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湘南理工学舎
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2020:03:29

 楽しく学ぶ…初歩の数学

   漸化式

(recurrence formula/relation)

 --目 次--
漸化式(ぜんかしき)とは
漸化式の特徴
例題を解く前に
例題(漸化式から一般項を求める)
 ∗ \( a_1=3 \ \ , a_{n+1}=a_n + 4 \)
 ∗ \( a_1=3 \ \ , a_{n+1}-2 a_n= 0 \)
 ∗ \( a_1=2 ,\ \ a_{n+1}=a_n + 3\cdot 2^{n-1} \)
 ∗ \( a_1=3 \ \ , a_{n+1}-1=2(a_n -1) \)
 ∗ \( a_1=1 \ \ , a_{n+1}=2a_n +3 \)

1.漸化式(ぜんかしき)とは:
・数列の各項の値がその前の項の値によって決まる数列の規則(または関係)を表す式のこと。
・または数列の隣り合う項目の間、例えば \(a_n \) と \(a_n+1\) の間で常に成り立つ関係式のこと。
 …これだけでは疑問をもたれると思います、4項での例題で実感して下さい。

2.漸化式の特徴
 例として、 漸化式:「\(a_1, \quad a_{n+1}=a_n+d \) (d :定数)」 を解いてみる。
この漸化式を変形した、 「\(a_{n+1}-a_n=d \)」 から交差 d が求まる。また\(a_1\) は初項である。
このことから数列が等差数列であり、
\( a_n=a_1+(n-1)d\)
の一般項が導き出せる。
3.例題を解く前に
(1)漸化式を解くとは与えられた数列の漸化式から、その数列の一般項を求めることです。

(2)例題で扱う数列は前に学んだ次の数列です。
 以下に関係する数列のリンクと一般項の公式を記載しておきます。
 等差数列 の一般項の式:
 \(a_n=a+(n-1)d\) \( \cdots (1)\) 

等比数列 の一般項の式:
 \( a_n=ar^{n-1}\) \( \cdots (2)\)

階差数列 一般項の式:
 \( a_n= a_1 + \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n-1 } b_k \) \( \cdots (3)\)


(3)さらに今回、初めて学ぶ形の漸化式を紹介します。
\( \quad \underline{ a_{n+1}=p a_n +q }\ \) 型の漸化式
 例題5 で紹介します。


(4)漸化式を見てどんな数列なのかを、次のように推測する。
(隣り合う項を比べて…「差」なのか「比」なのかを調べる)
等差数列: \( a_{n+1}-a_n=d \)

等比数列:  \(\frac{a_{n+1}}{a_n}=r \)

階差数列: \(a_{n+1}-a_{n}=f(n)=b_{n} \)
注:\(f(n)=b_n\)は定数ではない

それでは例題をやってみよう!
4.例題
例 題1

漸化式 \( a_1=3 \ \ , a_{n+1}=a_n + 4 \) で定められる数列の一般項を求めよ。
漸化式は等差数列です。
交差:\( d= a_{n+1}-a_n=4 \) (定数)
初項:\(a=a_1=3\)
これを公式(1)に代入し、一般項が求まる。
\( a_n=a+(n-1)d=3+(n-1)4 \) \(=-1+4n \)


例 題2
漸化式 \( a_1=3 \ \ , a_{n+1}-2 a_n= 0 \) で定められる数列の一般項を求めよ。
漸化式を変形すると
\( \frac{a_{n+1}}{a_n}=2\) (定数):これは公比です。
より、漸化式は等比数列です。
・公比: \( \ r=2 \)
・初項:\(a=a_1=3\)
これを一般項の公式(2)に代入し、一般項が求まる。
\( a_n=ar^{n-1}\)\(=3(2)^{n-1}\)


例 題3
漸化式 \( a_1=2 ,\ \ a_{n+1}=a_n + 3\cdot 2^{n-1} \) で定められる数列の一般項を求めよ。
問題を解く前に、簡単に解法を説明します。
\(a_{n+1}-a_n=f(n)=b_n\) は定数でない。すなわちこの数列は階差数列です。
\(b_n\)は階差数列の n 番目の項目です。
階差数列\(b_n \)が分かれば,\(a_n\)の一般項は次の公式を使い求まる。
\(a_n= a_1 + \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n-1 } b_k \) \(\ (n\geq2) \)
それでは例題を解きます
与式から:
\( b_n=a_{n+1}-a_n=3 \cdot 2^{n-1} \)
(初項=3, 公比 r=2 )
\(a_n=a_1 + \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n-1 } 3 \cdot 2^{k-1} \)
このシグマの項は「等比数列の和」です。
以下は「等比数列の和」の公式です。
\(a_n= a_1+ a\displaystyle \sum_{k = 1}^{n} r^{k-1}\)\(=a_1+ a \frac{1-r^n}{1-r} \)
注:この式の n には n-1 を代入すること。 \(a_n=a_1 + \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n-1 } 3 \cdot 2^{k-1} \)
 \(=2 + 3 \cdot \frac{1-2^{n-1}}{1-2} \) \(=2+3(2^{n-1}-1)\) \(=3\cdot2^{n-1}-1 \)
階差数列の式は n=1のときの成立の可否を確認します。
この式は n=1 のとき \(a_1=2\)であり、与式を満足している。
\(\therefore a_n=3\cdot2^{n-1}-1 \)  \( \underline{\ (n\geq1) }\)

例 題4
漸化式 \( a_1=3 \ , a_{n+1}-1=2(a_n -1) \) で定められる数列の一般項を求めよ。

要点は以下のように、数列をブロックで考え、数列 \( \{a_n-1\} \) として、一般項を求める。
\( \underbrace{ a_{n+1}-1 }_{(n+1)項目} =2 \ ( \underbrace{ a_{n}-1 }_{n項目} )\)

そうすると、数列 \( \{a_n-1\} \)は:
・公比: \( r=2\)
・初項: \(a_n-1=a_1-1=3-1=2 \)
・一般項: \(a_n-1=2 \cdot 2^{n-1}\)

\( \therefore a_n=1+2 \cdot 2^{n-1}\)

以上で解答は終わるが、この例題について以下のことを考えてみよう!
考察1:
下表の:
上段は与式による数列です。
下段は上段から「1を引いた数列」、これは公比 2 の等比数列であることが分かりますね。
\( \begin{array}{c|c|c|c|c|c} 与式の数列 & 3 & 5 & 9 & 17 & 33 & \rightarrow?な数列 \\ \hline 1を引いた & 2 & 4 & 8 & 16 & 32 & \rightarrow 等比数列 \end{array} \) このことは例題5でも扱います。

考察2:
与式の数列の階差数列 (下段の2、4、8…)は等比数列であることが分かります。
階差数列はもともと、規則性が分からない数列を解析するものでした。
\( \begin{array}{cccccccc} 3 & & 5 & & 9 & & 17 & & 33 \\ &\lor& &\lor& &\lor& &\lor & \\ & 2 & & 4 & & 8 & & 16 & \end{array} \)

下段の階差数列は:
\(b_1=2 ,\ r=2 \rightarrow b_n=2 \cdot 2^{n-1} \)

となり、一般項は:
\( a_n =a_1+\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n-1 } b_k =3+\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n-1 } 2 \cdot 2^{n-1}\)
\(\quad =3+2\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n-1 } 2^{n-1} \)
\(\quad =3+\frac{1-2^{n-1}}{1-2}= \underline{ 1+2\cdot2^{n-1} }\)
例題の答えと同じになりました。

例 題5
漸化式 \( a_1=1 \ \ , a_{n+1}=2a_n +3 \) で定められる数列の一般項を求める。

特殊解型 の漸化式: \(a_{n+1}=p a_n +q \ \)
を使います。

ここは少し、辛抱して、解答処理の流れを見て下さい。
まず、与式の形 \(a_{n+1}=p a_n +q \ \)に対し
\(x=2x+3 \) の式を作る
\(x=-3\)とします
与式から上式を引く、縦方向の「引き算」をする。
\( \begin{array}{ccccccc} & a_{n+1} & = & 2a_{n} & + & 3 \\ -)& x & = & 2x & + & 3 \\ \hline & \color{red}{a_{n+1}-x}& = & 2 (\color{red}{a_n-x }) & & \end{array} \)
この式に \(x=-3\) を代入。
\( \color{red}{a_{n+1}+3}= 2 (\color{red}{a_n+3})\)
この式の数列は例題4と同様に数列をブロックとして扱い、数列 \(a_n+3\)としての の公比、初項、一般項を求める。
・この数列は公比 \( 2\) の等比数列となりますね。
・初項は (\(a_1=1\) だから) 初項=\(a_n+3=1+3=4\)
・一般項は: \(a_n+3=4\cdot2^{n-1} \)
これより数列\(a_n\)の一般項が求まる。
\(a_n=-3 +4\cdot 2^{n-1} \)より
\(\underline{a_n=-3+ 2\cdot 2^{n} }\)


最後に次のことを考えます。(上の演算は何をしたのか!)
下の表は:
上段は与式の漸化式の数列
下段はこの与式の数列に3を足した数列
すなわち、{\(a_n+3\)}の数列です。

\( \begin{array}{c|c|c|c|c|c|c} 与式の数列 & 1 & 5 & 13 & 29 & 61 & \rightarrow?な数列 \\ \hline 3を足す   & 4 & 8 & 16 & 32 & 64 &\rightarrow 等比数列 \end{array} \)

すなわち与えられた数列{\(a_n\)}に3を加えた数列{\(a_n+3\)}を考えれば等比数列になるわけです。

(例題4の考察1では与式の数列から 1 を引くと等比数列になった。)

例題5の解答の演算は与式から 「\(x =px+q\)」を引く、次の縦型の引き算です。
\( \begin{array}{ccccccc} & a_{n+1} & = & pa_{n} & + & q \cdots(3) \\ -)& x & = & px & + & q \cdots(4) \\ \hline & \color{red}{a_{n+1}-x}&=& p (\color{red}{a_n-x }) & & \end{array} \)

・式(3)は与式を変形したもので、式(3)から x が求まる。
・この縦型に引き算により\(q\)がキャンセル(削除)され、{\(a_n-x\)}の数列が現れる。
・この数列{\(a_n-x\)}が等比数列になる。

ということです、 少し長くなりましたが、ご理解されましたでしょうか。

また、 \(a_{n+1}=p a_n +q \ \) の形の漸化式を「特殊解型」と呼んでいます。

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[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした