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湘南理工学舎
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2024/03/20

 楽しく学ぶ…解析力学

 ラグラジアンとは何か?

なぜ\(~L=T-U~\)でなければならないのか?\(~L=T+U~\)では駄目なのか?
ラグラジアンの謎 なぜ\(~\Vec T\bm{-}\Vec U~\)か

\(\Vec T\bm{+}\Vec U~\)では駄目か
 結論から言うと, ラグラジアン\(~L=T-U~\)の物理的イメージは無いらしい。例えば, 磁場\(~\bm{B}~\)に垂直な\(~xy~\)平面で運動する荷電粒子に対し \[L(\bm{r,v})=\frac{1}{2}m(v_x^2+v_y^2)-\frac{1}{2}qB(yv_x-xv_y) \] なるラグラジアンを定義し, オイラー・ラグランジュ方程式を適用すると, ローレンツ力\(~m\dot{v}_x=qv_yB\;(m\dot{\bm{v}}=q\bm{v}\x \bm{B})~\)が導かれる。
第一項は運動エネルギーであるが, 第二項はそれほど明確ではない。更に\(L=\exp(a\dot{x})~\)の様な摩訶不思議なラグラジアンも多く存在する。
 多くの教科書, サイト記事では\(~L=T-U~\)は先ず受け入れるべしが多い。しかしそれが出来なかったので, 学生時代能率良く勉強出来なかった。
どうしても納得出来ないので, 壮大なこじつけを行ってみよう。気になる読者はパスされたし。何しろこじつけだから。

 最小作用の原理だから, 現実に何かが最小となる。カテナリー曲線の場合は重力ポテンシャルエネルギーであって分かりやすかった。
粒子の運動の場合は何が最小となるのか?以下は「物理数学の直観的方法(長沼信一郎)」を改編したものである。
L=T-U

 横軸に時刻\(~t\)(距離ではないので注意), 縦軸に位置\(~q~\)をとって, 2点\(~\rm A,B~\)間を結ぶコースを求める。先ず重力の働いていない慣性運動を考える。
言うまでもなく, 等速直線運動であるが, この時(最大という事はないだろうから)どういう物理量が最小となって直線を与えるのだろうか。
 直線\(~\rm AB~\)の傾きを\(~v_0~\)とすれば, \(v_0~\)は平均の速度で, \(v_0\tau~\)が\(~\rm A,B~\)間の距離である。
\(\rm A,B~\)間の時間\(~\tau~\)を\(~\displaystyle\frac{\tau}{2}~\)で二つに区切り, 前半の速度を\(~v_0+\varDelta~\)とすると, 後半の速度は\(~v_0-\varDelta~\)でなければならない。 \[(v_0+\varDelta)\frac{\tau}{2}+(v_0-\varDelta)\frac{\tau}{2}=v_0\tau \] となり, 決められた時間\(~\tau~\)で\(~\rm B~\)点に到達出来るからである。
 \(\rm A,B~\)を夫々, 始点, 終点とするコースで, 各時刻での速度を\(~v(t)~\)とすると, 微少時間に進む距離は\(~dx=v(t)dt~\)だから, \[I=\int_{0}^{\tau}v(t)dt=v_0\tau \] なる量\(~I~\)はどのようなコースを選んでも一定(\(AB~\)間の距離)であり, 最小とはならない。従って求める作用ではない。
 では\(~\displaystyle I=\int_{0}^{\tau}v^2(t)dt\)はどうだろうか。(暫く何でもかんでも\(~I~\)とする)。上図のコースで, この値は \[\begin{align} &(v_0+\varDelta)^2\frac{\tau}{2}+(v_0-\varDelta)^2\frac{\tau}{2}\\ &=\frac{\tau}{2}(v_0^2+2v_0\varDelta +\varDelta^2+v_0^2-2v_0\varDelta +\varDelta^2)\\ &=\tau(v_0^2+\varDelta^2) \\ \end{align} \] となり, 直線コースの場合の値\(~\tau v_0^2~\)とは\(~\tau\varDelta^2~\)だけ異なり, 一定の値とはならない。
途中\(~2v_0\varDelta~\)と\(-2v_0\varDelta~\)がキャンセルされているが偶然ではない。 \[\int_{0}^{\tau}v(t)dt=\int_{0}^{\tau}v_0dt=v_0\tau\] でなければならないから, \(v(t)=v_0+\varDelta(t)~\)のとき, \[\int_{0}^{\tau}(v_0+\varDelta(t)-v_0)dt=\int_{0}^{\tau}\varDelta(t)dt=0\] となるからである。従って\(~\rm T~\)の分割をもっと多くしても, \((v_0+\varDelta(t))^2~\)で出てくる\(~2v_0\varDelta(t)~\)の項は積分すればゼロになって, \[\int_{0}^{\tau}v^2(t)dt=\int_{0}^{\tau}v_0^2dt+\int_{0}^{\tau}\varDelta^2(t)dt\] となる。
 右辺第一項はコースに依らない定数, そして第二項の積分は\(~|\varDelta(t)|\equiv0~\)でない限りゼロより大きい。 つまり\(~\rm A,B~\)間を結んだ直線コースで, \[I=\displaystyle\int_{0}^{\tau}v^2(t)dt\] は最小値を取り得る。そして最小値\(~\displaystyle \int_{0}^{\tau}v_0^2dt=v_0^2\tau~\)を与え, 等速直線運動を実現する。自然が選ぶ最小としても良いかもしれない。しかし, \(v^3(t)~\)も\(~v^4(t)~\)も(確かめてはいないが)同じような結果になるだろう。 自然はこのような節度のない選び方はしない筈だ。\(\displaystyle\frac{1}{2}m~\)をかけて, \[I=\displaystyle\int_{0}^{\tau}\frac{1}{2}mv^2(t)dt\] とすれば, これは運動エネルギーの時間積分である。如何にもこじつけではあるが, 何かもっともらしい。大発見したつもりで先に進もう。

 今度は一様な重力場での運動を考える。
ある時刻での二つの経路の差を\(~h(t)~\)とすれば, その時刻でのポテンシャルエネルギーの差は\(~U=mgh(t)~\)である。
L=T-U

 二つの経路\(\rm AM'B~\)と, \(\rm AMB~\)では\(~\displaystyle \int_{0}^{\tau}Udt~\)の差があり, それは図の二つの経路で囲まれた部分の面積に\(~mg~\)をかけたものとなる。
整理しておこう。経路\(\rm AM'B~\)は経路\(~\rm AMB~\)と比べて \[\begin{align} \delta\int_{0}^{\tau}Tdt&=\frac{1}{2}m\tau\varDelta^2 \\ \delta\int_{0}^{\tau}Udt&=mg\x \Delta AM'B \end{align} \] だけ大きい。運動エネルギーは増加で間違いないが, ポテンシャルエネルギーの符号はよく考える必要がある。重力の向きが\(~q~\)の負方向(図では上から下)で, 経路\(~AM'B~\)は経路\(~AMB~\)の上側を通過するので, ポテンシャルエネルギーも経路\(~AM'B~\)の方が大きい。
 今度は前半が\(~v_0+2\varDelta\), 後半が\(~v_0-2\varDelta~\)の経路を考える。
L=T-U

 経路\(\rm AM''B~\)は経路\(~\rm AMB~\)と比べて, \(\displaystyle\int_{0}^{\tau}v^2(t)dt\)は, \[\begin{align} \Big[(v_0+2\varDelta)^2+&(v_0-2\varDelta)^2\Big]\frac{\tau}{2}-\Big[(v_0+\varDelta)^2+(v_0-\varDelta)^2\Big]\frac{\tau}{2}\\ &=(2v_0^2+8\varDelta^2)\frac{\tau}{2}-(2v_0^2+2\varDelta^2)\frac{\tau}{2} \\ &=3\tau\varDelta^2 \end{align} \] より, 運動エネルギー\(~T~\)は\(~m/2~\)をかけて, \[\delta\int_{0}^{\tau}Tdt=\frac{3}{2}m\tau\varDelta^2 \] だけ大きい。一方\(~MM'=M'M''~\)より\(~\Delta \rm AM'B=\square AM''BM'~\)であるから, ポテンシャルエネルギーの増加分は同じである。
つまり\(~\displaystyle\delta\int_{0}^{\tau}Udt~\)は同じ量だけ増加するが, \(~\displaystyle\delta\int_{0}^{\tau}Tdt~\)は増加量そのものが, \(\displaystyle\frac{1}{2}m\tau\varDelta^2~\)から\(~\displaystyle\frac{3}{2}m\tau\varDelta^2~\)へと大きくなっている。

なぜ\(~\Vec T\bm{-}\Vec U~\)か
 前置きが長くなったが, いよいよ\(~L=T-U~\)を導出しよう。くれぐれも「こじつけである」ことを忘れないように。
L=T-U

 経路\(~\rm AM"B~\)と\(~\rm AM'B~\)の運動エネルギー\(~T~\)の差は \[\begin{align} \delta\int_{0}^{\tau}Tdt&=\frac{m}{2}\left[\int_{0}^{\tau}[(v_0+u(t)+\dot{h}(t))^2-(v_0+u(t))^2]dt\right]\\ &=\frac{m}{2}\left[\cancel{\int_{0}^{\tau}(v_0+u(t))^2dt}+\int_{0}^{\tau}2v_0\dot{h}(t)dt+\int_{0}^{\tau}2u(t)\dot{h}(t)dt+ \int_{0}^{\tau}\dot{h}^2(t)dt-\cancel{\int_{0}^{\tau}(v_0+u(t))^2dt}\right]\\ &=m\int_{0}^{\tau}u(t)\dot{h}(t)dt+\frac{m}{2}\int_{0}^{\tau}\dot{h}^2(t)dt \\ &=m\int_{0}^{\tau}\dot{h}(t)\left[\frac{\dot{h}(t)}{2}+u(t)\right] \end{align} \] である。上から2番目右辺第二項の積分は, \(~\Delta \rm AM'B=\square AM''BM'~\)であるから\(\displaystyle\int_{0}^{\tau}\dot{h}(t)dt=0~\)である。
 ここで二つの経路\(~\rm AM''B,\;AM'B~\)の差が僅かであるとすると, \(|\dot{h}(t)|\ll 1~\)として良い。 \[\begin{align} \delta\int_{0}^{\tau}Tdt&\simeq m\int_{0}^{\tau}\dot{h}(t)u(t)dt \\ &=m\Big[h(t)u(t)\Big]_{0}^{\tau}-m\int_{0}^{\tau}h(t)\dot{u}(t)dt\\ &=-\int_{0}^{\tau}m\dot{u}(t)h(t)dt \end{align} \] 1行目から2行目で部分積分を行い, \(h(0)=h(\tau)=0~\)を用いた。
 ところで\(\dot u(t)~\)は加速度だから, \(F=m\dot{u}(t)~\)は力である。保存力の場合は\(~\displaystyle F=m\dot{u}(t)=-\dd{U}{q}~\)で, \[\delta\int_{0}^{\tau}Tdt=-\delta\int_{0}^{\tau}(-U)dt \tag{1}\] すなわち, \[\delta\int_{0}^{\tau}(T-U)dt=0 \] \[\delta\int_{0}^{\tau}Ldt=0 \] が得られた。当然\(~L=T-U~\)である。

\(\Vec L~\)が最小というより, 運動エネルギーの増加とポテンシャルエネルギーの増加が等しくなる。
 \(AMB~\)から\(~AM'B~\)へ向けて, 円弧を描きながら軌道が僅かづつ上に向かってずれて行くとする。
L=T-U

 \(\varDelta^2~\)のオーダーで変化する運動エネルギーは, 軌道がずれても最初のうちは殆ど増加しない。一方ポテンシャルエネルギーは一定量増加する。
軌道のずれが大きくなって来ると, 運動エネルギーの増加が目立ち出す。ポテンシャルエネルギーは相変わらず一定の割合で増える。 この時点ではポテンシャルエネルギーの増加の方が大きい。やがて運動エネルギーは増加の速度を速め, ポテンシャルエネルギーの増加と等しくなる。 これ以降は運動エネルギーが急増する。
 この等しくなった点が実現する軌道で, 確かに\(~L=T-U~\)の極小点であり, 数学的に求めるのがオイラー・ラグランジュ方程式である。
 \(AMB~\)から始めたが, 本当は現実のコースから始めた方が良い。そうすれば, 上方へずれた場合も, 下方へずれた場合も運動エネルギーの変化の方が大きいことが分かる。
 現実の質点は, ほんの少しコースをずれたときに, 運動エネルギーの変化とポテンシャルエネルギーの変化の度合いが等しくなるようなコースを選んでいるのである。 変化の合計がゼロでは無く「両方が同じだけ増加する」。
 \(L=T-U~\)とすれば\(~L~\)が極小値を取り得るが, ニュートン力学からの導出では文字を減らすために過ぎなかった。\(T~\)と\(~U~\)をそのまま残し, \[\displaystyle\delta\int Tdt=\delta\int Udt~\] が自然が選ぶ軌道であると言った方が, 初学者には分かりやすい気がするが。
 しかし変分原理から求める場合は, 何か極小となるものを探さなければならない。\(L=T-U~\)が必要か。いや, ただ極小となるだけだったら, \(L=\sqrt{T-U}~\)でも良いかもしれない。しかしニュートンの運動方程式と合わせるためには(1)が必要。故に\(~U~\)に負符号をつけて\(~L=T-U~\)とする必要がある。
ニュートンの運動方程式と合わせるためだけという消極的な理由であるが, これ以上追及しても時間の無駄遣いかもしれない。
 少々文学的な表現になるが, ニュートン, オイラー, ラグランジュの閃きは\(~L=T-U~\)の一点で出会った。ここら辺りで納得しよう。

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした!

 \(\Delta T=\Delta U~\)が自然が選ぶ軌道である。自然はバランスを保つ。自然は中庸を好む。言葉を並べれば並べるほど, 全てをご存じの全知全能の存在が御座せ(おわせ)られるのではないか?になってしまう。