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湘南理工学舎
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2024/03/20

 楽しく学ぶ…解析力学

 変分原理 オイラー・ラグランジュ方程式

オイラーは幾何学的な方法で, ラグランジュは純代数的に導いた。
汎関数 関数を入力とする関数。
 数に対して数を対応させるのが関数であり, 関数に対して数を対応させる仕組みを汎関数と呼ぶ。例えば\(~x~\)の関数\(~y(x)~\)に対して, \[V[y]=y(-1)-2y(2),\; W[y]=\int_{0}^{1}3ydx \] という式で定義された\(~V[y],W[y]~\)は汎関数である。\(y~\)に\(~y=(x+1)^2~\)という関数を代入すると \[\begin{align} V[y]&=y(-1)-2y(2)=(-1+1)^2-2(2+1)^2=-18 \\ W[y]&=\int_{0}^{1}3ydx=\int_{0}^{1}3(x+1)^2dx=[(x+1)^3]_{0}^{1}=8-1=7 \tag{1} \end{align} \] のように, 関数\(~y(x)~\)を定めると, 値が求まる。異なる\(~y(x)~\)を与えれば当然返す値も異なる。
 異なる\(~y(x)~\)ではなく, 異なる\(~x~\)を与ても返す値は異なるが, 汎関数の場合は異なる\(~\bm y(\bm x)~\)と言うところが肝心である。
関数形を僅かに変えると, 汎関数もわずかに変わる。例えば(1)式において, \(y(x)=(x+1)^2\to y(x)=(x+1)^2+0.01~\)とすると, \[V[y]=\int_{0}^{1}3ydx=\int_{0}^{1}3\{(x+1)^2+0.01\}dx=[(x+1)^3+0.03x]_{0}^{1}=8.03-1=7.03 \] この変化分\(~\delta V[y]~\)を変分と呼ぶ。「同一の\(~x~\)」に対する関数値の差である。

変分法
最速降下線問題 歴史的なこともあり, 変分法の例題として最も多く取上げられているようである。
 「曲線に沿って物を転がしたときに,一番速く転がり落ちる曲線の形は何か?」という, 歴史的に有名な問題である。1696年, ヨハン・ベルヌーイがライバル達の鼻をあかそうとして出題したが, ニュートンは一夜にして解いてしまった。ベルヌーイは大変悔しがったという。
降下線

オイラーもラグランジュもこれから述べる方法で解いた分けではないが, 現代では分かり易いという理由で以下の変分法による説明が多い。

 位置\(~y~\)での速さは\(~1/2\;mv^2=mgy~\)より, \(v=\sqrt{2gy}\)である。微少時間に進む距離は\(~ds=vdt~\)より, \[\sqrt{2gy}\cdot dt=\sqrt{dx^2+dy^2}=\sqrt{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2}\;dx \] \[dt=\sqrt{\frac{1+y'^2}{2gy}}dx \] 従って\(~A\to B~\)に要する時間は, \(~\displaystyle F(x,y,y')=\sqrt{\frac{1+y'^2}{2gy}}~\)とすると, \[T=\int_{0}^{b}F(x,y,y')dx \] である。この\(~T~\)を最小とする\(~y=f(x)~\)を見つければ良いのであるが, 簡単には見つからない。
 いきなりだが無数の思考錯誤の末, その解\(~y=f_0(x)~\)が見つかったとする。ここで, この関数を\(~y=f_0(x)+\delta y~\)へと僅かに変化させる。
\(\bm{x}~\)は変化させず, 関数形を僅かに変化させるのである。\(y'~\)も\(~y'=f'_0(x)+\delta y'~\)となり, 到達時間も\(~T+\delta T~\)となる。
\[\begin{align} \delta T&=\int_{a}^{b}F(x,y+\delta y,y'+\delta y')dx-\int_{a}^{b}F(x,y,y')dx \\ &=\int_{a}^{b}[F(x,y+\delta y,y'+\delta y')-F(x,y,y')]dx \\ &=\int_{a}^{b}\left[F(x,y,y')+\dd{F}{y}\delta y+\dd{F}{y'}\delta y'+O(\delta ^2)-F(x,y,y')\right]dx \\ &=\int_{a}^{b}\left(\dd{F}{y}\delta y+\dd{F}{y'}\delta y'\right)dx \end{align} \] 2行目から3行目はテイラー展開で,\(~O(\delta ^2)~\)は2次以上の微少量で無視した。また, \[\begin{align} \delta y'&=f'(x)-f'_0(x)\\ &=\frac{d}{dx}[f(x)-f_0(x)]=\frac{d}{dx}\delta y \end{align} \] 微分記号をきちんと書けば \[\frac{d}{dx}\delta y=\delta\left(\frac{dy}{dx} \right) \] であり(\(\delta~\)\(~d/dx~\)は交換可能), これを(1)式右辺, 被積分第2項に代入し, 部分積分を用いると, \[\begin{align} \int_{a}^{b}\dd{F}{y'}\delta y'dx&=\int_{a}^{b}\dd{F}{y'}\left(\frac{d}{dx}\delta y\right)dx \\ &=\Bigl[\dd{F}{y'}\delta y\Bigr]_{a}^{b}-\int_{a}^{b}\frac{d}{dx}\left(\dd{F}{y'}\right)\delta ydx \\ &=-\int_{a}^{b}\frac{d}{dx}\left(\dd{F}{y'}\right)\delta ydx \end{align} \] となる。2行目右辺第1項は, \(\delta f(a)=\delta f(b)=0~\)なのでゼロである。これを(1)式に代入し, \(\delta y~\)をくくり出すと, \[\delta T=\int_{a}^{b}\Bigl[\dd{F}{y}-\frac{d}{dx}\left(\dd{F}{y'}\right)\Bigr]\delta ydx \] が得られる。解\(~y=f_0(x)~\)は無数の思考錯誤の末得られた結果である。つまり\(f_0(x)~\)を微少\(~\delta y~\)だけ変化させても\(~\delta T=0~\)ということである。
正しく表現すると, 任意の\(~\delta y~\)に対して\(~\delta T=0~\)が成り立つためには次の式が成り立つ, である。 \[\frac{d}{dx}\left(\dd{F}{y'}\right)-\dd{F}{y}=0 \tag{1} \] となる。(1)式を, 変分問題\(~\delta T=0~\)に対するオイラーの方程式と呼ぶ。専門用語では\(~T~\)に停留値を与える汎関数の極値関数を求める問題と言う。
 なお既に勉強した読者は「オイラー・ラグランジュ方程式」では無いのかと思うであろう。オイラーは1変数の場合に(1)式が成り立つことを指摘し, ラグランジュは \[F=F(x,y_1\dots ,y_n,\dot{y_1},\dots ,\dot{y_n}) \] の場合に拡張した(この場合(1)式に相当するものは連立方程式となる)ことから, (1)式は一般的にはオイラー・ラグランジュ方程式と呼ばれている。 (津田塾大学 中根美知代, ハミルトンとヤコビの研究における変分法と1階偏微分方程式 )

ニュートンの運動方程式からの導出 変分法ではないが, 取敢えず納得する簡便な方法。
 オイラーのトリックに倣い, 運動方程式 \[m\frac{dv}{dt}=F \] の両辺に\(~v~\)をかけ, (オイラーは\(m\bm{a}=\Vec F~\)の両辺と速度ベクトル\(\bm{v}~\)の内積を取った), \[\begin{align} m\frac{dv}{dt}v&=Fv \\ \frac{d}{dt}\left(\frac{1}{2}mv^2\right)&=Fv \\ \frac{d}{dt}T&=Fv \end{align} \] を得る。\(T~\)は運動エネルギーであるが, オイラー自身はエネルギーという概念を持っていなかったという。
 両辺を\(~v~\)で偏微分して, \(\displaystyle F=-\dd{U}{x}\)(保存力)を用いると, \[\frac{d}{dt}\left(\dd{T}{v}\right)=-\dd{U}{x} \tag{2} \] を得る。慣例に従って\(~v=dx/dt=\dot{x}~\)とし, \(L=T(\dot{x})-U(x)~\)とすると, 文字が一つ減って\(~(T,U\to L)~\), \[\frac{d}{dt}\left(\dd{L}{\dot{x}}\right)=\dd{L}{x}\tag{3} \] となる。偏微分に注意して, 上記\(~L~\)を(3)式に代入すれば(2)式となり, 簡単に確かめられる。\(L~\)をラグラジアンと呼ぶ。
ただしラグランジュ自身は\(~L=T-U~\)として, これをラグラジアンと呼ぶ事はなかった。\(~L=T-U~\)としたのは誰だろう?
 (3)式がオイラー・ラグランジュ方程式である。(1)式と見かけは異なるが, 同じものである。解析力学では専ら(3)式を用いる。
上記の例では保存力に限定しているが, ニュートン力学と等価であることを示すだけなら十分であろう。
「文字が一つ減って」といかにも安易な表現であるが, 今は取敢えず納得しよう。オイラーの信念「自然は最小の原理に従って作用する」はどこにも表れていないので, 心理的抵抗は少ないかもしれない。

余談:ラグラジアンは電磁気学にも, 相対性理論にも存在する。変分原理は狭義の力学にとどまらず, 光学や電磁気学から相対性理論や量子力学に至るまで同一の方法(変分原理) によって定式化できる。驚くべき事実であるが, 言葉で表現するとどうしても「全てをご存じであらせられる‥‥」のようになってしまう。

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした!

 幾何学を用いたオイラーはラグランジュの解析的手法を賞賛した。一方, ニュートンの幾何学が難解であるとして, 解析的手法に改めたのもオイラーであったのだが。