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湘南理工学舎
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2025/06/22

 楽しく学ぶ…統計力学

 正準集団の方法(2) 熱力学関数

分配関数から熱力学諸関数が得られる。
熱力学諸関数
 前節で求めた分配関数を使うと, 様々な熱力学関数が容易に得られる。

物理量の平均値(熱平衡値)
 物理量\(~A~\)が\(~n~\)番目の微視的状態で値\(~A_n~\)を持つとすれば, その期待値(あるいは平均値)は, \[\langle A\rangle=\sum_n A_n P(E_n)=\frac{1}{Z}\sum_n A_n e^{-\beta E_n} \] である。積和\(~(Summation)~\)\(\displaystyle\sum_n~\)は全ての微視的状態についての和である。あるいは状態密度\(~\Omega(E)~\)を用いて, \[\langle A\rangle=\frac{1}{Z}\sum_i\Omega(E_i)e^{-\beta E_i}\Delta E_i \] でもよい。

内部エネルギー
 熱力学的内部エネルギーは, エネルギーの平均値であろうから, \[\begin{align} U(T,N)=\langle E\rangle &=\frac{1}{Z}\sum_n E_n e^{-\beta E_n} \\ &=\frac{1}{Z}\sum_n\left(-\dd{}{\beta}e^{-\beta E_n}\right) \\ &=-\frac{1}{Z}\dd{}{\beta}\sum_n e^{-\beta E_n} \\ &=-\dd{}{\beta}logZ \end{align} \] \(\beta~\)での微分は技巧的であるが, 先人の贈り物と思おう。3~4行目は4行目を変形して3行目とした方が簡単だろう。(先ず\(~logZ~\)を\(~Z~\)で微分して, 次に\(~Z~\)を\(~\beta~\)で微分する)。

ヘルムホルツの自由エネルギー
 いささか天下り的であるが, これも先人の七転八倒の成果である。\(\displaystyle \beta=\frac{1}{k_BT}~\)より, \[d\beta=-\frac{1}{k_BT^2}dT \] これを(7)式に当てはめる。\(U=\langle E\rangle~\)として良いから, \[U=k_BT^2 \dd{}{T}logZ \] \[\dd{}{T}logZ=\frac{U}{k_B T^2} \] これとギブスヘルムホルツの式, \[\dd{}{T}\left(\frac{F}{T}\right)=-\frac{U}{T^2} \] を比較すると, \[F=-k_BTlogZ \] が得られる。

エントロピー, 圧力
 \(F=-k_BTlogZ~\)を熱力学公式 \[S=-\left(\dd{F}{T}\right)_V \] \[P=-\left(\dd{F}{V}\right)_T \] に当てはめて求められる。後は具体的な\(~Z~\)を求めれば良い。古典理想気体で例を示す。

何故, 規格化定数から熱力学関数が導出出来るのか?
 規格化定数(の逆数)に過ぎない分配関数から, 熱力学関数が次々と導ける理由は何か?分配関数は \[Z(T)=\sum_{n=1}^{N}e^{-\beta E_n}\tag{1} \] あるいは, \[Z(T)=\int_E\Omega(E)e^{-\beta E}dE\tag{2} \] であった。(1)式はどう眺めても規格化のための辻褄合わせにしか見えない。
 一方(2)式はラプラス変換である。分配関数\(~Z(T)~\)は, 状態密度\(~\Omega(E)~\)のラプラス変換である。
つまり分配関数は, 系\(~S~\)内部の微視的状態を詳細に記述する状態密度の情報を余すところなく伝え, 使い難い状態密度\(~\Omega(E~)\)を便利な分配関数\(~Z(T)~\)に変換しているのである。
 蛇足だが, 熱力学でも, 元の情報を正確に伝え, 使いやすい形に変換する「ル・ジャンドル変換」があった。

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした!

 規格化定数(の逆数)に過ぎない\(~Z(T)~\)が, 統計力学では中心的役割を果たす。分配関数, 状態和とも呼ぶ。状態和が最も物理的に近いのかも知れないが, もう少しましな名前は無いのだろうか?