'(x)=- \frac{F_x(x,f(x))}{F_y(x,f(x))}\) \( =- \frac{2x}{2y}\) \( =\underline{ -\frac{x}{y} }\)


 例題2 次の関数のグラフのある点における接線を求めよ。
\(F(x,y)=x^2+y^2-1=0\)
点 \(P_1 ( \frac{1}{\sqrt{2}},\ \frac{1}{\sqrt{2}}) \) と \(P_2 (-\frac{1}{\sqrt{2}},\ \frac{1}{\sqrt{2}}) \) における接線をもとめよ。

点\((a,b)\)での接線の式は:\(y=f'(a)(x-a)+b\)である。 接線の方程式【参照先】
(1)点 \(P_1\) における接線

\( f'(x)=- \frac{F_x(x,f(x))}{F_y(x,f(x))}\) \( =- \frac{2x}{2y}\) \( =- \frac{x}{y}\)  (上記(1)と同じ)
\( f'(\frac{1}{\sqrt{2}})\)\(=- \frac{2\frac{1}{\sqrt{2}}} {2\frac{1}{\sqrt{2}}}=-1\)
\(y-\frac{1}{\sqrt{2}}=-1(x-\frac{1}{\sqrt{2}})\)
\(y=-x+\frac{2}{\sqrt{2}}\)

(2)点 \(P_2\) における接線

\( f'(x)=- \frac{F_x(x,f(x))}{F_y(x,f(x))}\) \( =- \frac{x}{y}\)
\( f'(\frac{1}{\sqrt{2}})\)\(=- \frac{2\frac{1}{\sqrt{2}}} {-2\frac{1}{\sqrt{2}}}=1\)
\(y-\frac{1}{\sqrt{2}}=1(x+\frac{1}{\sqrt{2}})\)
\(y=x+\frac{2}{\sqrt{2}}\)


陰関数
 fig3  円と接線
 

陰関数定理の特徴
∗陰関数を求めなくても、\(F(x,y)=0\) の式から陰関数の導関数が求まる。

\(F(x,y)=0\) を満たす陰関数\(y\) を求めることが難しいこと、求まらないこともある。
なぜなら\(y=f(x)\)は方程式\(F(x,y)=0\) の解でもあるから\(F(x,y)=0\) の内容よっては求まらないこともある。
 例えば:\(F(x,y)=3xy^3+y^2+7=0\)\(,\ \) \(F(x,y)=3x\ sin(y^2)+ xy^2=0\)
 など解を求るのは、難しいですね。 

∗条件の\(F_y(a,b) \ne 0\) でなくても\(F_x(a,b) \ne 0\) ならこの定理は使える。(x と y を入れ換えればよい)

∗\(F(a,b)=0\) かつ \(F_x(a,b)=F_y(a,b)=0\) となる点、(a,b) を特異点、そうでない点を 正則点(または通常点)という。

特異点では \(F_(x,y)=0\)で定まる陰関数の存在が不明である。
正則点の近傍では陰関数が得られ、また唯一の接線が存在する。


 
 陰関数定理の証明1    【 \(f(x)\)が一意的(ただ1つ)に存在る。】 

\(F(a,b)=0\)の導関数\(F_y\)と 陰関数\(y=f(x)\) は定義領域において連続である。
連続であればその値域は単調増加または単調減少である。これを利用して証明する。

\(F(a,b)=0\) であり\(F_y(a,b)\ne 0\) の仮定から \(F_y(a,b)\) は「+」か「ー」であり、ここでは「+」と仮定し、証明を展開する。
微分係数である \(F_y(a,y)\) が 「+」であることに注意すると、 \(F(a,b)\) の b を少し動かす、すなわち y をプラスに 動かすと  \(F(a,y)\) は 単調増加である。
( y=b の近傍で y につて \(F(a,y)\) は単調増加である。)
次の関係が成り立つ。
 \(F(a,b-ε)\lt F(a,b)=0 \lt F(a,b+ε) \)
関数\(F(x,y)\) は連続関数であることと、上記の大小関係をベースにすると a 近傍の x に対して次式が成り立つ
 \(F(x,b-ε)\lt 0 \lt F(x,b+ε) \)
上記 y について注目して
 \((b-ε)\lt y \lt (b+ε)\) を満たす y がある。
さらにその y は\(F(x,y)=0\) をみたす y である。
\(F(x,y)\) は単調増加であるから そのy はただ1つである。
これまでのx と y を陰関数であらわすと
(陰関数\(f(x)\) は\(F(x,y)=0\) を満足する式である。)
\( y=f(x)\) は一意的に存在するといえる。
 陰関数定理の証明2    【\(f'(x)=- \frac{F_x(x,f(x))}{F_y(x,f(x))}\) 】
 \(F(x,y)=\underline{F(x,f(x))=0}\)

上式の両辺を x で微分すると:
 2変数の合成関数の微分(連鎖律1)を使う。【参照先】
\(\dera{F}{x}=\pder{F}{x}\ \dera{x}{x}\)\(+\pder{F}{y}\ \dera{f}{x}\)
\(0=F_x \cdot 1+ F_y f'(x)\)
 \(\therefore\) \(f'(x)=- \frac{F_x(x,f(x))}{F_y(x,f(x))}\)

 今までの証明から定理の(ⅰ)と(ⅱ)については以下のようにごく自然に導かれる
\(F(x,y)=0\) を満足するyは \(y=f(x)\) であるから
\(\therefore F(x,f(x))=0\)

\(F(a,b)=0\) に対し \(y=b=f(a)\) であるから
\(\therefore b=f(a)\)

 例題3 葉状曲線の関数の特異点 および 特異点以外の \(f_x=0,\ f_y=0\) なる点を求めよ。
\(F(x,y)=x^3+y^3-3axy=0\)

【補足】この曲線はデカルトの正葉線(葉状曲線)という。 これを扱っている本もあるのでここでも取り上げました。

(1)特異点
特異点とは\(F(x,y)=0\) かつ \(F_x(x,y)=F_y(x,y)=0\) となる点。
次のように解いていく。

\(Fx=3x^2-3ay=0\) \(\rightarrow \) \(x^2=ay\)
\(Fy=3y^2-3ax=0\) \(\rightarrow\) \(y^2=ax\)
\(\underline{x^4}=a^2y^2=a^2(ax)=\underline{a^3x}\)
\(x^4-a^3x=\underline{x(x^3-a^3)}\)(\(=x[(x-a)(x^2+ax-a^3)])=0 \)
\(\therefore x=0\)と\(x=a\)である。
\(x=0\) に対し \(y=\sqrt{ax}=0\) ⇒候補点1=\((0,0)\)
\(x=a\) に対し \(y=\sqrt{ax}=a\) ⇒候補点2=\((a,a)\)
\(F(x,y)=0\) を満たす点は(0,0)であり、\(F_x(0,0)=F_y(0,0)=0\) である。
特異点は原点\((0,0)\)である。
点(\((a,a)\)は特異点ではない。

陰関数

fig4 \(F(x,y)=x^3+y^3-3axy=0\)
 正葉線\((a=2)\)

 

・直線\(y=x\)について対称。
・①↔③または④↔②の順では変化しない。
・➁と③において自分自身で交差している。
・漸近線(ぜんきんせん)※ \(y=-x-2\) が存在する。
 ※:x を+/ー無限にしたときに接しそうな線
 漸近線\(y=-x-a\) だから\(a=2\)である(詳細省略)

(2)特異点以外の \(F_y=0\) なる点とは
\(F_y=3y^2-3ax=0\)の点である。 これより\(y^2=ax\)
\(x=\frac{1}{a}y^2\)を与式に代入して

\((\frac{y^2}{a})^3+y^3-3ay\frac{y^2}{a}=0\)
\((\frac{y^2}{a})^3-2y^3=0\)  次は両辺に\(a^3\)を掛ける
\(y^6-2y^3a^3=0\)
\(y^3(y^3-2a^3)=0\)
\(y=0\)は除外(対応のx が 0 であるから)
\(y^3=2a^3\) \(\ \rightarrow\) \(\underline{y=\sqrt[3]{2}a}\)

\(x=\frac{1}{a}y^2\) に上の結果を代入して

\(\underline{x}=\frac{1}{a}(\sqrt[3]{2}a)^2\) \(=\underline{\sqrt[3]{4}a}\)

求める点は: \((\sqrt[3]{4}a,\ \sqrt[3]{2}a)\)
\(F_y(\sqrt[3]{4}a,\ \sqrt[3]{2}a)=0\) となる。
(3)特異点以外の \(F_x=0\) なる点とは
\(F_x=3x^2-3ay=0\)の点である。 これより\(x^2=ay\)
\(y=\frac{1}{a}x^2\) を与式に代入

\(x^3+(\frac{x^2}{a})^3 -3ax\frac{x^2}{a}=0\)
\((\frac{x^2}{a})^3-2x^3=0\)  次は両辺に\(a^3\)を掛ける
\(x^6-2x^3a^3=0\)
\(x^3(x^3-2a^3)=0\)
\(x=0\)…は除外
\(x^3=2a^3\) \(\ \rightarrow \) \(\underline{x=\sqrt[3]{2}a}\)

\(y=\frac{1}{a}x^2\) に上の結果を代入して

\(\underline{x}=\frac{1}{a}(\sqrt[3]{2}a)^2\) \(=\underline{\sqrt[3]{4}a}\)

求める点は: \( (\sqrt[3]{2}a,\ \sqrt[3]{4}a ) \)
\(F_x (\sqrt[3]{2}a,\ \sqrt[3]{4}a ) \) となる。

時間のある方はお読みください!
【参考】デカルトの正葉線(葉状曲線)のグラフ化

\(F(x,y)=0\)を満たす x,y を求めてグラフ化します。
この \(F(x,y)=x^3+y^3-3axy=0\) は3次元なので、 3次式をパラメータ表示を使い、x,y を求める。
今回、x と y を求める式を作り、エクセルなどでグラフ化する前提です。
(与式を与えてグラフ化する数学ソフトは使わない)

\(t=\frac{y}{t}\)として
与式に\(y=xt\)を代入して
\(\underline{ x=\frac{3at}{1+t^3} }\)
与式に\(x=\frac{t}{y}\)を代入して
\(\underline{ y=\frac{3at^2}{1+t^3} }\)
注意点は「x が正、y が負」の領域では\(y=-\frac{3at^2}{1+t^3}\)とする。(負をつける)。


coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした

陰関数のグラフ化を考察すると、陰関数のグラフ化は方程式\(F(x,y)=0\)を満たす (x,y)の組みを計算してプロットすることだが、 その方程式が3次になると解が複数現れるので難しくなる。
一般に3次の方程式は因数分解を利用して2次方程式にして解を求めていく、今回はパラメータ表示(媒介変数表示)を用いグラフを描いた。 \(t=\frac{y}{t}\)以外のパラメータにしたらどうなるかなど疑問が横切るが、ここまでにして先に進もう。