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湘南理工学舎
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2022/11/10   
2020:04:28

 楽しく学ぶ…初歩の数学/部分分数分解

   部分分数分解

(partial fraction decomposition)

 --目 次--

 1.方程式による係数比較法
 ・例題
  ∗ \( \frac {1}{(x+1)(x-1)} \)
 2.数値代入法
 ・例題
  ∗\(\frac {1}{(1-x)(1+x)} \)
  ∗\(\frac {2}{(x+1)(x+2)} \)
  ∗\(\frac{1}{x(x^2+2)} \)
  ∗\(\frac{1}{(x+1)(x^2+1)}\)
  ∗\( \frac{5x^2+7x}{(x+1)^2(x-1)} \)

   
 部分分数分解は以下のように1つの分数式を複数の分数式の足し算や引き算に分解することをいいます。

 \( \frac {1}{(x+1)(x-1)} \) \(= \frac{1}{2} \left( \frac{1}{(x-1)}-\frac{1}{(x+1)} \right) \)

 通分の逆なので、確認は通分して行います。
微積分、特に積分を解くのに活躍します。
また係数比較法と数値代入法のどちらを使うにしても以下の部分分数分解のパターンは認識しておいてください。

1.方程式による係数比較法
 この方法は機械的に計算ができ、対応範囲が広いのですが、連立方程式を解くため時間がかかります。
受験の時は早く解くことも重要なので「2.数値代入法式」をお薦めします。

(A)パターン1
\( \frac{px+q}{(ax+b)(cx+d)}\) \(=\frac{A}{(ax+b)} + \frac{B}{(bx+d)} \)

\( =\frac{A(cx+d) + B(ax+b)}{(ax+b)(cx+d)}\) \( = \frac{(Ac+Ba)x +Ad+Bb }{(ax+b)(cx+d)}\)

これよりA,Bを求める式(連立方程式)は次式となる。
(A)… \( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} Ac + Ba = p \\ Ad + Bb = q \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

(B)パターン1' (パターン1の特殊形)
\( \frac{1}{(ax+b)(cx+d)}\) \(=\frac{A}{(ax+b)} + \frac{B}{(bx+d)} \)

\( =\frac{A(cx+d) + B(ax+b)}{(ax+b)(cx+d)}\) \( = \frac{(Ac+Ba)x +Ad+Bb }{(ax+b)(cx+d)}\)

これよりA,Bを求める式(連立方程式)は次式となる。
(B)… \( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} Ac + Ba = 0 \\ Ad + Bb = 1 \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

(C)パターン2
\( \frac{px+d}{(ax+b)^2}\) \(=\frac{A}{(ax+b)^2} + \frac{B}{(ax+b)} \)

\( =\frac{A+(ax+b)B}{(ax+b)^2}\) \(=\frac{Bax+Bb+A}{(ax+b)^2} \)

従って
(C)… \( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} Ba = p \\ A + Bb = d \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

(D)パターン3
\( \frac{e\ x^2\ +\ f\ x\ +\ g}{(ax+b)^2(cx+d)}=\) \( \frac{A}{(ax+b)^2} + \frac{B}{(ax+b)} + \frac{C}{(cx+d)} \)

\(=\frac{A(cx+d)+B(ax+b)(cx+d)+C(ax+b)^2}{(ax+b)^2(cx+d)} \)

\(=\frac{Acx+Ad\ +\ B\ (acx^2+(ad+bc)x+bd)\ +\ C\ (a^2x^2+2abx+b^2)}{(ax+b)^2(cx+d)} \)

従って
(D)… \( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} Bac+Ca^2=e \\ Ac+B(ad+bc)+2Cab=f \\ Ad+Bbd+Cb^2=g \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

(E)パターン3' (パターン3の特殊形)
\( \frac{1}{(ax+b)^2(cx+d)}=\) \( \frac{A}{(ax+b)^2} + \frac{B}{(ax+b)} + \frac{C}{(cx+d)} \)

\(=\frac{A(cx+d)+B(ax+b)(cx+d)+C(ax+b)^2}{(ax+b)^2(cx+d)} \)

\(=\frac{Acx+Ad\ +\ B\ (acx^2+(ad+bc)x+bd)\ +\ C\ (a^2x^2+2abx+b^2)}{(ax+b)^2(cx+d)} \)

従って
(E)… \( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} Bac+Ca^2=0 \\ Ac+B(ad+bc)+2Cab=0 \\ Ad+Bbd+Cb^2=1 \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

さっそく、例題をやりましょう。
例 題 

(1) \( \frac {1}{(x+1)(x-1)} \)

与式を次のように変形します:
与式 \( = \frac{A}{(x+1)}+\frac{B}{(x-1)}\) \(=\frac{A(x-1)+B(x+1)}{(x+1)(x-1)} \)

パターン1により解きます。
\( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} Ac + Ba = p \\ Ad + Bb = q \end{array} \right. \end{eqnarray} \)
a=1, c=1, p=0, q=1, b=1, d=-1 を連立方程式(A)に代入。

\( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} A + B = 0 \\ -A + B = 1 \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

となり
\( A=-B,\ -A+B=1\)\(\rightarrow -(-B)+B=1 \)

\( \therefore B=\frac{1}{2},\quad A=-\frac{1}{2} \)

\(\therefore \frac {1}{(x+1)(x-1)} \) \(= -\frac{1}{2} \frac{1}{(x+1)}+\frac{1}{2}\frac{1}{(x-1)}\)
\( =\frac{1}{2} \left( \frac{1}{(x-1)} - \frac{1}{(x+1)} \right) \)
部分分数が求まりましたが、ちょっと手間がかかりました、またこの方法は公式を覚える必要があります。
以下で実践する数値代入法は分数式のパターンだけ認識しておけば、比較的楽に解くことができます。 

2.数値代入法
例題の中で説明していきます。
例 題 

(2) \( \frac {1}{(1-x)(1+x)} \)

上の例題(1)と似ていますが、違いますので注意してください。
与式を次のように変形します:
与式\( = \frac{A}{(1-x)}+\frac{B}{(1+x)}\) ❶ 
\(=\frac{A(x+1)+B(1-x)}{(1-x)(1+x)} \)

すなわち分子は:
\( 1= A(1+x)+B(1-x) \)です。
…ここまでは上記と同じ、これからが計算が楽です。

この式に\(x=-1\) を代入し、\(2B=1 \to B=\frac{1}{2}\) を得る。
また \(x=1\) を代入し、\(2A=1 \to A=\frac{1}{2}\) を得る。
この A, B を 式❶に代入して:

\(\therefore \ \frac{1}{(1-x)(1+x)}\) \(=\frac{1}{2}(\frac{1}{(1-y)}+\frac{1}{(1+x)}) \)


(3) \( \frac {2}{(x+1)(x+2)} \)

与式を次のように変形します:
与式\( = \frac{A}{(x+1)}+\frac{B}{(x+2)}\)
\(=\frac{A(x+2)+B(x+1)}{(x+1)(x+2)} \)

すなわち分子は:
\( 2= A(x+2)+B(x+1) \)です。

この式に\(x=-1\) を代入し\( A=2\)
また \(x=-2\) を代入し \(B=-2\)
この A, B を 与式に代入して:

\(\therefore \ \frac{2}{(x+1)(x+2)}\) \(=\frac{2}{(x+1)}-\frac {2}{(x+2)} \)


(4) \( \frac{1}{x(x^2+2)} \)

  与式\( = \frac{A}{x}+\frac{Bx+C}{(x^2+2)}\) \(=\frac{A(x^2+2)+(Bx+C)x}{x(x^2+2)}\)

\(Ax^2+2A+Bx^2+Cx=1\)…① 

\(x=0\) を代入し\( A=\frac{1}{2}\) 

式①に \(A=\frac{1}{2}\) を代入して:

\( \frac{1}{2}x^2+Bx^2+Cx=0\)

上式にx=1 と x=-1 を代入して次の2つの式を作る。
(x は0 以外の計算しやすい値でよい)

\( \frac{1}{2}+B+C=0\)
\( \frac{1}{2}+B-C=0\)
これから \(B=-\frac{1}{2}\) \(, \ C=0 \)

を得ます。

\( \ \therefore \frac{1}{x(x^2+2)} = \) \( \frac{1}{2} \left( \frac{1}{x} - \frac{x}{(x^2+2)} \right) \)


 (5) \(\frac{1}{(x+1)(x^2+1)}\)

与式 \(=\frac{1}{(x+1)(x^2+1)} \) \(=\frac{A}{x+1}+\frac{Bx+C}{x^2+1}\)

\(=\frac{A(x^2+1)+(Bx+C)(x+1)}{(x+1)(x^2+1)}\)

\(A(x^2+1)+(Bx+c)(x+1)=1\)
\(=Ax^2+Bx^2+(B+c)x+A+C=1\)
\(x=-1\) を代人し \(A=\frac{1}{2}\)
\(x=0,\ A=\frac{1}{2}\) を代人し \(C=\frac{1}{2}\)
\(x=1,\ A=\frac{1}{2},\ C=\frac{1}{2}\) を代人し \(B=-\frac{1}{2}\)

\( \therefore \frac{1}{(x+1)(x^2+1)}\) \(=\frac{1}{2}(\frac{1}{x+1} - \frac{x-1}{x^2+1})\)


 (6) \( \frac{5x^2+7x}{(x+1)^2(x-1)} \)

  与式\( = \frac{A(x-1)}{(x+1)^2}+\frac{B(x+1)(x-1)}{(x+1)}+\frac{C(x+1)^2}{(x-1)} \)

\(5x^2+7x\) \(=A(x-1)+B(x+1)(x-1)\)\(+C(x+1)^2\)

\(x=1\) を代入し\(C=3\)、 \( \ x=-1\) を代入し\(A=1\)、
\( \ x=0, A=1, C=3\)を代入し\(B=2\)  を得ます。

\(\therefore \ \frac{5x^2+7x}{(x+1)^2(x-1)}\) \(= \frac{1}{(x+1)^2}+\frac{2}{(x+1)} +\frac{3}{(x-1)} \)




coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れ様でした!