楽しく学ぶ…統計力学
正準集団の方法(3) 分配関数の積
相互作用しない系(自由度が分けられる系)の分配関数
相互作用しない系(自由度が分けられる系)の分配関数
自由度が完全に分離できる系を考えよう。たとえば系を二つに分離できて, 全エネルギー
\[E_{tot}=E_1+E_2+E_{12} \]
において\(E_{12}=0\), つまり相互作用が無い\((non\ interacting)\)場合である。
分け方は空間的(仕切りで区切られている)でなくともよく, 例えば運動エネルギー(運動量のみの関数)とポテンシャルエネルギー(座標だけの関数)のように分かれていても良い。これを「系1と系2が独立」とも言う。全系の微視的状態数は系1の状態数と系2の状態数の積で,
\[\Omega_{tot}(E_{tot})\Delta E_{tot}=\Omega_1(E_1)\Delta E_1\x \Omega_2(E_2)\Delta E_2 \]
である。指数の肩の和は指数の積に書けるから, 全系の分配関数は,
\[\begin{align}
Z(T)&=\int \Omega_{tot}(E_{tot})e^{-\beta E_{tot}}dE_{tot}\\
&=\iint \Omega_1(E_1)\Omega_2(E_2)e^{-\beta(E_1+E_2)}dE_1dE_2 \\
&=\int \Omega_1(E_1)e^{-\beta E_1}dE_1\int \Omega_2(E_2)e^{-\beta E_2}dE_2 \\
&=Z_1(T)Z_2(T)
\end{align} \]
となり, 夫々の系の分配関数の積となる。いくつかに分けられている時も同様で,
\[E_{tot}=\sum_jE_j \]
のとき(指数の肩の和は指数の積になるので)分配関数は
\[Z=\prod_jZ_j \]
となる。このままだと見にくいので両辺の対数を取り, \(-k_BT~\)を掛けると
\[-k_BTlogZ=\sum_j(-k_BTlogZ_j) \]
\[F=\sum_j F_j \]
と, ヘルムホルツの自由エネルギーも単純な和になる。
等準位系 分配関数を使ってプランクの計算をやって見よう。
\(N~\)個の全て同じ独立な(相互作用していない)等準位系を考える。相互作用が無いので全系のエネルギーは
\[E=\sum_jE_j\]
である。
正準集団の方法では熱浴が巨大なので, 少数の系でも成り立ち, 粒子1個でも成り立つ。つまり分配関数が計算出来る。
1個の粒子の分配関数を\(Z_1(T)~\)とすると, 全て同じ粒子で, どの1粒子分配関数も同じだから, 全系の分配関数は
\[Z(T,N)=(Z_1(T))^N\]
である。そこで先ず1個の粒子の等順位系を考える。
各エネルギーを持つ微視的状態は一つであり(等準位系は縮退は無いと考える), 分配関数はボルツマン重率を足し上げればよい。
\[Z_1=\sum_{n=0}^{\infty}e^{-\beta\x n\varepsilon_0}=\sum_{n=0}^{\infty}(e^{-\beta \varepsilon_0})^n=\frac{1}{1-e^{-\beta \varepsilon_0}} \]
積和は初項\(~\rm 1~\), 公比\(~e^{-\beta \varepsilon_0}~\)の等比級数である。これを使うと全系の分配関数は\(N~\)乗でよいので
\[Z(T,N)=(1-e^{-\beta \varepsilon_0})^{-N} \]
今までのように指数の肩をテイラー展開して云々は不要で, 厳密な解である。厳密である理由は完全に独立しているという特殊事情による。
ヘルムホルツの自由エネルギーは
\[F=-k_BTlogZ=Nk_BTlog(1-e^{-\beta \varepsilon_0}) \]
内部エネルギーは
\[\begin{align}
U(T,N)=\langle E\rangle&=-\dd{}{\beta}logZ \\
&=\frac{Ne^{-\beta \varepsilon_0}}{1-e^{-\beta \varepsilon_0}} \\
&=\frac{N\varepsilon_0}{e^{\beta \varepsilon_0}-1} \\
\end{align} \]
となる。\(M~\)個の玉を\(~N~\)個の箱に分配する‥‥として計算した
プランクの方法と同じ結果である。随分と楽な計算で済む。