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湘南理工学舎
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2022/11/18   
2020/06/30

 楽しく学ぶ…線形代数

 置換の符号 (sign of permutation)

 --目 次--

1.逆置換
2.偶置換と奇置換
3.置換の符号
4.集合と置換

 前回の置換の積に続き、今回は置換の符号について学ぶます。  この符号はこれから学ぶ行列式、余因子、逆行列などをはじめ、いろんな場面で使われています。

 1.逆置換 (inverse permutation) 
置換σ の上段と下段を入れ換えた置換を逆置換という。
\(σ^{-1}\)で表す。

\( σ=\begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4 \\ 1 & 3 & 2 & 4 \end{pmatrix} \)
に対し、逆置換は:
\( σ^{-1}=\begin{pmatrix} 1 & 3 & 2 & 4 \\ 1 & 2 & 3 & 4 \end{pmatrix} \) \(\xrightarrow{分かり易く}\) \(\begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4 \\ 1 & 3 & 2 & 4 \end{pmatrix}\) と表記してよい。

逆置換について次が成り立ちます。
1)互換\(\ σ\ \)の逆置換\( \ σ^{-1} \ \)は元\( \ σ\ \)に戻る
すなわち \(\underline{\ σ^{-1}=σ \ } \)
これを確認しましょう。
\(σ=(1,4) = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4 \\ 4 & 2 & 3 & 1 \end{pmatrix}\)

\(σ^{-1}=(4,1)=(1,4)=σ\) となることを確認すればよいのです。

\(σ^{-1} = \begin{pmatrix} \color{red}{4} & 2 & 3 & \color{red}{1} \\ \color{red}{1} & 2 & 3 & \color{red}{4} \end{pmatrix} \) \(\xrightarrow{整理すると}\) \(=\begin{pmatrix} \color{red}{1} & 2 & 3 & \color{red}{4} \\ \color{red}{4} & 2 & 2 & \color{red}{1} \end{pmatrix}\)\(=σ\)


2)逆置換\( \ σ^{-1} \ \)と置換\(\ σ\ \)の積は恒等置換Iになる
すなわち \(\underline{\ σ^{-1}σ=σ σ^{-1}=I\ } \)

これを確認しましょう
\(σ= \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4 \\ 1 & 3 & 4 & 2 \end{pmatrix}\) \(\quad \) \(σ^{-1}= \begin{pmatrix} 1 & 3 & 4 & 2 \\ 1 & 2 & 3 & 4 \end{pmatrix}\)

に対し\(σ σ^{-1}\)は:

\(3 \xrightarrow{σ^{-1}により}2 \xrightarrow{σにより}3 \)
\(4 \xrightarrow{σ^{-1}により}3 \xrightarrow{σにより}4 \)
\(2 \xrightarrow{σ^{-1}により}4 \xrightarrow{σにより}2 \)

\( \therefore σ σ^{-1} \) \(=\begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4 \\ 1 & 2 & 3 & 4 \end{pmatrix}=I\)
以上で確認ができました。


 2.偶置換と奇置換 (even permutation and odd permutation)

 置換は「互換の積」で表せ、その互換の数は「偶数個の積」または「奇数個の積」のいずれかです。
このことを一般に次のように述べています。

置換の「互換の積」の表し方は一意ではないが、その積の互換の数が偶数か奇数かは置換によって一意(一通り)に決まる。
これは「差積」により証明されますが、難解です。ここではこのまま受け入れて先に進みます。


  \( \begin{cases} 偶置換:& 互換の数が偶数のとき\\ 奇置換:& 互換の数が奇数のとき \end{cases}\)

次に進む前に、以下を確認しておきましょう。

n 回の巡回置換に対し互換は「\(n-1\)」回です。
・また互換がない、すなわち「0」回は偶数です。

上記のことを具体的確認してみましょう。
例として:
1) \( \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 3 & 2 & 1 \end{pmatrix}\)に対し
・\(=(1,3) \cdots\)互換1回 で表せる。
・\(=(2,3)(2,3)(1,3)\cdots\)互換3回 で表せる。(※1)
積の互換の数は1 と3 で異なるが、いずれも奇数である。

注(※1):\((2,3)((2,3)(1,3))\) \(=(2,3) \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 2 & 3 & 1 \end{pmatrix}\) \(= \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 3& 2& 1 \end{pmatrix}\)

2) \( \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 3 & 1 & 2 \end{pmatrix}\)に対し
・\(=(1,2,3)\cdots\)3回の巡回置換=互換2回 で表せる。
・\(=(1,2)(1,3)\cdots\)=互換2回 で表せる。
・\(=(1,2)(1,3)\cdots\)互換2回 で表せる。
・\(=(1,2)(2,3)(1,3)(1,2)\cdots\)互換4回 で表せる。
積の互換の数は2 と4 で異なるが、いずれも偶数である。

 3.置換の符号(+/-)  (sign of permutation)
置換の符号\(sgn\) の定義は

置換 \(σ= \begin{pmatrix} 1 & 2 & \cdots & n \\ c_1 & c_2 & \cdots & c_n \end{pmatrix} \)

とすると、次が置換の符号sgnです。

\(sgn\) は置換に(+/) の符号を割りあてている。

\(\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 偶置換のとき sgn(σ)=+1\\ 奇置換のとき sgn(σ)=-1 \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

注:恒等置換は積の互換の数はゼロです。(ゼロは偶数

ここで次回の講義(3次の正方行列の行列式)のためにも n=3 の置換の符号を求めます。
n=3 の置換では以下の通り、 6種類あります。

\(σ_1= \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 1 & 2 & 3 \end{pmatrix} ,\) \(σ_2= \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 1 & 3 & 2 \end{pmatrix} \)

\(σ_3= \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 2 & 1 & 3 \end{pmatrix} ,\) \(σ_4= \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 2 & 3 & 1 \end{pmatrix} \)

\(σ_5= \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 3 & 1 & 2 \end{pmatrix} ,\) \(σ_6= \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 3 & 2 & 1 \end{pmatrix} \)


上記の置換の互換を\(sgn((\x,\x))\)の括弧内に記載し、符号を決めると:
\(sgn(σ_1)=1\) (\(σ_1\) は恒等置換)

\(sgn(σ_2)=sgn((2,3))=-1 \)

\(sgn(σ_3)=sgn((1,2))=-1 \)

\(sgn(σ_4)=sgn((1,2,3))=+1 \) (互換数(3-1)=2) 
(1,2,3)は3回の巡回置換⇒互換数は2

\(sgn(σ_5)=sgn((1,3,2))=+1 \) (互換数(3-1)=2) 

\(sgn(σ_6)=sgn((1,3))=-1 \)


 4.集合と置換

 前回と今回で、置換について学んできましたが、最後に集合と置換について説明します。
置換は集合の写像にです、これから置換を定義すると以下のように簡単に表現できます。
対象を自然数の有限集合\( \{1,2 \cdots n \}\)とすると:

(置換定義1):

有限集合\( \{1,2 \cdots n \}\)のn個の要素から自分自身への全単射の写像が置換である。

(置換定義2):分かり易く
有限集合\( \{1,2 \cdots n \}\)から\( \{1,2 \cdots n \}\) へ 全ての要素をダブルことなく置き換えること。 
上記の補足
自分自身とは置換前\(\{1,2\cdots n\}\)、置換後も\(\{1,2\cdots n\}\))
写像とは関数\(f(x)=y\)を例にすると

変数を x(定義域の集合)、y(値域の集合)として:
\(x \xrightarrow{写像 fによる} y\)
これを「 y は f による x の写像」であるという。

全単射とは写像が単射かつ全射のことをいう。
単射とは写像元と写像先の要素が 1対1 でダブリが無い関係(写像)。
 例えば\(σ(1)=a_1, σ(2)=a_1\)ということはない

全射とは全ての要素が写像している。
 写像先の全ての要素は写像元の要素に繋がっている。

置換の全体の集合を\(S_n\)と表し:
\(S_n= \begin{pmatrix} 1 & 2 & \cdots & n \\ a_1 & a_2 & \cdots & a_n \end{pmatrix} \) と表している。

具体的に:
\(S_2= \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ a_1 & a_2 \end{pmatrix} \)
 置換の種類は2通り(2!=2)

\(S_3= \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ a_1 & a_2 & a_3 \end{pmatrix} \)
 置換の種類は6通り(3!=6)

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[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした