楽しく学ぶ…初歩の数学
各種平均
(averages)
--目 次--
1.相加平均/算術平均(1)
(average/arithmetric mean)
学校のある学年にクラス数が n 個 あり、各クラスの人数が
\( a_1, a_2, \cdots ,a_n \)
このとき平均クラス人数 \(N_a\):
\(N_a= \frac{a_1+ a_2+ \cdots +a_n }{n}\)
である。
2.相乗平均/幾何平均(1)
(multiply mean/geometric mean)
関連する n 個の
比率データ数などの平均は以下の相乗平均の式を使います。
\(N_g= \sqrt[n]{a_1+ a_2+ \cdots +a_n }\)
【応用例】
前年度比率から4年後の学生人を求める
下表はある学校の学生人数の統計データです。
得ているデータは:
・基準は2015年の700人
・前年度比率
・人数(実データ)は未知です。(ここでは説明のため記載している)
上の条件で4年後の年学生人数を求める
\(
\begin{array}{|c|c|c|}
\hline
年 & 人数 & 前年度比率(※1) \\
& \color{red}{本来は未知} & \\
\hline
2016 & 800 & 1.142 \\
\hline
2017 & 900 & 1.125 \\
\hline
2018 & 700 & 0.778 \\
\hline
2019 & \color{red}{600} & 0.857 \\
\hline
\end{array}
\)
|
注(※1);前年度
比率
☜
キーポイント
①4年間の
前年度比率から相乗平均を求める。
②求めた相乗平均を使い、「2015年の700人」のデータから4年後の2019年の人数を算出する。
参考に相和平均も載せておきました…比較して下さい。
相和平均では合わないことが判ります。
相乗平均:
\(H_g=\sqrt[4]{1.142\times1.125\times0.778\times0.857} \)
\(=
0.96219\)
…4年後の人数が実データと合致する。
相加平均:(参考)
\(H_a=\frac{1.142+1.125+0.778+0.857}{4}\)
\(=0.9757\)
…4年後の人数が実データから外れる。
基準の700人に平均値を掛けて❶と❷を埋めたのが下表。
(例:\(700 \times 0.96219=673.5\)
\(700 \times 0.9757=682.99\))
\(
\begin{array}{|c|c|c|c|}
\hline
年 & 実データ & ❶相乗平均 & ❷相加平均 \\
& 人数 & 計算人数 & 計算人数 \\
\hline
2015 & 700 & & \\
\hline
2016 & 800 & 673.5 & 683.0 \\
\hline
2017 & 900 & 648.0 & 666.4 \\
\hline
2018 & 700 & 623.4 & 650.2 \\
\hline
2019 & \color{red}{600} & \color{red}{599.9} & \color{red}{634.4} \\
\hline
\end{array}
\)
|
【答え】は「599.9⇒600人」です。
わざと計算結果のまま「599.9」としておきましたが 「600人」です。相乗平均を使うのが適格です。
以上は説明のための計算でした。
通常は次のように簡単に早く計算できます。
相乗平均 \(k=0.96219\) として
4年後の学生数は:
\( (((700\times k) \times k ) \times k)\times k \)
\(\underline{=700 \times k^4} \)
\(=700 \times 0.8571\) \(=599.9\)
簡単で計算できました。
相乗平均の応用として
前年度の人口比率、売上比率、利回りなどに使われます。
3.相乗平均/幾何平均(2)
(multiply mean/geometric mean)
幾何平均は複利の計算にも使われています。
複利とは:
初期の元本 100 万円、金利 5 % として 貯金、1年後 は利子5 万円、これを加えて 105 万円となる。
この105 万円 を 元本にして再び 貯金(または投資)して その1年後は 利子5.25万円となり 合計 110.25 万円となる。
このようにして3年後には 151.8 万円になる。…❶
下記でこの金額を「年平均の利回り」を使い算出します。
このように 複利は元本が毎年更新される。
複利に対して「単利」というが、単利は利子を元本に入れない。
例えば、利回りが3年前 10%、2年前 15%、1年前 20% でした。
この過去3年間の
「平均利回り」は以下の幾何平均で求めます。
\( \sqrt [3]{1.1 \times 1.15 \times 1.2} =1.14927\)
年平均の利回りは 14.927 % となりました。
この数値を使い3年後の貯蓄額を求めます。
\( \color{red}{k}=1+0.14927=1.14927\)
3年後の貯蓄額:
\( ((100\times k) \times k ) \times k) \) \(=100 \times \color{red}{k^3})\)
\(=151.8\)
万円 …❷
∴ ❶=❷
4.相乗平均の別名「幾何平均」とは
長方形の面積(2辺 \(b, c\))は\( S=b c\) です。
\(S\) の平方根は\( \sqrt{S}=\sqrt {b\ c}=a \)…この意味は!
これは長方形の辺を
平均化して正方形を作ったことになります。
\( S=a^2=\sqrt {b\ c} \times \sqrt {b\ c} \)
直方体の体積\( V= b \times c \times d \) も同様です。
\( V=a^3= \sqrt[3]{b\ c\ d} \times \sqrt[3]{b\ c\ d} \times \sqrt[3]{b\ c\ d} \)
直方体の各辺を平均化して立方体(正6面体)の辺の長さ \(a\) を求めたことになります。
5.相加相乗平均の不等式
(arithmetric-geometric mean)
相加平均と相乗平均の関係式((1)と(1)')を「相加相乗平均の不等式」という。
条件: \(a >0, \ b>0\)
下式が成り立ちます。
\( \underline{ \ \ \frac{a+b}{2} \ ≥\sqrt {a b} }\qquad (1)\)
(相加平均 ≥ 相乗平均)
【式(1)の証明】
\( a+b-2\sqrt{ab}=(\sqrt{a}-\sqrt{b})^2 \ge 0\)
\(a+b-2\sqrt{ab} \ge 0\)
\(\therefore \frac{a+b}{2} \ge \sqrt{ab}\)
\( a=b \) のとき、等号が成立する。
等号が何を意味するか⇒左辺が最小値である。
したがって、\(\frac{a+b}{2}\) は
最小値であり、最小値は右辺の \(\sqrt{ab}\) である。
式を変形すると、よく使う式になる。
\( \underline{a+b ≥2\sqrt {a b} }\qquad (1)'\)
例題1
\( x>0\)に対し:
\( x+\frac{8}{x} ≥4 \sqrt{2} \ \)を示せ。
式(1)' を用いて
\( x+\frac{8}{x} ≥ 2 \sqrt{x \cdot \frac{8}{x}} \ \)
公式に対し\(a=x, \ b=\frac{8}{x}\)
\(\therefore x+\frac{8}{x}≥4 \sqrt{2} \)
例題2
\( a>0\)に対し:
\( a+\frac{1}{a} \ \)の最小値を求めよ。
式(1)' を用いて
\( a+\frac{1}{a} ≥ 2\sqrt{a \cdot \frac{1}{a}}=\color{red}{2} \ \)
公式に対し\(a=a, \ b=\frac{1}{a}\)
最小値は \( a=\frac{1}{a}\)のときであるから。
\(a=1\)である。 またこのときは等号が成立する。
または、上式を展開して解くと:
\( a+\frac{1}{a}=2\)
\( a^2+1=2a\)
\( (a-1)^2=0\)
\(\therefore a=1\)
∴最小値は
2(\(a=1\)のとき)
6.加重平均
(weighted average)
重みつき平均と呼ばれ、各データに重み(重要度、人数…などいろいろあります)を加味した平均です。
加重平均 \(N_g\) は次式で表せる。(\(x_i\):データ 、\(g_i\):その重み)
\(N_g= \frac{x_1 g_1+x_2 g_2 + \cdots + x_n g_n}{g_1+g_2 + \cdots + g_n}\)
例題:A社の社員の平均月給を求めよ
下表はA社の月給のデータ(年齢20~40代)
\(
\begin{array}{|c|c|c|c|}
\hline
年代 & 月給 & 人数 & 小計 \\
& (万円) & & (確認用) \\
\hline
20代 & 25 & 60 & 1500\\
\hline
30代 & 30 & 40 & 1200\\
\hline
40代 & 35 & 20 & 700\\
\hline
合計(確認用)& & 120 & 3400\\
\hline
\end{array}
\)
|
はじめから正解を書きます。(加重平均を使い)
A社の
平均月給料は:
\(N_g= \frac{25\times60 + 30\times40 + 35\times20}{60+40+20}\)
\(=\frac{3400}{120}\)
\(=28.3\) (万円)
です。
間違えて算術平均を使うと:
\(N_a= \frac{25+30+35}{3}=30.0\) (万円)
です。(間違い)
7.移動平均
(moving average)
時系列のデータ(株価、売上、気温など)に不規則、特異値など、また頻発する挙動など、そのままグラフ化すると時系列の傾向が見ずらい。
通常ではない外乱による異常データなど、それらを滑らかにして全体の傾向を把握しやすくするために移動平均を使います。
株価を例に説明します。
下表はA社の株価データ
\(
\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|c|}
\hline
稼働日 & 1& 2& 3& 4& 5& 6 \\
\hline
株価 & 300& 250& 340& 250& 300& 260 \\
\hline
5日平均 & & & & & 288& 280 \\
\hline
\end{array}
\)
\(
\begin{array}{c|c|c|c|c|c|c|}
\hline
7& 8& 9& \cdots & 39& 40 \\
\hline
400& 260& 320& \cdots & 520& 500\\
\hline
310& 294& 308& \cdots & 480& 486\\
\hline
\end{array}
\)
|
・1、2段目の稼働日と株価は集計の生データです。
・3段目のが移動平均、ここでは5日平均としました。
・移動平均は以下のように計算する。
1日から5日までの算術平均を5日目に記入。
2日から6日までの算術平均を6日目に記入。
\( \qquad \vdots \qquad \vdots \)
36日から40日までの算術平均を40日目に記入。
・以上のデータをグラフ化します。
黒線:生データは上下に振れています。
赤線:5日移動平均は緩やかに上昇しているのが分かります。
実際には5日より長い10日移動…25日移動などが使われているようです。