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湘南理工学舎
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2023/07/08
2022/01/31

 楽しく学ぶ…物理数学

 ベクトル場の回転 
(rotation of vector field)
 --目 次--
ベクトル場の回転の定義
回転の式❶’の導出
回転の物理的な意味
回転rotの例
例題:ベクトルの回転を求める

【閑話】電場の回転の式❹の導出
   
 今回は「ナブラ∇ とベクトルA の外積」である「\(∇\x \bv{f}\)」で表せるベクトルの回転「\( rot\ \bv{f} \)」 を学びます。
回転(rot)は流体の渦の強さと方向を表します。
(ここでは渦を引用して説明しています。)
電磁気学での例は(【参照先】)を見てください。

今まで学んだ勾配と発散を書くと:
(いずれもナブラ記号∇を使った演算である)
・勾配:\(grad\ \bv{f}=\ul{∇\ f} \) \(=(\pder{f(x,y)}{x},\pder{f(x,y)}{y},\pder{f(x,y)}{z}) \)

( スカラー\( f \) から ベクトルに変換している)

・発散:\(div\ \bv{f}= \ul{∇\cdot \bv{f}}\) \(=\pder{}{x}f_x+\pder{}{y}f_y+\pder{}{z}f_z\)

( ベクトル\( \bv{f} \) から スカラーに変換している)


今回学ぶのは "rotation":
・回転:\(\color{blue}{rot\ \bv{f}=\ul{ ∇\x \bv{f}}}\) \(\color{blue}{= (\pder{f_z}{y}-\pder{f_y}{z},} \) \(\color{blue}{\pder{f_x}{z}-\pder{f_z}{x},} \) \(\color{blue}{\pder{f_y}{x}-\pder{f_y}{y} )} \)

( ベクトル\( \bv{f} \)場から ベクトル場に対応 )

上記の3式の違いの流れを見ると面白いです。
\( ∇\ f\to∇\cdot \bv{f}\to∇\x \bv{f}\)
∇式の御三家みたいですね。

次にベクトル場における回転の定義を示します。
ベクトルの場の回転  
位置ベクトル\(\bv{r}=(x,y,z)\)とする。
ある位置\(\bv{r}\)におけるベクトル\(f(r)\):
\(\bv{f(r)}=\)\(f(x,y,z)\) \(=( f_x(x,y,z),f_y(x,y,z),f_z(x,y,z))\)に対して

\(f_x\)は\(f\)の\(x\)成分(下添字\(x\)は座標軸を示す)
下式をベクトル場の回転(rotation)という。
\( rot\ \bv{f}\)\(= (\pder{f_z}{y}-\pder{f_y}{z},\ \)\(\pder{f_x}{z}-\pder{f_z}{x},\ \)\( \pder{f_y}{x}-\pder{f_x}{y}\ )\) \(\ :❶\)

上式は以下の「ベクトルの外積」として表せる。

\( rot\ \bv{f}=\color{blue}{∇ \x \bv{f}}\)\(\ :❶'\)  (※):導出


ベクトル場 \(\bv{f}\) から ベクトル場\(\ rot \bv{f}\) への対応の式である。

(※):式❶' の導出 

\(∇=(\pder{}{x},\pder{}{y},\pder{}{z})\)
\(\bv{f}=( f_x ,f_y ,f_z)\) (変数は省略) 
\(\underline{ rot \bv{f} \ }=∇ \x \bv{f}\) \(=(\pder{}{x},\pder{}{y},\pder{}{z}) \x ( f_x ,f_y ,f_z)\) Ⓧ続く
 ベクトルの外積の【参考先】

参考:ベクトルの外積の演算方法:
ベクトル\(a\)と\(b\)のベクトルの外積(ベクトル積、クロス積ともいう)は以下となる。
\(a= \left( \begin{array}{c} a_1 \\ a_2 \\ a_3 \end{array} \right) \) \(,\) \(b= \left( \begin{array}{c} b_1 \\ b_2 \\ b_3 \end{array} \right) \) とすると:
\(a \times b=\) \( \left( \begin{array}{c} a_2 b_3 - a_3 b_2 \\ a_3 b_1 - a_1 b_3 \\ a_1 b_2 - a_2 b_1 \end{array} \right) \)

Ⓧの続き:
上記を参考にして、ベクトルを以下のように縦行列に表示すると外積計算しやすい

\(=\left( \begin{array}{c} \pder{}{x}\\ \pder{}{y}\\ \pder{}{z} \end{array} \right) \) \( \x \) \( \left( \begin{array}{c} f_x \\ f_y \\ f_z \end{array} \right) \) \(= \left( \begin{array}{c} \pder{f_z}{y}-\pder{f_y}{z}\\ \pder{f_x}{z}-\pder{f_z}{x}\\ \pder{f_y}{x}-\pder{f_x}{y} \end{array} \right) \)

\(\therefore 式 ①=①' \)

 回転の物理的意味  
  
ベクトルの回転
 fig1 速度ベクトル場

ベクトルの回転
 fig2 回転rot の概念

速度\(V\)に対しx軸方向の速度成分を\(V_x\) 、 y軸方向の速度成分を\(V_y\)とする。
簡単のため、z軸を一定にしたxy平面の2次元での速度ベクトル場\((V_x,V_y) \)を考えます。
 fig1 の速度ベクトル場において点Q での速度ベクトル\(V(V_x,V_y) \)を表し、点Q に置かれた葉っぱ が速度ベクトルにより回転しながら流れていくイメージをして下さい。(この回転について考える)

・葉っぱ が回転しながら流れるときは「渦がある」といい、\(rot \bv{V} \ne 0\) である。
・葉っぱ が回転しないときは「渦がない」といい、\(rot \bv{V} = 0\) である。 
・\(rot \bv{V}\) は渦の強さを示している。

 fig2 では葉っぱ ではなく、簡単のため x 軸に平行な棒(長さ\(Δx\))、y 軸に平行な棒(長さ\(Δy\))を置き、速度\(V\) のx成分の\(V_x\) と y成分の\(V_y\)がどのように 回転に対し、作用するかを調べていきます。
ここでの回転は反時計方向を正とする。(右手系を使う)【参照先】
fig2 の左下の図【 x 軸に平行な長さΔx の棒】回転:
\(Δx\)棒の回転にはy軸方向の速度\(V_y\)が作用し、x軸方向の速度\(V_x\)は回転には寄与しない。
点Qには\(V_y(x,y)\)、点Aには\(V_y(x+Δx,y)\)が作用するので、\(Δx\)棒の点Aは\(V_y(x+Δx,y)-V_y(x,y)\)の分、先に進む…すなわち回転する。     
以下は円運動の角速度 \(ω=\frac{v}{r}\) (半径r、周束度v)を留意する。
Q を中心に A が回転し、その単位時間当たりの回転角\(θ_y\)(rad)は:
\(θ_y\)\(=\frac{V_y(x+Δx,y)-V_y(x,y)}{Δx}\)

上式を微分すると、回転作用となる渦の強さ\(A_y\) が求まる。
全体的には3次元を考えているので偏微分となる
\(A_y=\displaystyle \lim_{ Δx \to \infty } \frac{V_y(x+Δx,y)-V_y(x,y)}{Δx}\) \(=\pder{V_y}{x}\) \(\ :❷\) 

fig2 の右下の図【 y 軸に平行な長さΔy の棒】回転:
「\(Δx\)棒」の回転と同様にして\(Δy\)棒の回転は、Q を中心に B が回転し、その単位時間当たりの回転角\(θ_x\)(rad)は:
回転角は反時計方向が正だから \(V_x(x,y+Δy)-V_y(x,y)\)が正なら、回転角は負であるので

\(θ_x=-\frac{V_x(x,y+Δy)-V_y(x,y)}{Δy}\)
\(A_x=-\displaystyle \lim_{ Δx \to \infty } \frac{V_x(x,y+Δy)-V_y(x,y)}{Δy}\) \(=-\pder{V_x}{y}\)\(\ :❸\)


x成分の\(V_x\)によるうずの強さ\(A_y=❷\)と y成分の\(V_y\)によるうずの強さ\(A_x=❸\)を合成(❷+❸)すると:
\(\bv{K_z}=\bv{A_y}+\bv{A_x}=\underline{ \pder{V_y}{x} -\pder{V_x}{y} }\)

下線部は先述の「ベクトル場の回転式❶」の x成分です。(ベクトルの記号が異なるが)
これは下図のように「xy 平面」の点Q を通るz軸に平行な直線(xy平面の垂線)を中心に回転するうずの強さ\(K_z\) です。
このベクトルを3次元で表すと:
「xy 平面」:\(\bv{K_z}\)
\((0,0,K_z)\)\(=(0,0,\pder{V_y}{x} -\pder{V_x}{y})\)

同様にして「yz 平面」の \(\bv{K_x}\) と 「zx 平面」の \(\bv{K_y}\)は次のようになる。
「yz 平面」:\(\bv{K_x}\)
\((K_x,0,0)\)\(=(\pder{V_x}{y} -\pder{V_y}{z},0,0)\)

「zx 平面」:\(\bv{K_y}\)
\((0,K_y,0)\)\(=(0,\pder{V_x}{z} -\pder{V_z}{x},0)\)

以上を合成すれば、ベクトル場の回転の式❶ が導出できる。

\( rot\ \bv{f}\)\(=(K_x,k_y,k_z)\)
\( rot\ \bv{f}\)\(= (\pder{f_z}{y}-\pder{f_y}{z},\ \)\(\pder{f_x}{z}-\pder{f_z}{x},\ \)\( \pder{f_y}{x}-\pder{f_x}{y}\ )\) \(\ :❶\)


ベクトルの回転
   fig3 \(rot \bv{f}\) による回転作用 \(K_z\)


  
 例1:電場の回転  
以下は「磁場\(\bv{B}\) の時間変化が電場\(\bv{E}\) の回転を作る」式です。
(電場\(\bv{B}\) の渦ともいえる)
電磁気学のマックウェル方程式の1 つである。
\(∇\x \bv{E} = -\pder{\bv{B}}{t}\) \(\ :❹\)
右辺は「-」だから、磁場\(\bv{B}\)が上向きのとき電場\(\bv{E}\)の回転は時計方向です。
ベクトルの回転
   fig4 回転による作用

 例2:ベクトルポテンシャル\(\bv{A}\)  
以下のAをベクトルポテンシャルといいます。
 \(\bv{B}=rot\ \bv{A} =∇ \x \bv{A}\)
また次の式が成り立ちます。
 \(rot\bv{B}=∇ \x \bv{B} =μ_0\bv{j}\)
 \(μ_0\bv{j}=∇\x(∇\x \bv{A})=∇^2\bv{A}\)
(\(μ_0\):真空中の透磁率)
磁場\(\bv{B}\)はベクトルポテンシャル\(\bv{A}\) が作り、ベクトルポテンシャル\(\bv{A}\) は電流密度\(\bv{j}\)が作っている。

 例題 
次のベクトル\(\bv{f}\)の回転 rot を求めよ
\(\bv{f}(x,y,z)=(3xyz,-yz^2,x^2y)\)
ベクトルを縦行列に表示して外積計算する
\((f_x,f_y,f_z)=(3xyz,-yz^2,x^2y)\)として

\(\color{red}{ rot\ \bv{f}= ∇ \x \bv{f} }\)
\(=\left( \begin{array}{c} \pder{}{x}\\ \pder{}{y}\\ \pder{}{z} \end{array} \right) \) \( \x \) \( \left( \begin{array}{c} f_x \\ f_y \\ f_z \end{array} \right) \) \(= \left( \begin{array}{c} \pder{f_z}{y}-\pder{f_y}{z}\\ \pder{f_x}{z}-\pder{f_z}{x}\\ \pder{f_y}{x}-\pder{f_x}{y} \end{array} \right) \)
\(= \left( \begin{array}{c} \pder{(x^2y)}{y}-\pder{(-yz^2)}{z}\\ \pder{(3xyz)}{z}-\pder{(x^2y)}{x}\\ \pder{(-yz^2)}{x}-\pder{(3xyz)}{y} \end{array} \right) \) \(= \left( \begin{array}{c} x^2+2yz\\ 3xy-2xy\\ 0-3xz \end{array} \right) \) \(\color{red}{ = \left( \begin{array}{c} x^2+2yz\\ xy\\ -3xz \end{array} \right) } \)


  

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした

【興味のある方はお読みください!】
上記の式❹(電場の回転)の導出
\(∇\x \bv{E} = -\pder{\bv{B}}{t}\) \(\ :❹\)
磁束\(\bv{B}\) の時間変化=電場\(\bv{E}\) の回転を作る
関係する記号の説明

・\(\bv{E}\):電場\(\small{(N/C)}\)  ・\(V\):電位\(\small{(V)=(J/C)}\)     
・\(\bv{B}\):磁場\(\small{(Wb/m^2)}\)(磁束密度)
・\(\Phi\):磁束\(\small{(Wb)}\)  ・\(ds\):積分の面要素
・\(S\):積分の閉曲面領域
・\(∂S\):積分の閉曲線(=C)  (ここでの∂記号は「境界」を表している)
・\(n\):面要素\(dS\)の単位法線ベクトル 
・\(x\):距離 \(\small{(m)}\)
・\(\oint_{∂S}\):周回積分

ファラデーの電磁誘導の式(シンプルだが、基本となる式です)
\(V=-\der{\Phi}{t}\) \(\ :①\)

磁場(磁束密度)\( \bv{B}\) と磁束\(\Phi\)の関係式:
\(\Phi=\displaystyle \int_S \bv{B}\cdot \bv{n} ds\)\(\ :➁\)

電場(電界)\(\bv{E}\) と電位\(V\)の関係式:
\(V=\displaystyle \oint_{∂S} E \cdot d \bv{x}\) \(\ :③\)

式①に式➁、③を代入すると
\(V=\displaystyle \oint_{∂S} \color{red}{E \cdot d \bv{x}}\) \(= -\displaystyle \int_S \pder{B}{t} \cdot n dS\) \( (=-\der{\Phi}{t})\) \(\ :④\)

ストークスの定理の式:

\( \displaystyle \int_S \color{red}{ (∇\x \bv{E}) \cdot ndS} \) \(= \displaystyle \oint_{S} E \cdot d\bv{x} \)\(\ :⑤\)
この定理は今後の講義で扱います。

これより式④は式⑤を用いて:
\( \displaystyle \int_S ( \underline{ ∇\x \bv{E} } ) \cdot ndS \) \(= -\displaystyle \int_S \underline{\pder{B}{t} }\cdot n dS\) \(\ :④'\)

上式の下線部は等しいから
\(\therefore \ \) \(∇\x \bv{E}\) \(= \pder{B}{t}\) \(\ :❹\)

ベクトルの回転
 積分領域の表示