\(\require{cancel}\)
earth
湘南理工学舎
[戻る]   
2024/03/20

 楽しく学ぶ…解析力学

 ネーターの定理 (1) 循環座標 

運動量保存則は空間の並進対称性と, エネルギー保存則は時間発展対称性と結びついている。というものだが。
ネーターの定理 あまり神秘的に考えない方が良い。
 「対称」という用語の使い方に注意が必要である。正三角形は各辺の垂直2等分線に対して線対称である, 或いは重心を中心とした120度の回転対称であるという。 ある操作の前後で変化しないことを「対称」と呼んでいる。筆者などは, 対称→シンメトリー→造形美と短絡思考になっているが, ネーターの定理で使う「対称」は味気ないものである。 その操作の前後で変わらなければ良い。それを不変, 保存, 対称と呼んだりする。造形美と直結させない方が良さそうである。

循環座標(\(cyclic\;coordinate\)) もう一つの表現, 無視座標(\(ignoreable\;coordinate\))の方が分かり易いが。
 中心力を受けて周期運動する場合, ポテンシャルは\(~r~\)だけの関数になり, \(\theta~\)は運動方程式(ニュートン, ラグランジュ, ハミルトン全て)には含まれない。(\(\dot{\theta}~\)は含まれる.) このとき\(~\theta~\)は1周期で元に戻ってくるので循環座標と呼ぶ。語源はここ等あたりにあるらしい。(ゾンマーフェルト, 山本義隆)

自由粒子の運動 これをネーターの定理と呼べるのだろうか?
 オイラー・ラグランジュ方程式は, \[\frac{d}{dt}\left(\dd{L}{\dot{q}}\right)=\dd{L}{q}\tag{1} \] であった。ポテンシャルの影響の無い自由粒子の場合, \(L=T=1/2\;m\dot{q}^2~\)であるから, ラグラジアンに\(~q~\)(循環座標)は含まれない。よって上式右辺はゼロから直ちに \[\dd{L}{\dot{q}}=\dd{T}{\dot{q}}=m\dot{q}=const. \] となり, 運動量が保存する。ラグラジアンに座標\(~q~\)が含まれない(循環座標)ならば, 座標\(~q~\)が変化(並進)してもラグラジアンは不変(対称)であり, 運動量は保存する。
 ここで次の疑問が起こる。\(\theta~\)が循環座標であっても\(~\dot{\theta}~\)は影響するのではないか?心配は要らない。 \(\theta~\)が定数だけ変化\(~\theta=\theta+a~\)しても\(~\dot{a}=0~\)となるから,\(~\dot{\theta}~\)は変化しない。
 「運動量保存則は空間の並進対称性と対応している」と言えなくもないが, 定理というほどのものだろうか?
自由粒子で何の相互作用もなければ運動量も何も変わらない。当たり前すぎる。
 ポアッソン括弧では\(~\{A,p\}=0~\)のとき, \(A~\)は\(~p~\)に正準共役な\(~q~\)に対して不変量となると言った。その通りであるが何だか良く分からない。もう少し具体的に説明しよう。

座標変換でラグラジアンが不変
 誤解しやすいので確認しておこう。座標変換しても方程式の形が変わらないのが共変で, ここでの説明は共変ではなく, 値そのものが変わらないことである。
 一般化座標\(~q'_i=q_i+\varepsilon\Phi_i(q_i), |\varepsilon|\ll1~\)という無限小の座標変換を考える。\(\Phi_i~\)とする理由は, 複雑な座標変換(2次元, 3次元)に対応するためで, モーメント関数と関連付けられる。
ネーターの定理
座標上の位置を変えるのではなく, 座標そのものを変えることに注意。座標変換をしてもラグラジアンが不変(対称)ならば, \[\begin{align} 0&=L(q'_i,\dot{q_i}')-L(q_i,\dot{q_i}) \\ &=L(q_i+\varepsilon\Phi_i,\dot{q_i}+\varepsilon\dot{\Phi_i})-L(q_i,\dot{q_i}) \\ &=L(q_i,\dot{q_i})+\dd{L}{q_i}\varepsilon\Phi_i+\dd{L}{\dot{q_i} }\varepsilon\dot{\Phi_i}+O(\varepsilon^2)-L(q_i,\dot{q_i}) \\ &\cong\varepsilon\left(\dd{L}{q_i}\Phi_i+\dd{L}{\dot{q_i} }\dot{\Phi_i}\right) \end{align} \] 2行目から3行目はテイラー展開で\(~\varepsilon~\)の1次の項までを取ったものである。右辺の( )内第1項に(1)式オイラー・ラグランジュ方程式の右辺を代入すると, \[\frac{d}{dt}\left(\dd{L}{\dot{q_i}}\right)\Phi_i+\dd{L}{\dot{q_i}}\dot{\Phi_i}=0 \] であるが, この式は上手くまとまって \[\frac{d}{dt}\left(\dd{L}{\dot{q_i}}\Phi_i\right)=0 \] すなわち, \[F=\dd{L}{\dot{q_i}}\Phi_i=const. \] を得る。改めて書くと, ラグランジアン\(~L~\)が無限小座標変換 \[q_i\to q'_i=q_i+\varepsilon\Phi_i(q_i) \] の下で不変(対称)ならば, \[ F=\dd{L}{\dot{q_i}}\Phi_i\] が保存する。\(F~\)をモーメント関数と呼ぶ。これがネーターの定理であるが, 少々分かり難い。具体例にあたってみよう。

角運動量 真打登場
 \(z~\)軸の周りに\(~xy~\)平面を\(~\varepsilon~\)だけ回転させると, \[\left\{ \begin{array}{l} x'=xcos\varepsilon-ysin\varepsilon\cong x-\varepsilon y \\ y'=xsin\varepsilon+ycos\varepsilon\cong y+\varepsilon x \\ z'=z \end{array} \right.\] これを\(~q'_i=q_i+\varepsilon\Phi_i~\)と比べると \[\left\{ \begin{array}{l} x'=x+\varepsilon\Phi_1 \\ y'=y+\varepsilon\Phi_2 \\ z'=z+\varepsilon\Phi_3 \end{array} \right.\] より\(~\Phi_1=-y,\Phi_2=x,\Phi_3=0~\)を得る。この下でラグラジアンは \[\begin{align} L&=\frac{1}{2}m(\dot{x}'^2+\dot{y}'^2+\dot{z}'^2)-U(r') \\ &=\frac{1}{2}m\{(\dot{x}-\varepsilon \dot{y})^2+(\dot{y}+\varepsilon \dot{x})^2+\dot{z}^2\}-U\left(\sqrt{(x-\varepsilon y)^2+(y+\varepsilon x)^2+z^2}\right) \\ &=\frac{1}{2}m(\dot{x}^2-\cancel{2\varepsilon \dot{x}\dot{y}}+\dot{y}^2+\cancel{2\varepsilon \dot{x}\dot{y}}+\dot{z}^2+O(\varepsilon^2)) -U\left(\sqrt{x^2-\cancel{2\varepsilon xy}+y^2+\cancel{2\varepsilon xy}+z^2+O(\varepsilon^2)}\right)\\ &=\frac{1}{2}m(x^2+y^2+z^2)-U(r) \end{align} \] となり不変である。つまり, 不変なモーメント関数 \[F=\dd{L}{\dot{q}}\Phi_i \] が存在する。今の場合モーメント関数は \[\begin{align} F&=\dd{L}{\dot{q_1}}\Phi_1+\dd{L}{\dot{q_2}}\Phi_2+\dd{L}{\dot{q_3}}\Phi_3 \\ &=\dd{L}{x}\Phi_1+\dd{L}{y}\Phi_2+\dd{L}{z}\Phi_3 \\ &=m\dot{x}(-y)+m\dot{y}x+m\dot{z}\cdot 0 \\ &=-p_x y+p_y x=p_z \end{align} \] つまり角運動量の\(~z~\)成分が不変量である。
 \(~xy~\)平面での微少回転ではラグラジアンは不変であり, 対応する不変なモーメント関数が存在する。このとき角運動量(の\(~z~\)成分)が保存量である。
「回転対称性は角運動量保存則と1対1に対応する」となる。これならば定理と呼んでも良いか?

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした!

 女性数学者アマーリエ・エミー・ネーター\(~(Amalie\,Emmy\,Noether)~\)が, 一般相対性理論に関連してヒルベルトから出された問題に対する回答として提出した。「系に対称性がある場合はそれに対応する保存則が存在する」初めて目にしたとき, 何と神々しい!と思った。が, そんな単純なことでは無いのだろうな?