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湘南理工学舎
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2020/9/28

 楽しく学ぶ…力学

 プロローグ

仕事はなぜ \(W = F \x \ x\) か?
 高校以来. 天下り式に与えられた \(W = \b{F} \times \ x\) はいかなる根拠があるのだろうか?
何故 \(W = F \times \ t\) (時間), あるいは \(W =\sqrt{F} \x\ x^{2}\) としてはいけないのか? そしていつの間にか, 仕事 = エネルギーとなっている。
 現代の我々が漠然と感じているエネルギーは
①様々な形をとる。沸騰したお湯であったり, 激しい運動であったり, 火薬の破壊力であったり, 巨大ダムの決壊であったり, 陽だまりの温かさであったり。
②閉じた系では総和は変らない(どこかが増えればどこかが減る)。だから永久機関は出来ない\(~etc\)。
果たして\(W = F \times \ x\) は上の条件を満たすのか?

初速度を\(\upsilon_{o}\), 加速度を\(a\), 移動距離を\(x\)とすると, 高校生必修の公式が得られる。
\[\upsilon=\upsilon_{o}+at\tag{1}\] \[x =\upsilon_{o}t+\frac{1}{2}at^{2}\tag{2}\] \[\upsilon^{2}-\upsilon_{o}^{2}=2ax\tag{3}\] (1), (2)から\(~t~\)を消去すると(3)になる。当然だが時間\(~t~\)を露わに含んでいない。
ここから, 時間に依存しない量, 保存量, エネルギーを導けないか? 簡単にするために \(\upsilon_{o}=0\) としよう
 さて, まだはっきりしないエネルギーだが, 質量 \(m\) はどう取り扱えば良いのだろうか?
系1で質量 \(m\) の物体が速度 \(\upsilon\) で移動している。別の系2でも質量 \(m\) の物体が速度 \(\upsilon\) で移動している。2つの系のエネルギーは等しく, 2つ合わせたエネルギーは片方の2倍であろう。もし(3)式がエネルギーに関係するのであれば, \(\sqrt{m}\) とか \(log{~m}\) とかではなく, \(m\) を掛けるのが自然だ。両辺に\(m\)を掛けると\[m\upsilon^{2}=2max\]左辺は運動の勢いを表しており, エネルギーっぽい。右辺はこのままではイメージが湧かないので\(F=ma\) を使うと\[m\upsilon^{2}=2Fx\tag{4}\]となり, [力]\(\times\)[距離]である。少しエネルギーっぽくなってきた。 左辺も同じ表現が出来るか?
\(\upsilon=at\) であるから \[m\upsilon^{2}=m(at)^{2}=(ma)(at^{2})\] で, [力]を表す\(ma~\)と, [距離]を表す\(at^{2}\)の積になっている。
よって改めて運動エネルギーと命名する必要もなく, 全て[力]\(\times\)[距離]で統一しても良かったと思う。
(ここから先は全て想像である)そこで, エネルギー=[力]\(\times\)[距離]として様々な事例に当てはめたところ, (おそらく)大変上手くいった。
 こうして, 様々な形を取る, 総和は変わらない, 138億年前も今も200億年後も変わらないエネルギーとして, エネルギー=仕事=[力]\(\times\)[距離]という物理量が導入されたと思われる。
運動エネルギーは\(\frac{1}{2}\)倍する必要はなく, \(m\upsilon^{2}\)のままでも良い。ただそうすると, 相当する仕事を\(2Fx\)とする必要がある。どちらを取るかで\(\frac{1}{2}m\upsilon^{2}\)としたのだろう。
(4)式で\(2Fx\)を左辺に移して\(2\)で割った, \[K = \frac{1}{2}m\upsilon^{2}-Fx\]が時間に依存しない保存量であり, 運動エネルギーと位置エネルギー(加えた,あるいは消費した仕事)の和で, 力学的エネルギーと呼ばれる量である。\((F\)の前の \("-"\)は, 今はあまり気にしないで欲しい)
 運動量保存則と並んで, 宇宙を支配しているエネルギー保存則は運動方程式から導かれ, エネルギー=[力]\(\times\)[距離]という, 単純すぎる量で表現される。
以上が, 数十年もやもやし, ある時「はっ!」と気がついて, その後数時間を要して得た結論である。

 当節風の導き方は明快である。たった数行で説明しきっている。 \[\upsilon^{2}-\upsilon_{o}^{2}=2ax\] 両辺に\(\frac{1}{2}m\)を掛けて \[\frac{1}{2}m\upsilon^{2}-\frac{1}{2}m\upsilon_{o}^{2}=Fx (\because ma=F)\] \(\frac{1}{2}m\upsilon^{2}\)を運動エネルギー, \(Fx\)を仕事と「定義」すると, 運動エネルギーの差は, その間に加えた仕事に等しい。これを「エネルギー保存則」と言う。
積分とか内積とかを加えて, 体裁を整える場合も多いが, 中身は同じである。

 後で調べて分かったことであるが, 先人は100年近い論争を経て, 現在の「エネルギー保存則」を確立した。「活力論争」という\(^{*}\)。
明快に断ずるのも良いが, もう少し先人の悪戦苦闘に配慮しても良いのではないだろうか。

\(^{*}\)ライプニッツ, ヨハンベルヌーイといったそうそうたる学者が, 運動物体の力(運動する物体のある種の勢い)について, 今日言うところの, \(F\), \(m\upsilon\), \(m\upsilon^{2}\)をごちゃ混ぜにして, 論争を繰り広げた。全く意味のない論争だったと評する人も少なくない。


coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした!


 知り合いに頼まれて, 中々公式を憶えられない高校生に物理を教えたことがある。「3番目の式は時間に無関係だから憶えられるだろう!」。その時「はっ!」と思った。「えっ。時間に無関係?これは保存量?」。それから大急ぎでメモを取った。上述の文章は, 殆どその時のメモのままである。