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湘南理工学舎
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2020/08/16

 楽しく学ぶ…線形代数

 行列の基本

(matrix basics)

 --目 次--
行列とは
行列の和
行列の積
例題
 ∗例題(1)
 ∗例題(2)
 ∗例題(3)
 ∗例題(4)
 ∗例題(5)
 ∗例題(6)
行列の演算の性質1
様々な行列
行列の演算の性質2

1.行列とは
 行列とはある複数の実数を行と列に配置(長方形の形に配列)しこれを括弧()でくくったもの。

次のように行と列から構成されている。
中の数にはベクトルの成分、単なる数値がある。

(1) (3x3)型行=(3行,3列)の行列 
\( \begin{pmatrix} 1& 2& 3\\ 2& 3& 4\\ 3& 4& 5\\ \end{pmatrix} \) \(\begin{array}{c} \cdots 1行\\ \cdots 2行\\ \cdots 3行\\ \end{array}\)
\(\ \begin{eqnarray} \begin{array}{ccc} \vdots& \vdots &\vdots\\ 1 & 2 & 3 \\ 列& 列& 列 \end{array} \end{eqnarray} \)

(2) (3x4)型行列=(3行,4列)の行列 

\( \begin{pmatrix} a_{1\ 1}&a_{1\ 2}&a_{1\ 3}&a_{1\ 4}\\ a_{2\ 1}&a_{2\ 2}&a_{2\ 3}&a_{2\ 4}\\ a_{3\ 1}&a_{3\ 2}&a_{3\ 3}&a_{3\ 4} \end{pmatrix} \)


(3) 行列の成分の表示
・行列の中の各数値は行列の成分である。
・一般化した行列表示は:
 \(a_{i\ j}\) = i 行、j 列の成分

上記以外にその時に応じて様々あります。
   
2.行列の和

\(A= \begin{pmatrix} 1&2&3\\ 2&3&4\\ 3&4&5 \end{pmatrix} \)

\(B= \begin{pmatrix} \color{fuchsia}{4}&\color{fuchsia}{5}&\color{fuchsia}{6}\\ \color{fuchsia}{5}&\color{fuchsia}{6}&\color{fuchsia}{7}\\ \color{fuchsia}{6}&\color{fuchsia}{7}&\color{fuchsia}{8} \end{pmatrix} \)

\(A+B\) \(= \begin{pmatrix} 1+\color{fuchsia}{4}&2+\color{fuchsia}{5}&3+\color{fuchsia}{6}\\ 2+\color{fuchsia}{5}&3+\color{fuchsia}{6}&4+\color{fuchsia}{7}\\ 3+\color{fuchsia}{6}&4+\color{fuchsia}{7}&5+\color{fuchsia}{8} \end{pmatrix} \)

\(= \begin{pmatrix} 5&7&9\\ 7&9&11\\ 9&11&13 \end{pmatrix} \)


   
3.行列の積

行列の積が成立する条件:
matrix product condition
 
             
\(A(m \times \color{red}{n})\)型 x\(B(\color{red}{n} \times p)\)型 =\(C ( m \times p)\)型
行列 A の列 と 行列 B の行が同じであること。
忘れないように!!⇒上式の内側の赤い線の\(n\)のことを思い出そう。
行列の積は \( A B \ne B A \) である。(一般的に交換則は成立しない)

   
行列の積の演算方法:
下図は積の演算のイメージ図(行列(A とB の積)
(行列A)x(行列 B) =(行列C)
詳しくはこれから説明しますが、この図から行列の積の手順が分かるでしょう。
詳細を忘れてもイメージ図が思いだせば演算できます。
     【行列の積のイメージ】
matrix product
 

上図の積の「一般的な表記」は:
\( \begin{pmatrix} a1& a3\\ a2& a4 \end{pmatrix} \) \( \begin{pmatrix} b1& b3\\ b2& b4 \end{pmatrix} \)

\(= \begin{pmatrix} a1b1+a3b2& a1b3+a3b4\\ a2b1+a4b2& a2b3+a4b4 \end{pmatrix} \)



4.例題

(1) \( \begin{pmatrix} 3& 2\\ 2& 1 \end{pmatrix} \) \( \begin{pmatrix} 1& 2& 0\\ 2& 1& -1 \end{pmatrix} \)

確認:(2x2)型x(2x3)型=(2x3)型 ⇒行列の積が成立する。
\(= \begin{pmatrix} 3\cdot1+2\cdot2& 3\cdot2+2\cdot1& 3\cdot0+2\cdot-1\\ 2\cdot1+1\cdot2& 2\cdot2+1\cdot1& 2\cdot0+1\cdot-1 \end{pmatrix} \)

\( =\begin{pmatrix} 7& 8& -2\\ 4& 5& -1 \end{pmatrix} \)
   
[前問の行列を入れ換えた積]
(2) \( \begin{pmatrix} 1& 2& 0\\ 2& 1& -1 \end{pmatrix} \) \( \begin{pmatrix} 3& 2\\ 2& 1 \end{pmatrix} \)

確認:(2x3)型 (2x2)型⇒行列の積が成立しません
∵前の行列の列(3)と後の行列の行(2)が一致していない。

(3)A B= \((a_1\ a_2\ a_3)\) \( \begin{pmatrix} b_1 \\ b_2 \\ b_3 \end{pmatrix} \)
確認:(1x3)型x(3x1)型=(1x1)型⇒行列の積が成立します。
\(= a_1 b_1 + a_2 b_2 + a_3 b_3\)

[全問の行列を入れ換えた積]
(4) \(B A=\) \( \begin{pmatrix} b_1 \\ b_2 \\ b_3 \end{pmatrix} \) \((a_1\ a_2\ a_3)\)
確認:(3x1)型x(1x3)型=(3x3)型⇒行列の積が成立します。

\(= \begin{pmatrix} b_1 a_1& b_1 a_2& b_1 a_3 \\ b_2 a_1& b_2 a_2& b_2 a_3 \\ b_3 a_1& b_3 a_2& b_3 a_3 \end{pmatrix} \)


[3つの行列の積の順番を変える]
(5) \(A(BC)=(AB)C\) を確認する。
\(A= \begin{pmatrix} 1& 2\\ 2& 1 \end{pmatrix} \) , \(B= \begin{pmatrix} 2& 1\\ 4& 3 \end{pmatrix} \) , \(C= \begin{pmatrix} 1& 2\\ 3& 4 \end{pmatrix} \)


\(\underline{A(BC)}\):
\(BC= \begin{pmatrix} 2& 1\\ 4& 3 \end{pmatrix} \) \( \begin{pmatrix} 1& 2\\ 3& 4 \end{pmatrix} \) \(= \begin{pmatrix} 5& 8\\ 13& 20 \end{pmatrix} \)

\(A(BC)= \begin{pmatrix} 1& 2\\ 2& 1 \end{pmatrix} \) \( \begin{pmatrix} 5& 8\\ 13& 20 \end{pmatrix} \) \(= \begin{pmatrix} 31& 48\\ 23& 36 \end{pmatrix} \)
\(\underline{(AB)C}\):
\(AB = \begin{pmatrix} 1& 2\\ 2& 1 \end{pmatrix} \) \( \begin{pmatrix} 2& 1\\ 4& 3 \end{pmatrix} \) = \( \begin{pmatrix} 10& 7\\ 8& 5 \end{pmatrix} \)

\( (AB)C= \begin{pmatrix} 10& 7\\ 8& 5 \end{pmatrix} \) \( \begin{pmatrix} 1& 2\\ 3& 4 \end{pmatrix} \) \(= \underline{ \begin{pmatrix} 31& 48\\ 23& 36 \end{pmatrix} } \)

[行列の交換をしたときの積]
(6) \(AB \ne BA\) を確認する。
行列A、Bは全問と同じとする。
\(AB\) は全問で計算済です。
\(AB= \underline{ \begin{pmatrix} 10& 7\\ 8& 5 \end{pmatrix} }\)

\(BA=\) \(\begin{pmatrix} 2& 1\\ 4& 3 \end{pmatrix} \) \(\begin{pmatrix} 1& 2\\ 2& 1 \end{pmatrix}\) \(= \underline{ \begin{pmatrix} 4& 5\\ 10& 11 \end{pmatrix} }\)

\(\therefore AB \ne BA\)
但し、単位行列、逆行列、対角行列との積は除く。(後述)

[ここまでのことより、行列の演算は実数などの四則演算は通用しない。]
5.行列の演算の性質1
\(A,B,C\):行列、 \(j,k\):スカラー(定数)として

(1) 行列の和とスカラー倍
(ⅰ) \(A+B=B+A\)
(ⅱ) \((A+B)+C=A+(B+C)\)
(ⅲ) \((jk)A=j(kA)\)
(ⅳ) \((j+k)A=jA+kA \)
(2) 行列の積及びその他
(ⅰ)\((AB)C=A(BC)\)
(ⅱ) \(A(B+C)=AB+AC\)
(ⅲ) \((A+B)C=AC+BC\)
(ⅳ) \((kA)B=A(kB)=k(AB)\)
(ⅴ) \(A=B \Leftrightarrow A_{i\ j}=B_{i\ j}\)
 AとBの行列の型と各成分が等しいことを「相等」という。
 これをもって \(A=B\) であるという。

6.様々な行列


(1) 列ベクトルと行ベクトル
\(B= \begin{pmatrix} b_1 \\ b_2 \\ b_3 \end{pmatrix} \) :列ベクトル

\(A=(a_1\ a_2\ a_3)\) :行ベクトル

この2つの積 \(B A=\) は例題(4)を参照。

ここで突然「ベクトル」が登場したが、ベクトルを表す成分の数値なのか 単なる数値かだけの違いと考えてよい。
(2) 零行列
行列の成分が「0」である行列。
ゼロの「0」でなく大文字の「O」
\( O \) \(= \begin{pmatrix} 0& 0& 0\\ 0& 0& 0\\ 0& 0& 0 \end{pmatrix} \)

(3) 対角行列
次の行列A は対角行列
対角成分以外は「0」の行列
\(A\) \(= \begin{pmatrix} 1& 0& 0\\ 0& 2& 0\\ 0& 0& 3 \end{pmatrix} \)

主な特徴:積の演算が大変、簡単になる。

対角行列\(A=(a_{ij})\) と 行列\(B=(b_{ij})\)の積は:
\(AB\) \(= \begin{pmatrix} 1& 0& 0\\ 0& 2& 0\\ 0& 0& 3 \end{pmatrix} \) \( \begin{pmatrix} 2& 3& 4\\ 5& 6& 7\\ 8& 9& 10 \end{pmatrix} \) \(= \begin{pmatrix} \color{red}{a_{11}b_{11}}& 0& 0\\ 0& \color{red}{a_{22} b_{22}}& 0\\ 0& 0& \color{red}{a_{33} b_{33}} \end{pmatrix} \) \(= \begin{pmatrix} \color{red}{1\cdot 2}& 0& 0\\ 0& \color{red}{2\cdot 6}& 0\\ 0& 0& \color{red}{3\cdot 10} \end{pmatrix} \)

\(= \begin{pmatrix} \color{red}{2}& 0& 0\\ 0& \color{red}{12}& 0\\ 0& 0& \color{red}{30} \end{pmatrix} \)


(4) 単位行列
・対角行列の対角成分が「1」の行列。
・記号「E」か「I}が使われる。
\(E\) \(= \begin{pmatrix} 1& 0& 0\\ 0& 1& 0\\ 0& 0& 1 \end{pmatrix} \)

(5) 正方行列とは
上記の対角行列、単位行列のように行と列の数が同じ行列。
\((m \times m)\) 型行列のこと。

7.行列の演算の性質2
対角行列\(A\) について
(ⅰ) \(AB=BA\)

単位行列\(E\) について
(ⅱ)\(EB=BE=B\)

零行列「O」について
(ⅲ)\(A+O=A\) \(,\quad (-A)+A=O\)

逆行列\(A^{-1}\)について
(ⅳ) \(A^{-1} A=A A^{-1}=E \)
逆行列については先の講義で学びます。 【参照先】

ここまで次数を下げた行列を使い説明してきました。
最後に一般化した行列を書いておきます。
\((m \times n)\)型行列
\( \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & \cdots& a_{1j}& \cdots & a_{1n}\\ a_{21} & \cdots & \cdots& a_{2j}& \cdots & a_{2n}\\ \vdots & \vdots & & \vdots& & \vdots\\ a_{i1} & a_{i2} & \cdots& a_{ij}& \cdots & a_{in}\\ \vdots & \vdots & & \vdots& & \vdots\\ a_{m1} & \cdots & \cdots& a_{mj}& \cdots & a_{mn}\\ \end{pmatrix} \)

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした

行列の積の演算は、手計算で行えるのは3次((3x3)型)程度、多くても4次((4x4)型)ですね!
これ以上はPC を活用すべきです。(表計算のエクセルなどを使う)