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湘南理工学舎
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2022/08/05   
2021/07/05  

 楽しく学ぶ…微分積分

 テイラー展開・マクローリン展開

(taylor / maclaurin expansion)
 --目 次--
テイラーの定理
テイラー展開
マクローリン展開
収束半径
 --【例題】--
 ∗ \(e^x\)のマクローリン展開
 ∗ \(sin\ x\)のマクローリン展開
 ∗ \(log(1+x)\)のマクローリン展開
 ∗ \(\sqrt{1.8}\)の近似値
 ∗ \(\sin(1)\)の近似値
 ∗ その他のマクローリン展開例

\(cos\ x\) \(,\ \) \((1+x)^α\)\(,\ \) \(e^{-x}\)
\(tan\ x\) \(,\ \) \(sinh\ x\) \(,\ \) \(cosh\ x\)

   
 関数 f(x) の x軸上の点a の近傍における関数の近似式を与えるのがテイラー展開、また原点 (x=0) 近傍における近似式を与えるのがマクローリン展開です。
べき級数が多く並んでいるが、各項は定数部が多い多項式で表した式です。
数学以外の物理学などでもよく使います。
テイラー展開で求めたものがx のどの範囲で近似できるかをつかむことも(収束域、収束半径)、応用面では重要です。
テイラーの定理ではn 個の有限個のべき級数(整級数)、すなわち有限級数で表現されいる。
テイラー展開無限級数で表現され、テイラー級数とも呼ばれている。

テイラーの定理
 f(x)は 開区間\(I=(a,x)\) において n回微分可能(\(C^{n}\)級 )のとき、下式が成り立つ。
テイラーの定理の式は多項式を有限個にとめて最後の項に剰余項をつけている。

 \(f(x)=\color{blue}{f(a)+\frac{f'(a)}{1!}(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+}\) \(\color{blue}{\cdots+\frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(x-a)^{(n-1)}} + \frac{f^{n}(c)}{n!}(x-a)^n \) :❶

( \(f(x)=\color{blue}{ \displaystyle \sum_{m=0}^{n-1} \frac{f^{m}(a)}{m!}(x-a)^m}\) \(+\color{red}{ \frac{f^{n}(c)}{n!}(x-a)^n }\) )
最終項を\(R_n\)とおく。(\(f(a)\) でなく \(f(c)\)である。)   
\(R_n\)のことをラグランジュの剰余項(または誤差項)という。
 \(\color{red}{ R_n=\frac{f^{n}(c)}{n!}(x-a)^n } \):❷
\(c=a+θ(x-a)\) \((0\ltθ\lt1) \)
上式の\(c\)がx とa の間に存在するとき式❶が成り立つ。

注1:点a は開区間I において任意の点である。
注2:式❶の x を b にした式 (\(\color{blue}{f(b)}=f(a)+\frac{f'(a)}{1!}(x-a)+\cdots\) )もある。

これから式❶の証明をします。
証明の流れ:

・新たな関数\(F(t)\) を導入し \(c\)の存在を確認する。( ロルの定理を使う)
・実際に\(K\)を求める。
・求めた\(K\)を式❹ に代入し\(F(t)=0\)として 式❶ を導出。
・以上より証明が終わる。

\(R_n=\frac{ \color{red}{f^{n}(c)} }{n!}(x-a)^n\)
\(K=f^{n}(c)\) として式❶を変形すると:(青字は式❶の右辺)

\(K=\frac{n!}{(x-a)^n}\left( f(x)-\color{blue}{f(a)+\frac{f'(a)}{1!}(x-a) }\right.\) \(\left.\color{blue}{ +\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+\cdots+\frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(x-a)^{(n-1)}} \right)\) \(\ :❸ \)

ここで新しい関数\(F(t)\)を用意する

\(F(t)=f(x)-f(t)-\frac{f'(t)}{1!}(x-t)\) \(-\frac{f''(x)}{2!}(x-t)^2+\) \(\cdots-\frac{f^{(n-1)}(x)}{(n-1)!}(x-t)^{(n-1)} - \frac{K}{n!}(x-t)^n\) \(\ :❹ \)

\(t=a\) のとき \(F(a)=0\)

\(F(a)=f(x)-f(a)-\color{blue}{ \frac{f'(a)}{1!}(x-a) }\) \(\color{blue}{-\frac{f''(x)}{2!}(x-a)^2+ }\) \(\color{blue}{ \cdots-\frac{f^{(n-1)}(x)}{(n-1)!}(x-a)^{(n-1)}-\frac{K}{n!}(x-a)^n }\)
\(=f(x)-\color{blue}{f(x)}=0\)

\(t=x\) のとき \(F(x)=0\)
\(\therefore F(a)=F(x)=0\)
\(F(t)\)は微分可能(※)だから、中間値定理(ロルの定理)より【参照先】
(※:もとの関数f(x) が微分可能だから当然)
\(\quad F'(c)=0 \) \(\ (a\lt c \lt x)\)
を満たす c が必ず存在することが判ります。
実際に\(F'(t)\)を計算してみる。
(注:積の微分もあるので注意)

例: \(\left(-\frac{f'(t)}{1!}(x-t) \right)'\) \(=-\frac{f''(t)}{1!}(x-t)+f'(t)\)
\(\quad f(x),K=f^{(n)}(c)\)は定数扱い

\(F'(t)=\cancel{-f'(t)}-\cancel{\frac{f''(t)}{1!}(x-t)}\) \(+\cancel{f'(t)}-\frac{f'''(t)}{2!}(x-t)^2\) \(+\cancel{\frac{f''(t)}{1!}(x-t)} \cdots\underline{ -\frac{f^{(n)}(t)}{(n-1)!}(x-t)^{(n-1)} }\) \(-\frac{f^{(n-1)}(t)}{(n-2)!}(x-t)^{(n-2)}\) \(+\underline{ \frac{K}{(n-1)!}(x-t)^{(n-1)} }=0\)

上式の右辺は省略している項があるが、キャンセルされる項が多く、残る項は下線部だけとなる。

\(-\frac{f^{(n)}(t)}{(n-1)!}(x-t)^{(n-1)}+\frac{K}{(n-1)!}(x-t)^{(n-1)}=0\)
\(\therefore\) \( K=\frac{f^{(n)}(t)}{(n-1)!} (n-1)!=f^{(n)}(t)\)

式❹に上記のK を代入し、また\(t=a\)にして\(f(x)\) を求めると:

\(f(x)=f(a)+\frac{f'(a)}{1!}(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+\) \(\cdots+\frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!} (x-a)^{(n-1)} + \frac{f^{n}(c)}{n!}(x-a)^n \)

上式は式❶と同じです… 式❶が導かれました。…【証明終わり】

以下に簡単な考察をする。
n=1 のときテーラの定理式❶(1次式)は:
 \(f(x)=f(a)+\frac{f'(a)}{1!}(x-a)\)
これはf(x) の点a における接線です。

テーラの定理式❶の1項目と最終項だけにすると:
 \(f(x)=f(a)+\frac{f'(c)}{1!}(x-a)\)
x=b とすると
 \(f'(c)=\frac{f(b)-f(a)}{b-a}\)
これは \(a\lt c\lt b\) における平均値(ロル)の定理式 です。

有限マクローリン展開(有限級数)とは:
テイラーの定理式❶の\(a=0\) の場合をいう。
(無限級数と識別すると式❶は有限テイラー展開といえる)

 \(f(x)=f(0)+\frac{f'(0)}{1!}(x)+\frac{f''(0)}{1!}x^2+\) \(\cdots+\frac{f^{(n-1)}(0)}{(n-1)!}x^{(n-1)} + \frac{f^{n}(c)}{n!}x^n \) :❺
 \(R_n=\frac{f^{n}(c)}{n!}x^n\):❻


テイラー展開とマクローリン展開

テイラーの定理の \(n\rightarrow\infty\)のときの剰余項(式❷)について:
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} R_n=0 \) が成り立つなら式❶ を拡張して無限級数で表せる。
式❶の無限級数版を「テイラー展開」、また式❺の無限級数版(\(a=0\))を「マクローリン展開」という。

テイラー級数(展開)、マクローリン級数(展開)というもことあるので注意されたし。
通常、問題などで「テイラー/マクローリン展開せよ」いっているのは「有限のテイラー/マクローリン展開」のことですね。 

テイラー展開
f(x)は 開区間\(I=(a,x)\) において 無限回微分可能(\(C^{n}\)級 )、かつ n が無限大のとき剰余項が 0 に収束するとき下式が成り立つ。

 \(f(x)=f(a)+\frac{f'(a)}{1!}(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+\) \(\cdots+ \underline{ \frac{f^{(n)}(a)}{n!} } (x-a)^{n} + \cdots\) :❼
マクローリン展開
テイラー展開式❼の\(a=0\) のとき
 \(f(x)=f(0)+\frac{f'(0)}{1!}x+\frac{f''(0)}{2!}x^2+\) \(\cdots+\underline{ \frac{f^{(n)}(0)}{n!} }x^{n} + \cdots\) :❽

収束半径 r (近似できる領域)
テーラ展開は \(a\) を中心にした近似式を与えるが、 \(x\) が \(a\) から離れと精度が下がる、そしてある点で急激に下がる、その点と \(a\) との距離 \(x-a\) を収束半径という。
もっと数学的にいうと、べき級数であるテーラ展開式の右辺の級数が収束して、展開式が成立する収束域を収束半径という。
式❼、❽ の下線の項はテーラ級数の一般項【参照先】の定数部に相当します。
この一般項から収束半径 r が求まる。それがこの先で学ぶダランベールの判定法です。 【参照先】
ここでは使い方を紹介します。
(以下を読んで、例題1 に進めばよく解る!)
ダランベールの判定法
テーラ展開、マクローリン展開はべき級数(整級数)で表されているのでこの判定法が使える。
\(a_n,a_{n+1}\)はべき級数のn 番目と n+1 番目の定数部である。
まず、n 番目と n+1 番目の定数部の比の極限を ℓ として:
\(ℓ=\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left| \frac{a_{n+1}}{a_n}\right|\)
が存在するとき、その極限値の逆数は収束半径である。
\(r=\frac{1}{ℓ}\) \(\quad (-r\lt x\lt r) \)
この r は近似できる領域の半径である。

例題1 \(e^x\) のマクローリン展開を求めよ
\(e^x\)は何回微分しても変わらない奇妙な関数です。(∴無限回微分可能)
\(f'(x)=(e^x)'=e^x=f''(x)=f^{(3)}(x)\)\(=f^{(4)}(x)=f^{(n)}(x) \)
\(f'(0)=e^0=1\)

\(f'(0)=f''(0)=f^{(3)}(0)=f^{(4)}(0)\)\(=f^{(n)}(0)=e^0=1\)

\(f(x)=f(0)+\frac{f'(0)}{1!}x+\frac{f''(0)}{1!}x^2+\) \(\cdots+\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^{n} + \cdots\)
\(=1+\frac{1}{1!}x+\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{3!}x^3+\) \(\cdots +\underline{ \frac{1}{n!}x^n + \frac{1}{(n+1)!}x^{n+1} }+\cdots :❾ \)

ここで fig1 のグラフの考察してみる。

・1次近似は: \(f(x)=1+\frac{1}{1!}x\)
 …\(f(x)\)の原点での接線の式です。
・2次近似は: \(f(x)=1+\frac{1}{1!}x+\frac{1}{2!}x^2\)
・3次近似は: \(f(x)=1+\frac{1}{1!}x+\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{3!}x^3\)

図から分かるように、高次になるに従い、精度がよくなる…これがテイラー展開、マクローリン展開。

式❾の下線の項は一般項、収束半径を求めるためです。(後述します)
一般項は前段の各項の変化の流れから求める。
収束半径を求める必要がなければ一般項は必須ではない。

マクローリン展開
  fig1 \(e^x\) 

ダランベールの判定法より収束半径を求める。
求めた式❾の下線部( n, n+1 項目)の一般項の定数部は:
\(a_n=\frac{1}{n!} \quad\) \( a_{n+1}=\frac{1}{(n+1)!} \)
これを以下の式に代入して次の極限値ℓ を求める:
\(ℓ=\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left| \frac{a_{n+1}}{a_n}\right|\) \(=\displaystyle\lim_{n \to \infty} |\frac{ \frac{1}{(n+1)!} }{ \frac{1}{n!} }|\) \(=\displaystyle\lim_{n \to \infty} |\frac{ n!}{(n+1)!}|\) \(=\displaystyle\lim_{n \to \infty} |\frac{1}{(n+1)}|=0\)
収束半径 r は ℓ の逆数であるから
\(\therefore r=\frac{1}{r}=\infty\) \(\quad (-\infty\lt x\lt \infty)\)
\(\infty\) とは関数 f(x) の定義域の全ての点において収束することを意味する。

例題2 \(sin\ x\) のマクローリン展開を求めよ
\(f'(x)=(sin\ x)'=cos\ x\) \(\quad f''(x)=(cos\ x)'=-sin\ x\)
\(f^{(3)}(x)=(-sin\ x)'=-cos\ x\)\(\quad f^4(x)=(-cos\ x)'=sin\ x\)

\(f'(0)=1, \ f''(0)=0, \ \) \(f^{(3)}(0)=-1,\ f^{(4)}(0)=0\)
\(sin\)は周期関数なので 5回目の微分で元に戻る。
\(f(x)=f(0)+\frac{f'(0)}{1!}x+\frac{f''(0)}{1!}x^2+\frac{f^{(3)}(0)}{2!}x^2\) \(+\frac{f^{(4)}(0)}{4!}x^4+\) \(\cdots+\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^{n} + \cdots\)
\(=0+\frac{1}{1!}x+0-\frac{1}{3!}x^3+0+\frac{1}{5!}x^5+0+\frac{1}{7!}x^7\) \(\cdots + \frac{(-1)^{(n-2)}}{(2n-1)!}x^{(2n-1)}+0+ \frac{(-1)^{(n)}}{(2n+1)!}x^{(2n+1)} +\cdots \)
\(=\frac{1}{1!}x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5+\frac{1}{7!}x^7\) \(\cdots + \frac{(-1)^{(n-2)}}{(2n-1)!}x^{(2n-1)}+\frac{(-1)^{(n)}}{(2n+1)!}x^{(2n+1)} +\cdots \)

収束半径は:
\(ℓ=\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left| \frac{a_{n+1}}{a_n}\right|\) \(=\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left| \frac{ \frac{\cancel{(-1)^{(n)}}}{(2n+1)!} }{ \frac{\cancel{(-1)^{(n-2)}}}{(2n-1)!} }\right|\)

\(=\displaystyle\lim_{n \to \infty} |\frac{(2n-1)!}{(2n+1)!}|\) \(=\displaystyle\lim_{n \to \infty} |\frac{1}{2n(2n+1)}|=0\)
\(\therefore r=\frac{1}{r}=\infty\) \(\quad (-\infty\lt x\lt \infty)\)
マクローリン展開
  fig2 \(sin\ x\)

例題3 \(log(1+x)\) のマクローリン展開を求めよ
\(f'(x)=log(x+1)'=\frac{1}{(1+x)}=(1+x)^{-1}\) \( \ f''(x)=((1+x)^{-1})'=-(1+x)^{-2}\)
\(f^{(3)}(x)=(-(1+x)^{-2})'=2(1+x)^{-3}\) \( \ f^{(4)}(x)=(2(1+x)^{-3})'=-6(1+x)^{-4}\)
\(f^{(5)}(x)=(-6(1+x)^{-4})'=24(1+x)^{-5}\)

\(f'(0)=1, \ f''(0)=-1,\) \( \ f^{(3)}(0)=2, \ f^{(4)}(0)=-6, \ f^{(5)}(0)=24 \)

\(log(1+x)=f(0)+\frac{f'(0)}{1!}x+\frac{f''(0)}{2!}x^2+\frac{f^{(3)}(0)}{3!}x^3\) \( +\frac{f^{(4)}(0)}{4!}x^4+\frac{f^{(5)}(0)}{5!}x^5+\) \( \cdots+\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n+ \frac{f^{(n+1)}(0)}{(n+1)!}x^{n+1} \)

\(=0+\frac{1}{1!}x-\frac{1}{2!}x^2+\frac{2}{3!}x^3\) \(-\frac{6}{4!}x^4+\frac{24}{5!}x^5+\) \( \cdots +(-1)^{n-1}\frac{x^n}{n}+ (-1)^{n}\frac{x^{n+1}}{n+1}\)

\(=x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}\) \(-\frac{x^4}{4}+\frac{x^5}{5}+\) \( \cdots +\frac{(-1)^{n-1}}{n}x^n + \frac{(-1)^{n}}{n+1}x^{n+1}\)

収束半径r
\(ℓ=\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left| \frac{a_{n+1}}{a_n}\right|\) \(=\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left| \frac{ \frac{\cancel{(-1)^n}}{(n+1)}} {\frac{\cancel{(-1)^{(n-1)} }}{n}}\right|\) \(=\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left| -\frac{n}{(n+1)} \right|=1\)

\(\therefore r=\frac{1}{ℓ}=1\)
これより\(-1\lt x \lt 1\) の範囲においてマクローリン展開が成り立つ。

\(y=log(1+x)=logA\)のグラフの要点

\( \begin{array}{c|c|c} \hline y=logA & A=e^y  & x=A-1\\ \hline -\infty & 0   & -1   \\ \hline 0    & 1   & 0 \\ \hline 1    & e^1=e  & e-1 \\ \hline \end{array} \)


マクローリン展開
  fig3 log(1+x)


マクローリン展開
 fig4 参考
 fig3 はfig4 を(-1)左にシフトしたグラフである
 

例題4 \(\sqrt{1.8}\) の近似値を求めよ (マクローリン展開を使い)
x の値を変えて2通りで求めてみる。

1.\(\sqrt{1.8}=\sqrt{1+4x}=f(x),\ x=0.2\) として求める。
\(f(0)=1\) \(, f'=2(1+4x)^{-\frac{1}{2}} \) \(,\ f''=-4(1+4x)^{-\frac{3}{2}}\) \(,\ f'''=24(1+4x)^{-\frac{5}{2}}\)

\(f'(0)=2,\ f''(0)=-4,\ f'''(0)=24\)

\(f(x)≒f(0)+f'(0)x+\frac{f''(0)}{2!}x^2+\frac{f'''(0)}{3!}x^3\) \(=1+2(0.2)-\frac{4}{2}(0.2)^2+\frac{24}{6}(0.2)^3=1.352\)
(真値\(\sqrt{1.8}=1.34164\))

2.\(\sqrt{1.8}=\sqrt{1+2x}=f(x),\ x=0.4 \) として求める。
\(f(0)=1\) \(, f'=(1+2x)^{-\frac{1}{2}} \) \(,\ f''=-(1+2x)^{-\frac{3}{2}}\) \(,\ f'''=3(1+2x)^{-\frac{5}{2}}\)

\(f'(0)=1,\ f''(0)=-1,\ f'''(0)=3\)

\(f(x)≒f(0)+f'(0)x+\frac{1}{2!}f''(0)x^2+\frac{1}{3!}f'''(0)x^3\) \(=1+1(0.4)-1(0.4)^2+3(0.4)^3=1.432\)
(真値\(\sqrt{1.8}=1.34164\))

この例では平方根でしたが、チョット複雑な累乗根も求めることができます。
1 と 2 の結果の評価は皆さんにお任せします。

例題5 \(\sin(1)\) の近似値を求めよ (マクローリン展開を使い)
既にマクローリン展開が求まっているなら x に代入するだけ!
例題2 の結果 \(f(x)=sinx\) \(=\frac{1}{1!}x-\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5+\cdots\) を使う。

\(sin(1)≒\frac{1}{1!}(1)-\frac{1}{6}(1)^3+\frac{1}{120}(1)^5=0.8416\)
(真値\(sin(1)=0.84147\))


その他のマクローリン展開例

•一般項の\(n\) のはじめは \(n=0\)である。(1 の場合もあるので注意、初項を見て判断する。)
• 一般項を応用すると次のように書ける。
\(\quad cos x=\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} \color{red}{ \frac{(-1)^n}{(2n)!}x^{2n} }\)

\(\underline{ cos\ x}=1-\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4-\frac{1}{6!}x^6+\cdots\) \(+\color{red}{\frac{(-1)^n}{(2n)!}x^{2n}} +\cdots\)
 収束半径 \(r=\frac{1}{r}=\infty\)
 \(-\infty\lt x \lt \infty\)

\(\underline{(1+x)^α}=1+αx+\frac{α(α-1)}{2!}x^2+\cdots+\color{red}{\frac{α(α-1)(α-2)\cdots(α-n+1)}{n!}} x^n\)

朱記部を組み合わせ/2項係数の記号で表すと:
\({}_n \mathrm{ C }_α = \binom{ n }{ α } =\frac{α(α-1)(α-2)\cdots(α-n+1)}{n!}\)

 収束半径 \(r=\frac{1}{r}=1\)

\(\underline{e^{-x}}=1-\frac{1}{1!}x+\frac{1}{2!}x^2-\frac{1}{3!}x^3+\)\(\cdots+(-1)^n\frac{1}{n!}x^n+\cdots\)
 \(-\infty\lt x \lt \infty\)

\(\underline{sinh\ x}=x+\frac{1}{3!}x^3+\frac{1}{5!}x^5+\frac{1}{7!}x^7+\)\(\cdots+\frac{x^{2n+1}}{(2n+1)!}+\cdots \)
 \(-\infty\lt x \lt \infty\)

\(\underline{cosh\ x}=1+\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{4!}x^4+\frac{1}{6!}x^6+\)\(\cdots+\frac{x^{2n}}{2n!}+\cdots \)
 \(-\infty\lt x \lt \infty\)

\(\underline{tan\ x}=1+\frac{1}{3}x^3+\frac{2}{15}x^5+\frac{17}{315}x^7+\)\(\cdots+\color{red}{a_n}+\cdots \)
 収束半径 \(r=\frac{1}{r}=\frac{\pi}{2}\)
\(-\frac{\pi}{2}\lt x \lt \frac{\pi}{2}\)
一般項 \(a_n\):(\(n\)は\(n=1\) からはじまる。)
\(\color{red}{a_n}=\frac{B_{2n}(-4)^n(1-4)^2} { (2n)!}x^{2n-1}\)
\(B_{2n}\) はベルヌーイ数【参照先】といい、詳細は言及しませんが、使う数だけ書いておきます。
\(B_0=1\)\(,\ \)\(B_1=-\frac{1}{2}\)\(,\ \)\(B_2=\frac{1}{6}\)\(,\ \)\(B_3=0\)
\(B_4=-\frac{1}{30}\) \(,\ \)\(B_5=0\)\(,\ \)\(B_6=\frac{1}{42}\)

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]

テイラー展開の式の特徴を捉え、楽に覚えよう!
下式の ○記号、□記号に囲まれた数値は同じです。
すなわち、2番目以降の各項の
・ 係数の分母の「階乗数」
・f の「微分回数」
・(x-a)の「次数 」 (累乗数)
下式をイメージしていれば、長い式も書きだせるはずです。
テイラー展開