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湘南理工学舎
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2022/09/21

 楽しく学ぶ…初歩の数学

 放 物 線   (parabola)

 --目 次--
はじめに(グラフとは)
放物線の定義
放物線の基本性質
例題1:焦点・準線を求める
放物線の平行移動
例題2 焦点・準線を求める
例題3 焦点・準線を求める
放物線の媒介変数表示
例題4 媒介変数表示
例題5 放物線に内接する問題1
例題6 放物線に内接する問題2
放物線のその他の性質
   
 はじめに 
 今回の放物線をはじめ、これから2次曲線の楕円、双曲線について学んでいきます。
そこでグラフとは何かついてその定義を見ていきましょう
関数\(f\)とグラフとは:
関数f とは変数x の定義域 D から実数\(\bv{R}\)への写像(関数は写像である)、変数x に対しただ1つ定まる実数である。
また、グラフとは定義域上の\(x\) に対応する点\((x,f(x))\) の集合である。

これを集合の式で表すと:

2次元(\(\bv{R}^2\))のとき: \(\{(x,f(x))\in R^2 \)\(\ | x \in D\} \)

グラフは次元により、\(\bv{R}^2\)では曲線、\(\bv{R}^3\)では曲面である。

 放物線 
 ボールを斜め上に投げたときのボールの軌跡が放物線であり、\(y=ax^2+bx+c\) などの式で表される曲線です。
また放物線は平面上\(\bv{R}^2\)で定義される曲線、その拡張として、放物線を対称軸で回転させると3次元\(\bv{R}^3\)の放物面の曲面となります。
パラボラアンテナで受信する「光、電波」は放物面で反射し放物面の焦点のー点に集まる、これは放物線の性質を利用している。

放物線は数学的/幾何学的に次のように定義されています。
 放物線の定義 
定点\(F\) と\(F\) を通らない定直線\(L\) までの距離が等しい点\(P\) (※1) の軌跡を放物線という。
(注(※1):以下の基本性質式❶のこと) 定点\(F\) を焦点,定直線\(L\) を準線、焦点を通り準線に垂直な直線を(対称軸) といい,軸と放物線の交点を頂点 という

大変明瞭簡潔すぎて、難しいですね!
下のグラフを見てください。
・要は焦点までの距離と準線までの距離が等しい点の集合である
さらに基本性質に進んでみよう。

 ここで簡単に用語について説明しておきましょう。
幾何数学と光学などで異なり、以下は放物線の幾何よりの説明です。
頂点:放物線と対称軸の交点(凸部の先端)
準線:放物線上の点P から焦点F までの距離PF と 同じ距離(※2)にある 点P からの距離(PH)にある定直線のこと。
焦点:光学では入射光線が集中する点のこと、幾何学では曲線を作るための特別な点。
上記定義の朱記部を実現(基本性質式❶)させる点\(F\)のこと。

注(※2):離心率

\(\frac{PF}{PH}=e\)を離心率と呼び、離心率により、次の分類ができる。
・\(e=1\):放物線  ・\(1 \lt e\):双曲線  ・\(0\lt e\lt 1\):楕円

放物線横1
   fig1 左に凸
放物線横2
   fig2 右に凸

 次の基本性質での放物線の方程式は、見慣れない形ですね、この式 \(y^2=4px\) を標準形 といいます。
標準形のメリットは放物線の頂点、焦点、準線がすぐわかることです。また曲線がイメージしやすい。
縦型はfig2,3 または「例題1」を参照して下さい。

 放物線の基本性質  (上図fig1、fig2 を参照)
•方程式 \(y^2=4px\) (\(fig1:p \gt 0)\)\(\ , \) (\(fig2:p \lt 0)\)
•頂点:(0,0)原点
•焦点F:\(F(p,0)\)
•準線L:\(x=-p\)
•対称軸:x軸

動点Pと焦点Fとの距離PF
•\(PF=\sqrt{(x-p)^2+y^2}\)

動点PとHとの距離PH
•\(PH=|x+p|\)

以下が同値(※1)
•\(PF=PH \ ❶\)\(\iff y^2=4px\)
(※1)の導出
\(PF=PH\) より
\(\sqrt{(x-p)^2+y^2}=|x+p| \\ \)
\((x-p)^2+y^2\)\(=(x+p)^2\\ \)
\(x^2-2xp+p^2+y^2\)\(=x^2+2xp+p^2\\ \)
\(\therefore y^2=4px\\ \) 

下図は慣れ親しでいる縦形の放物線です。

放物線縦

 fig3 下に凸

放物線縦
 

 fig4 上に凸


 例題1 
4つの式を標準形に変形し、焦点と準線を求めよ。
\(・x=ay^2 \ ・x=-ay^2 \) \(\ ・y=ax^2 \ ・y=-ay^2 \)
3,4番目が縦型、横型のx とy の役目が入れ替る。

【解】:
\(\color{blue}{x=ay^2}\) …fig1 横形(左に凸)
\(y^2=\frac{1}{a}x\)…(標準形)
\(y^2=4px=4 \cdot \underline{\frac{1}{4a}x}\)
\( \therefore p=\frac{1}{4a}\)
・焦点:\( \underline{F=(\frac{1}{4a},0)}\) ・準線:\(\underline{x=-\frac{1}{4a}}\)

\(\color{blue}{x=-ay^2}\) …fig2 横形(右に凸)
\(y^2=-\frac{1}{a}x\) …(標準形)
\(y^2=4px=4 \cdot \underline{-\frac{1}{4a}x}\)
\( \therefore p=-\frac{1}{4a}\)
・焦点:\( \underline{F=(-\frac{1}{4a},0)}\) ・準線:\(\underline{x=\frac{1}{4a}}\)

\(\color{blue}{y=ax^2}\) …fig3 縦形(下に凸)
横形のx とy の役目の入れ換え なので\(x^2=4py\) となる。
\(x^2=\frac{1}{a}y\) …(標準形)
\(x^2=4py=4 \cdot \underline{\frac{1}{4a}y}\)
\( \therefore p=\frac{1}{4a}\)
・焦点:\( \underline{F=(0,\frac{1}{4a})}\) ・準線:\(\underline{y=-\frac{1}{4a}}\)

\(\color{blue}{y=-ax^2}\) …fig4 縦形(上に凸)
\(x^2=-\frac{1}{a}y\) …(標準形)
\(x^2=4py=4 \cdot \underline{-\frac{1}{4a}y}\)
\( \therefore p=-\frac{1}{4a}\)
・焦点:\( \underline{F=(0,-\frac{1}{4a})}\) ・準線:\(\underline{y=\frac{1}{4a}}\)


 放物線の平行移動  
1.横形
\((y-y_s)^2=4p(x-x_s)\)のとき
(基本形 \(y^2=4px\): 頂点\((0,0)\))
・頂点:\((x_s,y_s)\) ・準線:\(y=-p+x_s\) ・焦点:\((p+x_s,y_s)\)
基本形に対して、y を\((y-y_s)\) に、x を\((x-x_s)\) に置き換えた式と見る。
2.縦形
\((x-x_s)^2=4p(y-y_s)\)のとき
(基本形 \(x^2=4py\): 頂点\((0,0)\)
・頂点:\((x_s,y_s)\)  ・準線:\(y=-p+y_s\)  ・焦点:\((x_s, p+y_s)\)

3.一般式のときどうなるか:
一般式 \(y=ax^2+bx+c\)について
(一般式に焦点、準線は反映されていないですね)
次のように変形できたとき
 頂点:(p,q)   対称軸:x=p

・\(y=a(x-p)(x-q)\)
 x軸の交点が(p,0) と(q,0)の2点


 例題2  
次式の頂点、準線、焦点を求めよ。
\(x=\frac{y^2}{2}-2y+4 \)

【解】:
与式を次のように展開していく
\(x=\frac{1}{2}(y^2-4y+8)\)
\(2x=y^2-4y+8\)
\(2x-4=y^2-4y+4\)
\(y^2-4y+4 =2x-4 =2(x-2)\)

\((y-2)^2 =4 \cdot \frac{1}{2}(x-2)\)

・頂点:\((2,2)\)   ・焦点:\( F=(2+\dsfr{1}{2},2)\)   ・準線:\( y=2-\dsfr{1}{2}=1+\dsfr{1}{2}\)
・fig1 の横型、左に凸の放物線

 例題3  
次式の頂点、準線、焦点を求めよ。
\(y=\frac{x^2}{2}-2x+1 \)

【解】:
与式を次のように展開していく
\(y=\frac{1}{2}(x^2-4x+2\) \(\iff \) \(2y=x^2-4x+2\)

\(2y+2=x^2-4x+4\)\(=(x-2)^2\)

\(\underline{(x-2)^2}=2(y+1)=\underline{4 \cdot \dsfr{1}{2}(y+1)}\)

これより:
・頂点:\((2,-1)\)   ・焦点:\( F=(2,-1+\frac{1}{2})\)\(=(2,-\dsfr{1}{2})\)   ・準線:\( y=-1+\dsfr{1}{2}=-\dsfr{1}{2}\)
・fig3 の縦型、下に凸の放物線


 放物線の媒介変数表示 
 媒介変数表示(パラメータ表示)とは「変数(ここではx,y) の関係を他の変数(ここではt )を用いて表わす」ことです。
一つの変数t により2変数x,y が決まる。
放物線\(y^2=4px\)のy は根号で表され、1つのx 対し yは2値 存在する。(※1)
媒介変数表示によると根号を外せるので1 つのt 対し x,y は1値である。(※1)
注(※1):これによりパソコンのエクセルなどで放物線がスムーズに描ける。
\(y^2=4px\) の媒介変数表示
\(x=pt^2\)\(\ :ⓐ\) とおくと
\(y^2=4p^2t^2\)
\(y=2pt\) \(\ :ⓑ\)
この式ⓐ、ⓑ にt に数値を代入して、求めて点(x,y) をプロットすれば曲面が描けます。
\(y^2=4px\)なら t を例えば(4 ,3~ 0 ~-3,-4)として、対応する(x,y) をプロットすればよい。
  
 例題4  
次式を媒介変数表示せよ
\(y^2=8x\)

【解】:
\(y^2=4px= 4 \cdot 2 \cdot x\)

\(\therefore p=2\)

\(\underline{x=pt^2}\) とおくと \(x=2t^2\)

\(y^2=4px=4\cdot 2 \cdot 2t^2=16t^2\)

\(\therefore \underline{ y=4t\ ,\ x=pt^2 }\)

    

 例題5   放物線に内接する円\(C_1\)についての問題
下図の左側のABの長さを求めよ。

  
放物線横1
   fig5 内接する円
放物線:\(y=ax^2\) \(\ :ⓐ\)
点\(P(q,y(q))\) の法線の式【参照先】
\(y-y(q)=-\frac{1}{y'(q)}(x-q)\) \(\ :ⓑ\)
が分かれば、点Pの座標、半径r が既知なので答えが求まる。
ⓐ:\(y'(q)=2ax=2aq\)
ⓐ:\(y(q)=ax^2=aq^2\)
上記をⓑに代入
\(y=-\frac{1}{y'(q)}(x-q)+y(q)\) \(=-\frac{1}{2aq}(x-q)+aq^2\) \(=-\frac{1}{2aq}x +\frac{1}{2a}+aq^2\)
点Aのy成分=y(0) は
\(y(0)=-\frac{1}{2aq}0 +\frac{1}{2a}+aq^2\) \(=\frac{1}{2a}+aq^2\)
\(AB=\frac{1}{2a}+aq^2-y(q)\) \(=\frac{1}{2a}+aq^2-aq^2\) \(=\color{red}{ \frac{1}{2a} }\)
直線\(AB=\frac{1}{2a}\)はx に関係なく一定である。
これにより、円の中心A を指定すると、計算により内接点P 、さらに半径r が求まる。
例えば、\(y=ax^2\) \(, \) \(A=(0,s)\)とすると
\(y(q)=aq^2\) \(, \) \(p=(q,y(q))=(q,aq^2)\) である。
あとは次の計算をするだけで接点P と 半径r が求まる
\(AB=s-y(q)=s-aq^2=\color{red}{ \frac{1}{2}a }\)
\(q^2=\frac{1}{a}(s-\frac{1}{2}a)\)
これより内接点の座標は\((q,aq^2)\)は求まる。
次に三角形ABP を考えて
\(r^2=(AB)^2+q^2\)

 例題6   放物線内の上図の原点(0,0)接するする円\(C_2\)についての問題
円\(C_2\)は放物線内((\(y\gt ax^2\))にあり、原点の1点のみに接する円の中で最も大きな半径r を求めよ。
次の2式が成り立ち、連立で求まられる。
\(\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} y=ax^2 :ⓐ \\ x^2+(y-r)^2=r^2:ⓑ \end{array} \right. \end{eqnarray}\)
ⓐより\(x^2=\frac{y}{a}\)をⓑに代入
\(\frac{y}{a}+y^2-2yr+r^2=r^2\)
\(\frac{y}{a}+y^2-2yr=0\)
\(y^2+(\frac{1}{a} -2r)y=0\)

内接する円が大きくなると2点で接するから、1点のみで接するとは:
2式が1点で接する連立方程式の解は重根であるから判別式=0 である。
2次一般式 \(ax^2+bx+c\)の判別式 \(D=\sqrt{b^2-4ac}\)
\(D=\sqrt{(\frac{1}{a} -2r)^2}\)\(=(\frac{1}{a} -2r)=0\)
\( \therefore r=\dsfr{1}{2}a\)


最後に以下の性質を記しておきます。(いつか役に立つことがあるかも!)
 放物線のその他の性質  
性質1(fig6)
直線L に接し、円\(C_1\) と外接しする円\(C_2\)の中心の軌跡は放物線である。
但し円\(C_2\)は上記を満足するようにその半径は可変である。

性質2(fig7)
直線L に接し、円\(C_1\) と内接する円\(C_2\)の中心の軌跡は放物線である。
但し円\(C_2\)は上記を満足するようにその半径は可変である。


放物線横1
  fig6 外接する円の軌跡
  
放物線横1
  fig7 内接する円の軌跡
性質1のとき、どんな放物線になるか求めてみます
・動点P の座標を\((x,y)\) とする
・\(C_1\)の半径\(r_1=1\)は固定。
\(C_2\)の半径は\(C_1\)と接する位置により変化する。
・図中のL は準線ではない、また点Q は焦点ではないことに注意。

上記を注意して以下の式の展開を見てください。
\(OB=1\) \(\, \)  \(PH=x+1\)
長さだから負でなく正の値になる
\(PH=PA\)より
\(QP=PA+r_1\)\(=PA+1=PH+1\)
QP は3平方の定理より\(x成分=(3-x)\)
\(QP=\sqrt{(x-3)^2+y^2}\)\(=PH+1=x+1+1=x+2\)
\((x-3)^2+y^2=(x+2)^2\) ⇔\(x^2-6x+9+y^2=x^2+4x+4\)
\(y^2=10x-5\)
\(y^2=4p(x-a)\)の形にする
\(\underline{ y^2=4\cdot2.5(x-0.5) }\)
\(y^2=10(x-0.5)=10x-5\)
これより
頂点\(\underline{ (0.5,0) }\)

  

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]!

 次回は楕円曲線を予定します。
放物線、楕円、双曲線は円錐曲線の一つですが、そのことについても触れます。
ところで放物線の英名は「parabola」、パラボラアンテナは「parabolic antenna」です。
「parabolic antenna」を直訳すれば「放物線アンテナ」であり、まさにこのアンテナは放物線の性質をよく応用したものです。
パラボラアンテナについてもこれから取り上げていきます。