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湘南理工学舎
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2026/07/07

 楽しく学ぶ…統計力学

 正準集団の方法(3) 分配関数の積

相互作用しない系(自由度が分けられる系)の分配関数
相互作用しない系(自由度が分けられる系)の分配関数 
 自由度が完全に分離できる系を考えよう。たとえば系を二つに分離できて, 全エネルギー \[E_{tot}=E_1+E_2+E_{12} \] において\(E_{12}=0\), つまり相互作用が無い\((non\ interacting)\)場合である。
 分け方は空間的(仕切りで区切られている)でなくともよく, 例えば運動エネルギー(運動量のみの関数)とポテンシャルエネルギー(座標だけの関数)のように分かれていても良い。これを「系1と系2が独立」とも言う。全系の微視的状態数は系1の状態数と系2の状態数の積で, \[\Omega_{tot}(E_{tot})\Delta E_{tot}=\Omega_1(E_1)\Delta E_1\x \Omega_2(E_2)\Delta E_2 \] である。指数の肩の和は指数の積に書けるから, 全系の分配関数は, \[\begin{align} Z(T)&=\int \Omega_{tot}(E_{tot})e^{-\beta E_{tot}}dE_{tot}\\ &=\iint \Omega_1(E_1)\Omega_2(E_2)e^{-\beta(E_1+E_2)}dE_1dE_2 \\ &=\int \Omega_1(E_1)e^{-\beta E_1}dE_1\int \Omega_2(E_2)e^{-\beta E_2}dE_2 \\ &=Z_1(T)Z_2(T) \end{align} \] となり, 夫々の系の分配関数の積となる。いくつかに分けられている時も同様で, \[E_{tot}=\sum_jE_j \] のとき(指数の肩の和は指数の積になるので)分配関数は \[Z=\prod_jZ_j \] となる。このままだと見にくいので両辺の対数を取り, \(-k_BT~\)を掛けると \[-k_BTlogZ=\sum_j(-k_BTlogZ_j) \] \[F=\sum_j F_j \] と, ヘルムホルツの自由エネルギーも単純な和になる。

等準位系 分配関数を使ってプランクの計算をやって見よう。
 \(N~\)個の全て同じ独立な(相互作用していない)等準位系を考える。相互作用が無いので全系のエネルギーは \[E=\sum_jE_j\] である。
 正準集団の方法では熱浴が巨大なので, 少数の系でも成り立ち, 粒子1個でも成り立つ。つまり分配関数が計算出来る。
1個の粒子の分配関数を\(Z_1(T)~\)とすると, 全て同じ粒子で, どの1粒子分配関数も同じだから, 全系の分配関数は \[Z(T,N)=(Z_1(T))^N\] である。そこで先ず1個の粒子の等順位系を考える。
1粒子

各エネルギーを持つ微視的状態は一つであり(等準位系は縮退は無いと考える), 分配関数はボルツマン重率を足し上げればよい。 \[Z_1=\sum_{n=0}^{\infty}e^{-\beta\x n\varepsilon_0}=\sum_{n=0}^{\infty}(e^{-\beta \varepsilon_0})^n=\frac{1}{1-e^{-\beta \varepsilon_0}} \] 積和は初項\(~\rm 1~\), 公比\(~e^{-\beta \varepsilon_0}~\)の等比級数である。これを使うと全系の分配関数は\(N~\)乗でよいので \[Z(T,N)=(1-e^{-\beta \varepsilon_0})^{-N} \] 今までのように指数の肩をテイラー展開して云々は不要で, 厳密な解である。厳密である理由は完全に独立しているという特殊事情による。
 ヘルムホルツの自由エネルギーは \[F=-k_BTlogZ=Nk_BTlog(1-e^{-\beta \varepsilon_0}) \] 内部エネルギーは \[\begin{align} U(T,N)=\langle E\rangle&=-\dd{}{\beta}logZ \\ &=\frac{Ne^{-\beta \varepsilon_0}}{1-e^{-\beta \varepsilon_0}} \\ &=\frac{N\varepsilon_0}{e^{\beta \varepsilon_0}-1} \\ \end{align} \] となる。\(M~\)個の玉を\(~N~\)個の箱に分配する‥‥として計算したプランクの方法と同じ結果である。随分と楽な計算で済む。

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした!

 こういう簡便な方法があると知ったら, プランクは何を考えただろうか?