\( \require{cancel} \)
earth
湘南理工学舎
[戻る]   
2020/11/13

 楽しく学ぶ…微分積分

 関数の極限・一様連続性

(function limit ・ uniform continuous)
 --目 次--

*関数の極限値について
  ∗ 関数の極限値の性質
  ∗ 関数の極限値の存在
*具体的な関数の極限値
  ∗ \(\displaystyle \lim_{ x \to {\frac{π}{2}} } tan\ x\)

  ∗ \(\displaystyle \lim_{ x \to 0 } \frac{1}{x}\)

  ∗ \( \displaystyle \lim_{ x \to 1 } \frac{x^2-1}{|x-1|} \)

  ∗ \( \displaystyle \lim_{ x \to 1 } \frac{x^2-1}{x-1} \)

*指数・対数関数の極限値

*関数の一様連続性

 イプシロン・デルタ論法で関数の連続・収束について学びました。ここでは具体的な関数の極限値を求めてみましょう。

1.関数の極限値について

(1)関数の極限値の性質

\(\displaystyle \lim_{ x \to b}\ f(x)=α\ \) \(,\displaystyle \lim_{ x \to b}\ g(x)=β\ \) が存在するとき、次が成立する。
(a) \( \displaystyle \lim_{ x \to b} \left[f(x)+g(x) \right] =α+β\ \)
e.g.: \(\displaystyle \lim_{ x \to 0}\ [cos\ x + e^x ]\) \(=\displaystyle \lim_{ x \to 0}\ cos\ x \)\(+\displaystyle \lim_{ x \to 0}\ e^x \) \(=1+1=2 \)

(b) \(\displaystyle \lim_{ x \to b}\ c\ f(x)=c\ α\ \)
e.g.: \(\displaystyle \lim_{ x \to 0}\ 3 (cos\ x)\) \(=3 \cdot 1=3 \)

(c) \(\displaystyle \lim_{ x \to b}\ f(x) g(x)=α\ β \)
e.g.: \(\displaystyle \lim_{ x \to 1}\ (x\ e^x)\) \(=1 \cdot e^1=e\)

(d) \(\displaystyle \lim_{ x \to b}\ \frac{f(x)}{g(x)}= \frac{α}{β} \)
e.g.: \(\displaystyle \lim_{ x \to 0}\ \frac{cos\ x}{e^x} \) \(= \frac{1}{1}=1 \)

(2)関数の極限値の存在
関数に極限値が存在するとは右側極限値と左側極限値が存在し、かつ両者が一致することです。
(イプシロン・デルタ論法の簡易版といってもよいと思います)

2.具体的な関数の極限値

(1) \(\displaystyle \lim_{ x \to {\frac{π}{2}} } tan\ x\) の極限値を求める
(極限値がない例1)
\(f(x)= tan\ x \) は下図を見てわかるように\( \frac{π}{2} \) において右側極限値と左側極限値が異なる。
以下の通りです。

\(\quad \displaystyle \lim_{ x \to {\frac{π}{2}+0} } tan x = -∞ \)

\(\quad \displaystyle \lim_{ x \to {\frac{π}{2}-0} } tan x = +∞ \)

これより極限値はありません。(プラス・マイナスに発散します)
  
tanの極限
  【fig1 \(f(x)=tan x\) の曲線】 


(2) \(\quad \displaystyle \lim_{ x \to 0 } \frac{1}{x}\) の極限値を求める
(極限値がない例2)
図を見て分かるように、 \( y= \frac{1}{x} \) は x = 0 で不連続。
x = 0において右側極限値と左側極限値が異なる。
上記と同様に極限値はありません。
(プラス・マイナスに発散します)

  
1/x の極限
  【fig2  \(f(x)= \frac{1}{x}\) の曲線】  


(3) \( \displaystyle \lim_{ x \to 1 } \frac{x^2-1}{|x-1|} \) の極限値を求める
(極限値がない例3)
分数式の場合は不定形になるか否か、また上式のように分母が絶対値になっている時は絶対値を外すため場合分けをするので注意が必要です。

\( \begin{eqnarray} \ |x-1|=|A| = \begin{cases} (x-1) \quad \ (A≥1) \\ -(x-1) \quad (A<1) \end{cases} \end{eqnarray} \)

\( A>1 \):
与式 \(=\displaystyle \lim_{ x \to 1 } \frac{(x+1)(x-1)}{x-1} \) \(=\displaystyle \lim_{ x \to 1 } (x+1)=2 \)

\( A<1 \):
与式 \(=\displaystyle \lim_{ x \to 1 } \frac{(x+1)(x-1)}{-(x-1)} \) \(=\displaystyle \lim_{ x \to 1 } -(x+1)=-2 \)

よって、極限値はありません。
  
分数式の極限
 【fig3  \(y= \frac{x^2-1}{|x-1|}\) , \(y= \frac{x^2-1}{x-1}\) の曲線】  

(4) \( \displaystyle \lim_{ x \to 1 } \frac{x^2-1}{x-1} \) の極限値を求める

この式は x=1 で \( \frac{0}{0} \) の不定形となるので、約分して解消します。

与式 \(= \displaystyle \lim_{ x \to 1 } \frac{(x+1)(x-1)}{(x-1)} \) \(= \displaystyle \lim_{ x \to 1 } (x+1) = 2 \)

上式は x→0 において 右側極限値=左側極限値=2 です。


3.指数・対数関数の極限

「ネイピア数の導関数」で扱っています。 ここを参照して下さい。

求めた結果の式だけ記載しておきます。
\( \displaystyle \lim_{ x \to 0} \left ( 1+ x \right )^\frac{1}{x}=e \ \)

\( \displaystyle \lim_{ x \to 0}\ \left ( \frac{log\ ( 1+ x )}{x} \right ) = 1 \ \)

\( \displaystyle \lim_{ x \to 0}\ \left ( \frac{e^x-1}{x} \right )=1 \ \)


4.関数の一様連続性
 今回は「一様連続」について、「一様連続」がどんなときに使われるなどの概念的なことを説明します。

\( \displaystyle \lim_{ x \to a } f(x)=f(α)\)

関数の連続とは関数が \(x_1=a \) で上式が成り立つときです。

これを連続関数といいます。

イメージ的に一様連続とはもっと厳しい条件になります。

いま、x=a で連続であるといいましたが、一様連続は x が \(x_1=a \) に依らず、どこでも連続であることです。

これを一様収束とまたは一様連続といいます。また定義域を限定して連続であれば各点連続という。
一般の連続とは各点連続のことをいっている。

一様収束はx に依存せず、x のどこでも一様の速さで収束する意味です。

例えば \( f(x)=x^2 \) などは x が十分大きいとき、x の微小な変化でも f が猛烈に変化する。

\( tan\ x \), \( \quad \frac{1}{x}\) … このような関数は一様連続ではありません。

関数が一様連続であれば、連続関数であるが、その逆は成立しない。

ε・δ 論法による連続とは:
ある区間にある a と、任意の ε がある。
\( \forall ε>0, \quad \exists δ \quad s.t.\)
\( 0<|x-a|<δ\) \( \Rightarrow |f(x)-f(a)|<ε \) 
ならば x=a において\(f(x)\) は連続である。
ここでは a に対応する ε と δ がある。

ε・δ 論法による一様連続とは:
任意の ε があり、ある δ がある。
\( \forall ε>0, \quad \exists δ \quad s.t.\)
\( 0<|x_1-x_2|<δ\) \( \Rightarrow |f(x_1)-f(x_2)|<ε \)
ならば \(f(x)\) は一様連続である。
ここでは a に依存しない ε と δ がある。
論理記号:
•\(\ \forall ε \):「すべてのε (all)」または「任意のε (any)」 
•\(\ \exists δ \):「δが存在する (exist)」 
•\(\ s.t.A \):「Aのような (such that)」
•\(\ A \Rightarrow B \):「AならBである」 

例:関数 \( y=\frac{1}{x}\) の場合
上図【fig2】を参照
一様に連続であれば、はじめに決めた ε に対して y のどの位置でも
距離 \(|f(x_1)-f(x_2)|\ <ε \)
を満足する一様なδ が存在する。

本題の関数は x を右側(+)から 0 に近付けると f(x) は急激に上昇し 無限大に向かう。
このようは急上昇する領域を考えると:
(x が 0 に近づき、y が急上昇)
距離 \( |f(x_1)-f(x_2)|\ <ε \  \) (※)
を満足するような 距離\(|x_1-x_2| \ <δ \) はどんどん小さくなり、(※)を満足できる 一様な δ がなくなる。
これより一様連続と同じだが、これを各点連続である。

同様にして関数 \(y=x^2\) は x の増加に対し y が急上昇するので、一様連続ではないが、定義域を限定すれば一様連続となる。


coffe

[コーヒーブレイク/閑話]

連続に関して一般に:
・連続関数より一様連続が強い。

・連続関数より微分可能な関数が強い。

といえる。