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湘南 理工学舎

 楽しく学ぶ…線形代数

 基本行列と基本変形

(basic matrix and matrix basic transformation)

 --目 次--

1.基本行列
2.基本行列による行基本変形
3.列基本変形の定義
4.基本行列(列)
5.基本行列による列基本変形
6.列の交換と連立1次方程式

今回のテーマ➡行列に基本行列を掛けると行基本変形ができる!

1.基本行列 

 連立1次方程式の解法において、変数消去による解法と係数拡大行列の行基本変形による解法が同等であることを前回学びました。

今回は行列の掛け算の操作により行基本変形ができることを解説します。

行列 A の行の基本変形とはある行列 E を左から A にかけて得られる行列 B に相当する。
\( EA=B\)

\( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{1} E:基本行列\\ A:行基本変形すべき行列\\ B:行基本変形してできた行列 \end{array} \right. \end{eqnarray}\)
この行列\( E \)を基本行列という。


基本行列は単位行列を以下のように変形したもの:

(以下は i = 1 と j = 3 としてます)
(1)単位行列 I の第 i 行と第 j 行を入れ替えたもの

\(\begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \rightarrow \begin{pmatrix} 0 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \end{pmatrix} \)

(2)単位行列 I の第(i, i)成分を s に変えたもの

\(\begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \rightarrow \begin{pmatrix} s & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \)

(3)単位行列 I の第(i, j)成分を s に変えたもの

\(\begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \rightarrow \begin{pmatrix} 1 & 0 & s \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \)


2.基本行列による行基本変形 

下記の行基本変形の定義を基本行列を左からかけて実現します。
(1)2つの行を入れ替える。(i行とj行)
(2)ある行をスカラーs倍する。
(3)ある行をスカラーs倍し、別の行に足す。 (i=1,j=3とします)
 

(1)2つの行を入れ替える。

(基本行列は行列 I の第i行と第j行を入れ換えたもの)
\(\begin{pmatrix} 0 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a_1 & a_2 & a_3 \\ b_1 & b_2 & b_3 \\ c_1 & c_2 & c_3 \end{pmatrix} \)

\(=\begin{pmatrix} c_1 & c_2 & c_3 \\ b_1 & b_2 & b_3 \\ a_1 & a_2 & a_3 \end{pmatrix} \)


(2)ある行をスカラー倍する。

(基本行列は行列 I の第(1,1)成分が s のとき)
\(\begin{pmatrix} s & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a_1 & a_2 & a_3 \\ b_1 & b_2 & b_3 \\ c_1 & c_2 & c_3 \end{pmatrix} \)

\(=\begin{pmatrix} sa_1 & sa_2 & sa_3 \\ b_1 & b_2 & b_3 \\ c_1 & c_2 & c_3 \end{pmatrix} \)


(3)ある行をスカラー倍し、別の行に足す。

(基本行列は I の第(1,3)成分を s に変えたもの)
\(\begin{pmatrix} 1 & 0 & s \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a_1 & a_2 & a_3 \\ b_1 & b_2 & b_3 \\ c_1 & c_2 & c_3 \end{pmatrix} \)

\(=\begin{pmatrix} a_1+s c_1 & a_2+s c_2 & a_3+sc_3 \\ b_1 & b_2 & b_3 \\ c_1 & c_2 & c_3 \end{pmatrix} \)



3.列基本変形の定義  

列基本変形を使う場面は少ないが、列基本変形の定義の「(1)2つの列を入れ替える」は「連立方程式の係数行列」と次回講義の「階数」において使えます。

列基本変形が使えますが、主は行基本変形であり、「連立方程式の係数行列」の列の交換には注意すべきことがあります。
「6.列の交換と連立1次方程式」を参照.

はじめて列基本変形ついて述べますが、表現が異なる(行↔列)ことと、注意すべきこと(例えば連立方程式の変数)などありますすが、本質的/潜在的には行基本変形と同じです。

列基本変形の定義については行基本変形の「行」を「列」に変えたものです。

(1)2つの列を入れ替える。(i列とj列)
(2)ある列をスカラー s 倍する。
(3)ある列をスカラー s 倍し、別の行に足す。
(i=1,j=3とします)


4.基本行列(列)  

(行基本変形での基本行列と識別のため便宜上、「基本行列(列)」としました。)
行列 A の行の基本変形とはある行列 E をから A にかけて得られる行列 B に相当する。
(行基本変形ではから、EA=B でした)
\( AE=B\)

この行列\( E \)を基本行列(列)という。

基本行列(列)は単位行列を以下のように変形したもの:

(以下は i = 1 と j = 3 としました。)
(1)単位行列 I の第 i 列と第 j 列を入れ替えたもの

\(\begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \rightarrow \begin{pmatrix} 0 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \end{pmatrix} \)

(2)単位行列 I の第(i, i)成分を s に変えたもの

\( \begin{pmatrix} s & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \)

(3)単位行列 I の第(j, i)成分を s に変えたもの

(行の場合は第(i, j)成分でした)
\( \begin{pmatrix} s & 0 & 0\\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \)


5.基本行列による列基本変形  

下記の列基本変形の定義を基本行列(列)を右からかけて実現します。
(1)2つの列を入れ替える。(i列とj列)
(2)ある列をスカラーs倍する。
(3)ある列スカラーs倍し、別の列に足す。 (i=1,j=3としました)
 

(1)2つの列を入れ替える。

(基本行列は行列 I の第i列と第j列を入れ換えたもの)
\( \begin{pmatrix} a_1 & a_2 & a_3 \\ b_1 & b_2 & b_3 \\ c_1 & c_2 & c_3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 0 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \end{pmatrix} \)

\(=\begin{pmatrix} a_3 & a_2 & a_1 \\ b_3 & b_2 & b_1 \\ c_3 & c_2 & c_1 \end{pmatrix} \)


(2)ある列をスカラー倍する。

(基本行列は行列 I の第(1,1)成分が s のとき)
\( \begin{pmatrix} a_1 & a_2 & a_3 \\ b_1 & b_2 & b_3 \\ c_1 & c_2 & c_3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} s & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \)

\(=\begin{pmatrix} sa_1 & a_2 & a_3 \\ sb_1 & b_2 & b_3 \\ sc_1 & c_2 & c_3 \end{pmatrix} \)


(3)ある列をスカラー倍し、別の列に足す。

(基本行列は I の第(3, 1)成分を s に変えたもの
\( \begin{pmatrix} a_1 & a_2 & a_3 \\ b_1 & b_2 & b_3 \\ c_1 & c_2 & c_3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ s & 0 & 1 \end{pmatrix} \)

\(=\begin{pmatrix} a_1+s a_3 & a_2 & a_3 \\ b_1+s b_3 & b_2 & b_3 \\ c_1+s c_3 & c_2 & c_3 \end{pmatrix} \)



6.列の交換と連立1次方程式  

拡大係数行列は連立1次方程式を行列の形(※)にしたものなので、列の交換(列基本変形)による変形には制限があり注意が必要です。

注(※):行列の左側に方程式の未知数の係数、最後の列に定数項を配置した行列。

注意事項
(1)列の交換は係数行列の領域内で行う。(拡大係数行列の定数項は交換しない)

(2)交換した列は未知数も交換する。
  例えば2列↔3列の交換したら、\(x_2↔x_3\)の交換もする。

【列の交換例】以下のように未知数も替える。
• \(\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x_1 + x_2=3 \\ x_2 + x_3=6 \\ 2x_2 + x_3=8 \\ \end{array} \right. \end{eqnarray} \)


この方程式の拡大係数行列:
\( \left( \begin{array}{rrr|r} x_1& x_2& x_3& b\\ 1& 1& 0& 3\\ 0& 1& 1& 6\\ 0& 2& 1& 8 \end{array} \right) \)


これを2列と3列を交換すると、列のもつ内容は:
\( (x_1,x_2,x_3)\) ではなく \((x_1,x_3,x_2)\) となる。

\( \require{cancel}\ \left( \begin{array}{rrr|r} x_1& \cancel{x_2}& \cancel{x_3}& b\\ x_1& x_3& x_2& b\\ 1& 0& 1& 3\\ 0& 1& 1& 6\\ 0& 1& 2& 8 \end{array} \right) \)


下記はこの拡大係数行列をそのまま連立方程式にしたもの。
• \(\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x_1 + x_2 =3 \\ x_3 + x_2 =6 \\ x_3 + 2x_2 =8 \\ \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした