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湘南理工学舎
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2021/2/24

 楽しく学ぶ…微分積分

  関数列の一様収束と各点収束

(uniform convergence and pointwise convergence in function sequence)
 --目 次--
関数列とは
関数列の収束
一様収束の性質
一様収束とは
一様収束の定義
各点収束とは
各点収束の定義
各点収束では「極限操作の交換不可」
一様収束なら「極限操作の交換可能」の証明
ε-N 論法による定義

関数列とは
関数列\(f_n(x)\)とは、数列と同じように、定義域において関数をある規則で並べた無限列\(f_n(x)\)のこと。
例えば無限列の各関数\(f_1(x),f_2(x),\cdots\)とすれば
・\(\{f_n(x)\}=\{f_1(x),f_2(x),\cdots\}\)

\(f_n(x)=x^n\)とすれば
・\(\{f_n(x)\}=\{x,x^2,\cdots x^2\cdots\} \)

関数列の無限列の和は級数です、これを関数項級数といっています。
\(\sum f_n(x)=f_1(x)+f_2(x)+\cdots\) \(+f_n(x)+\cdots\)
整級数、テーラー級数、マクローリン級数なども関数列の級数ですね。

関数列の収束
 ここではある区間で定義された関数列\(\{f_n(x)\}\)の収束を考えていきます。
収束を考えることは n を無限大にもっていったときの極限を調べることです。
関数列の収束には、「一様収束」と「各点収束」があります。
(関数の一様連続【参照先】とは違います。(似ているところもあるが)今回は関数列です)

・「ε-N論法」 が分からくても理解できるよう説明していきまが、最後に「ε-N論法」による解説もします。
・テイラー展開・マクローリン展開の級数なども次のように関数列/整級数として、収束域を調べることができる。

例えば \(log(1+x)\)のマクローリン展開(級数)は:
\(log(1+x)=\displaystyle \sum_{n = 0 }^{ \infty } \frac{f^{n}(0)}{n!} x^n\) \(=x-\frac{x^2}{2}+ \frac{x^3}{3}-\cdots+ \frac{(-1)^{n-1}}{n} x^n+\cdots\)
この式から、以下のようにすると、次の各項は関数列として考えて収束の論議にはいる。
\(f_1(x)=x\) \(,\ f_2(x)=x-\frac{x^2}{2} \) \(,\ f_3(x)=x-\frac{x^2}{2}+ \frac{x^3}{3} \)

一様収束の性質
 一様収束のメリットを予め述べておきます。
(1)関数列が一様収束であれば、極限操作の「\(\color{red}{\int}\) 」と「 \(\displaystyle \color{blue}{\lim_{n \to \infty}}\)」 との順序の交換が可能である。
(\(f(x)\) は \(f_n(x) (n \rightarrow \infty)\) の収束先であることに留意)

\( \displaystyle \color{red}{\lim_{n \to \infty}} \color{blue}{\int_{a}^{b}} f_n{x}dx\) \(=\displaystyle \color{blue}{\int_{a}^{b}} \color{red}{\lim_{n \to \infty}} f_n(x) dx\) \(=\displaystyle \int_{a}^{b}f(x) dx\)
( \( \displaystyle \lim_{n \to \infty} f_n(x)=f(x)\) )
このことは次回のテーマである項別積分の公式の導出に使われる。
また数学以外の物理などでも応用されている。

(2)定義域 I において連続の関数列\(f_n(x)\)が 関数\(f(x)\) に一様収束するとき、収束先の\(f(x)\)も I において連続である。


一様収束と各点収束とはどんな収束か?
例をあげて説明します。

一様収束とは
下図は、 \(f_n(x)=\frac{sin\ x}{n}\) の関数列のグラフです。
ある x の点に注目してみると、n を大きくしていくと\(f_n(x)\) は0 に近づいていくのが分かる。
図ではx が \(\frac{\pi}{2}\) \(、\frac{3\pi}{2} \) で 0 に収束する距離が最も遠いが、n をさらに大きくすれば 0 に収束する。
すなわち、「\(n\rightarrow \infty\) で \(f_n(x)\)は 0 に収束」する。
これにより収束がある 定義域の全ての x の点において収束する、これを一様収束という。
一様収束
  fig1 一様収束

一様収束の定義
区間 I で定義された\(\{f_n(x)\}\)が I 上で\(f(x)\)に一様収束するとは
次の式が成り立つことである。
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty } \displaystyle \sup_{x ∈I}|f_n(x)-f(x)|=0\) :❶

この式は n を無限大の極限において:
\(sup\)とは上限のことで、\(|f_n(x)-f(x)|\)の上限を意味するから …すなわちすべてのx を動かして 収束値\(f(x)\)と最も離れている値でも 式❶ 0 であることを意味する。

一様収束でのポイントは定義域 I の ずべての x について 式❶ が成り立つこと。

各点収束とは
下図は \(f_n(x)=x^n\) ,定義域 I=[0,1] のグラフです。
(例: n=10 を固定し、x を変化したときの \(f_{10}(x)\) のグラフ)
次の2つの状態をイメージして下さい。
・\( (0 \le x \lt 1) \)の範囲ではn を大きくすると \(f_n(x)\)は 0 に収束する。
 例えばx=0.8 を見ると、n=10 では0への収束は遠いが、n=100 なら収束に見える。
・\( (x =1) \) では収束先は1 となる。(0 を経由しない)
(\(f_n(x)=1^n\)はいくらn を多くしても1 である。)
・ x=1 で収束先が変った。➝不連続になった。

各点収束
  fig2 各点収束

x により収束先が次のように異なり、不連続となる、このような収束を関数\(f(x)\) に各点収束するという。
(注:\(f(x)\)は関数列\(f_n(x)\)の収束先
\( \begin{eqnarray} \ f(x) = \begin{cases} 0 & ( 0 \le x \lt 1 ) \\ 1 & ( x = 1 ) \end{cases} \end{eqnarray} \)


各点収束の定義
区間I で定義された\(\{f_n(x)\}\)がI 上で 任意のある\(x_m\) について、\(f(x_m)\)に各点収束するとは
次の式が成り立つときのことである。(一様収束の場合の上限の記号 sup はつかない(※1))
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty } |f_n(x_m)-f(x_m)|=0\) :❷
(※1)各点収束の式❷は x に依存し、\(x=x_m\)の点についての収束である。

また「ε-N論法」的には次の式が成り立つことである。
x に依存する自然数 \(n \gt N\) に対し \(|f_n(x)-f(x)|\lt ε \)
詳しくは「ε-N論法」の項で説明するが、ここの N は ε と x に依存している。


各点収束では「極限操作の交換不可」の例
関数列が一様収束であれば、以下の如く、極限操作の「\(\color{blue}{\int}\) 」と「 \(\displaystyle \color{red}{\lim_{n \to \infty}}\)」 との順序の交換が可能である。

\( \displaystyle \color{red}{\lim_{n \to \infty}} \color{blue}{\int_{a}^{b}} f_n{x}dx\) \(=\displaystyle \color{blue}{\int_{a}^{b}} \color{red}{\lim_{n \to \infty}} f_n(x) dx\) \(=\displaystyle \int_{a}^{b}f(x) dx\)

(参考:定積分はリーマン和における微小分割Δを無限小にした極限でした)

それでは交換できない例を示そう!
以下の図は各点収束の例です。… 極限操作の交換ができないことを説明する代表的な図です。
図の関数列は下式である。
\( \begin{eqnarray} \ f_n(x) = \begin{cases} n^2 x & ( 0 \le x \lt \frac{1}{n} ) \\ 2n-n^2 x & ( \frac{1}{n} \le x \lt \frac{2}{n}) \\ 0 & (x \ge \frac{2}{n}) \end{cases} \end{eqnarray} \)
n を大きくすると、縦にn 倍、横に 1/n倍 となる、面積一定の変化をする。
(nを大きくすると 三角形の山が左に移動しながら、山が高くなる変化をする)

各点収束
  fig3 各点収束

収束状況はあるx の点、例えば Xb に着目し、n を増やすと(n=1→n=2)、f(x) は「0」になる。
さらに x を0 に近付けても n をさらに大きくすると\(f_n(x)\) の値は「0」に各点収束する。
しかしn の増大により三角形の山は高くなり(山が残るイメージ)、 \(x=0\) を含む 0近傍では収束せず、一様収束ではない。

・\(n\gt\frac{2}{x}\) または \(x\gt\frac{2}{n}\) なら \(f_n(x)=0\) である。
・一様収束条件の「x に依存せず収束する」ことに留意する。

この関数\(f_n(x)\) は \(0 \lt x \le 3\) においては 「0」に各点収束し、
 \(\displaystyle \lim_{n \to \infty} f_n(x)=0\) である。

さて三角形の面積は:(1/2・底辺・ 高さ )
\(\displaystyle \int_{0}^{1} f_n(x)dx=\frac{1}{2}\cdot 2(\frac{1}{n}) \cdot n^2(\frac{1}{n})\) \(=\frac{1}{2}\cdot\frac{2}{n} \cdot n=1 \)
左から\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}\)をかけても「1」は変わらない。 (∵ 定積分の結果は定数である)
\(\therefore \displaystyle \lim_{n \to \infty} \displaystyle \int_{0}^{1} f_n(x)dx=1 \)

しかるに:
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} f_n(x)=0\) であるから
\( \displaystyle \int_{0}^{1} \displaystyle \lim_{n \to \infty} f_n(x)dx=0\)
\( \therefore \displaystyle \lim_{n \to \infty} \displaystyle \int_{0}^{1} f_n{x}dx\) \(\ne \displaystyle \int_{0}^{1} \displaystyle \lim_{n \to \infty} f_n(x)dx\)

これより各点収束では極限操作の交換はできないことが分かった。


一様収束なら「極限操作の交換可能」の証明
 定義域 \(I=[a,b]\)として、下式を証明する。
\(\color{red}{\displaystyle\lim_{n \to \infty}\int_{I} f_n(x)dx}\) \(=\color{red}{\displaystyle\int_{I} \lim_{n \to \infty}f_n(x)dx}\) \(=\displaystyle\int_{I}f(x)dx\) :❸  ( \( \displaystyle \lim_{n \to \infty} f_n(x)=f(x)\) )

証明の前に次を確認しておく。
・証明の条件は「関数列\(f_n(x)\)は一様収束」である。
・思いだそう「数列\(a_n\)とその収束先・極限\(α\)の式」

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n=α\) であるための判断は:
\(\left|a_n-α\right|\lt ε\) でした。

これから証明をはじめます。

\(n \rightarrow \infty\) のときの関数列\(f_n(x)\) の収束先は\(f(x)\)。
 \(\displaystyle\lim_{n \to \infty}f_n(x)=f(x)\)であるから式❸は:
\( \begin{eqnarray} \displaystyle\lim_{n \to \infty} \overbrace{ \int_{I} f_n(x)dx }^{a_n} \end{eqnarray} \) \( \begin{eqnarray} =\overbrace{\displaystyle\int_{I}f(x)dx}^{α} \quad:❸ \end{eqnarray} \)
である。
収束の差分の式は \(\left|a_n-α\right|\lt ε\)である。
同様にして(式❸の左辺の\(lim\)を外した)下式を展開していく:
\(\underline{|\displaystyle\int_I f(x)dx-\displaystyle\int_I f_n(x)dx |}\)
\(= |\displaystyle\int_I f(x)dx- f_n(x)dx|\) \(\le \displaystyle\int_I | f(x)dx- f_n(x) | dx\)
 \(f_n(x)\)は一様収束するから、n を大きくすると\(f_n(x)\)は\(f(x)\)に近づき
   \(|f(x)dx- f_n(x)|\)はεでおえられる。
\(\le \displaystyle\int_I | f(x)dx- f_n(x) | dx \le \displaystyle\int_{a}^{b} ε dx \)
\(=\left[εx\right]_{a}^{b} \) \(=ε(b-a)\) :❹
ε とはいくらでも小さくとれるから式❸が成り立つ。…証明終わり
 補足: \(n \rightarrow \infty\)のとき\(f_n(x) \rightarrow f(x)\)であるから「式❹→0」となる。


ε-N論法による定義
ε-N論法の ∗【参照先】

(参考のため)論理記号
・\(\ \color{red}{\forall}\ ε \):「すべてのε (all)」または「任意のε (any)」   ・\(\ \color{red}{\exists}\ N \):「Nが存在する (exist)」 
・\(\ \color{red}{s.t.}\ A \):「Aのような (such that)」    ・\(\ A \color{red}{\Rightarrow} B \):「A ならB である」 
以下は「\(\exists N∈\mathbb{N}\)」 と 「\(\forall x∈I\)」 のおかれている位置に注意する。

一様収束
\(\forall ε \gt 0\quad\color{blue}{\exists N∈\mathbb{N}}\quad\color{red}{\forall x∈I}\quad\forall n\gt N \) \(\Rightarrow|f_n(x)-f(x)|\lt ε \)
任意の\(ε\gt 0\)に対して、 ε に依存したN が存在し 定義域I におけるx について N より大きいn 対して、
\(|f_n(x)-f(x)|\lt ε \) が成り立つ。
各点収束
\(\forall ε \gt 0\quad\color{red}{\forall x∈I}\quad\color{blue}{\exists N∈\mathbb{N}}\quad\forall n\gt N \) \(\Rightarrow|f_n(x)-f(x)|\lt ε \)
任意の\(ε\gt 0\)に対して、定義域I におけるx が存在し、ε と x に依存した N が存在し、そのN より大きいn 対して、 \(|f_n(x)-f(x)|\lt ε \) が成り立つ。



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[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れ様でした。