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湘南理工学舎
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2020/05/10

 楽しく学ぶ…初歩の数学/帰納法・背理法

    数学的帰納法・背理法

(mathematical induction ・ proof by contradiction )
 --目 次--

数学的帰納法
 ∗例題(1)
 ∗例題(2)
背理法
 ∗例題

•数学的帰納法 (mathematical induction)
数学的帰納法(以後、帰納法という)の説明でよく使う例を用います。

\( P(n):1+2+3+…+n\) \(=\frac{n(n+1)}{2} \cdots(1) \)

すべての\( n\) において成り立つことを帰納法で証明します。
 この「すべての n がポイントです、n = 10, n = 1,000 で証明できても 「すべての n 」 を証明したことにはなりません。
「すべての n 」について証明できるのが帰納法です。
帰納法では次の2 つを証明できればすべての \(n\) について証明したことになります。

① n=1 のとき P(1) が成り立つことを確認する。

任意の \(n\) について P(n) が成り立つと 仮定 します。
その仮定をもとに P(n+1) が成り立つことを確認する。

 (注:n は変数であり、任意の自然数に置き換えられる)

     
induction

上の図は帰納法のイメージです。

以下に帰納法の説明をします。(図参照) 

上の①、②を使い次のように展開していく。
・n=1 のとき成り立つ。
・n=2 のときは「②の証明による(n = 1+1= 2)」 が成り立つ。
・n=3 のときは「②の証明による(n = 2+1= 3)」 が成り立つ。
・n=4 のときは「②の証明による(n = 3+1= 4」 が成り立つ。
・\(\qquad \vdots \qquad \vdots\)     
・n=k-1 のときは「②の証明による(n = k-2+1= k-1」 が成り立つ。
・n=k  のときは「②の証明による(n =k-1+1= k)」より成り立つ。
・n=k+1のときは「②の証明による(n = k+1 」より成り立つ。
・n=k+2のときは「②の証明による(n =(K+1)+1 )」より成り立つ。
・\(\qquad \vdots \qquad \vdots\)

このようにして (さらに続き、)いくらでも続けられるのですべて自然数\(n\)に対して P(n) が成り立つわけです。
(ドミノ倒しとか、将棋倒しなと呼ばれるゆえんです)
   
例 題(1)
任意の自然数に n に対して、下式(1)が成立する(自然数の和)ことを帰納法によって証明する。
\( P(n)\):
 \(1+2+3+…+n\) \(=\frac{n(n+1)}{2} \cdots(1) \)

【解】:
・n=1のとき上式(1)の両辺:
\( 1=\frac{1}{2}n(n+1)=\frac{1}{2}・1・(2)=1\)

これによりP(1)が証明できた。…上記①の証明。

・次に任意のnに対しP(n)が成り立つとしてP(n+1)を証明する。
(式(1)に(n+1)を加算したものとP(n+1)が等しくなることを示せばよい)
式(1)の左辺 \(=\underline{P(n+1)}\)
\(=1+2+…+n+(n+1)\) \(= \frac{n(n+1)}{2}+(n+1) \)

\(= \frac{n^2+3n+2}{2}\) \(=\underline{\frac{(n+1)(n+2)}{2}}\)

式(1)の右辺 \(= \underline{\frac{(n+1)(n+2)}{2}} \)

式(1)の左辺=式(1)の右辺 である。
これにより n = n+1 のときも成り立つことが証明できた。(上記②の証明)

よって帰納法によりすべての n についても P(n) が成り立ちます。
     
例 題(2)
任意の自然数に n に対して、下式の P(n) が成り立つことを帰納法によって証明する。

【解】:
\( P(n):\)
\(\quad 1^2+2^2+3^2+…+n^2\) \(= \frac{n(n+1)(2n+1)}{6}…(2) \)

・n=1のとき \( P(1)=1\)(右辺=左辺)である。…上記①の証明

・次に任意のnに対しP(n)が成り立つとしてP(n+1)を証明する。
すなわち次の式を証明する。
\( 1^2+2^2+ \cdots +n^2+(n+1)^2\) \(=\underline{ \frac{(n+1)(n+2)(2n+3)}{6} }\) :(a) 

式(2)のP(n)は成り立つとするのだから、式(2)の両辺に\( (n+1)^2 \)を加える。
すなわち
\( 1^2+2^2+ \cdots +n^2+(n+1)^2\) \( = \frac{n (n+1)(2n+1)}{6} +(n+1)^2 \) 

となる。 右辺を計算する。
右辺=
\( =(n+1) \underline{ \left( \frac{n(2n+1)}{6}+ n+1 \right) }\) \( =(n+1) \left( \frac{2n^2+7n+6)}{6} \right) \) \(=\underline{\frac{(n+1)(n+2)(2n+3)}{6}}\) :(b) 
(下線部は展開、因数分解して: \( (2n+3)(n+2) \) です。)

\( \therefore (a)=(b) \) 

これより n+1 のときも成り立ちました。…上記②の証明
よって帰納法によりすべての n についても P(n) が成り立ちます。
    
•背理法
(proof by contradiction )
以下の手順で証明したいこと P の否定からはじまり、これは矛盾があるとして証明したい P が成り立つ。
(1)ある命題に対して、P が成り立たないと仮定します。
(2)そして最後に矛盾を導きだします。
(3)その結果、命題が成り立つことを示す証明です。
    
例 題
(1)\( \sqrt 2\ \)が無理数であることを証明する。
 
まず\( \sqrt 2\ \)が有理数と仮定する。(命題の否定を仮定)
すると\( \sqrt2= \frac{a}{b} \) と表せる。
(a b は互いに素な自然数(正の整数)です。) 【参考先】 
証明のポイント:
・互いに素とはこれ以上割り切れないことです。
・証明の最終でa,bが偶数となる。偶数ということはまだ割り切れるので互いに素な数ではなくなる。

両辺を2乗して \( \quad 2 a^2=b^2 …(1)\)
左辺は偶数(2の倍数)なので右辺のbの2乗は偶数となる。
b の2乗が偶数なら、b も偶数である。
(このように有理数を仮定して展開していきます)
b はある自然数k に対し\( b=2k \) として
式(1)は:
\( 2a^2=(2k)^2 \rightarrow 2a^2=4k^2 \rightarrow a^2=2k \)
a の2乗は偶数であるから a も偶数である。
a, b が偶数となる。よって、a, b が「互いに素である」ことと矛盾している。
このことははじめの仮定の「有理数」が間違いです。
初めの仮定が矛盾していました。
よって \( \sqrt 2\ \) は無理数であることが証明できたことになります。


coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れ様でした!

帰納法は数学以外(哲学など)でも使うので、私たちは数学的帰納法と明記しましょう。(上でははじめに注記してます)
初めての方は「数学的帰納法で本当の証明になるのか?」「背理法にいたっては、もっと疑問がわく」などと悩む方もいるかと思いますが、 これは慣れるまで素直に受け入れることが肝要です。
受け入れて先に進みましょう。(人生は有限です…先にはまだ学ぶことが沢山待っています)

帰納法に対して演繹法(えんえき)(reduction)がありますが、数学的演繹法は聞いたことはありません、演繹法とは超簡単に言うと「A=B、B=C なら A=C」が言えるような、 誰でも同じ結論となる推論のことで、数学自体が演繹法なのです…ということです。