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湘南理工学舎
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2021/06/11

 楽しく学ぶ…微分積分

 逆関数とその微分

 --目 次--
本題の準備(おさらい)
 (単調性について)
逆 関 数
逆関数のグラフ
逆関数の微分
例題(逆関数の導関数)
 ∗(1)\(\ y=\sin^{-1} x\)
 ∗(1')\(\ y=\sin^{-1} \frac{x}{a}\)
 ∗(2)\(\ y=\tan^{-1} x \)
 ∗(2')\(\ y=\tan^{-1} 2x \)
 ∗(2'')\( \ y=\tan^{-1} \frac{b}{ax} \ \)
 ∗(3)\(\ y=x^{\frac{1}{3}}\)
逆三角関数の主値(閑話)

本題の準備(おさらい)
 今回は逆関数の微分を行いますが、先には逆関数の積分が待っています。
この「逆関数の微積分」により微分積分が苦手になる人もいます。
分かり易く説明していきます。
ここで少しおさらいをします。

単調性について
数列が単調増加とは:
  数列{ \( {a_n} \) } に関し、\( a_1 \leq a_2 \leq \cdots a_n \leq \cdots \) のこと。

関数\( f(x) \)が単調増加とは:
 \( x_1 \lt x_2 \) で \( f(x_1) \leq f(x_2) \) が成り立つ場合。

関数\( f(x) \)が狭義単調増加とは:
 \( x_1 \lt x_2 \) で \( f(x_1) \lt f(x2) \) が成り立つ場合。

・上は増加の説明でしたが、減少の場合の単調減少、狭義単調減少は変数の\( x_1\lt x_2 \) に対して\( f(x) \)減少するもの。
・狭義があれば広義もありますね、単に「単調増加(減少)」とは「広義」のことが多く、通常この広義をつけていません。
・単に「単調」と言っている場合がありますが「文書の流れ」でこれらを判断するしかありません。
これから逆関数に進みます。
逆 関 数
 関数 f(x) がある区間で連続かつ狭義単調増加(減少)であれば逆関数が存在します。
単なる単調増加では、逆関数は存在しない。
\( x_1 \lt x_2 \lt x_3 \lt x_4\) で \( f(x_1) \leq f(x_2)=f(x_3)\) \(=f(x_4)=C \)
となることもあります。
x と y は1対1でなければならないが、\(f(x)=C\) に対し x が複数存在してしまう。
関数 y=f(x) は変数 x に対しただ一つの y が決まり、逆にして y を決めた時に x がただ一つ決まるとき、 逆関数が存在し x は y の関数となり \( x=g(y) \) と表します。

関数 y=f(x) が狭義単調増加(減少)であれば、その逆関数は狭義単調増加(減少)です。

 関数\( x=g(y)\) の x と y を入れ替える操作します。➡\( \ y=g(x) \) となります。
なぜ入れ替えるかは…独立変数を x、従属変数を y で表す慣習に従っているからです。

この \( y=g(x) \) を \( f(x) \) の逆関数といいます。

一般に \( f(x) \)の逆関数を \( f^{-1}(x) \) 「 f インバース x 」と表します。

まとめると:
\( \ y=g(x)=f^{-1}(x) \) となります。… x と y を入れ替えている形です。

注:こような逆関数がある区間で存在する条件が上記のアンダーライン部 (キーワードは…連続かつ狭義単調)です。
またその逆関数も連続かつ狭義単調となります。

例:\( y=\sqrt {x} \) の逆関数:
 \( x=y^2 \) 記号の入れ替えて次のようになる。
 \( y=x^2 \) …これが与式の逆関数
 また \( y=g(x) \ =f^{-1}(x) \) となる。
 値域と定義域も入れ替わる。  
 
逆関数のグラフ
下図は\( \ y=x^2 \)(橙色)とその逆関数\( y=\pm \sqrt{x} \)(灰色) のグラフ(正の部分)です。
2つの関数は\( f(x)=x \)の直線に関して対称です。
関数\( f(x) \) のある点\( (b_0 , a_0) \)に対応する逆関数\( g(y) \)の点は\( (a_0 , b_0) \)です。
関数\( f(x) \)の\( (a_0)=f(b_0) \)に対し逆関数のほうは\( (b_0)=g(a_0) \)となります。
2点は互いに x と y が逆の関係にあり、それが\( f(x)= x \)という中線(青線)に関して対称となっています。

逆関数の対称
 

逆関数の微分
 次のとおり逆関数と元の関数の微分は互いに逆数である。
(1)逆関数の微分はもとの関数の微分の逆数…もとの関数が既知の時など

(2)もとの関数の微分は逆関数の微分の逆数…逆関数が既知の時など


\( y=f(x) \)の逆関数を\( x=f^{-1}(y)=g(y)\)として\(\underline{ x=g(y)} \) と表せる。
両辺をxで微分すると(合成関数の微分を使う):
\( \frac{d(x)}{dx}= \ 1 \ = \frac{d}{dx} \left( g(y) \right)\) \( = \frac{dg(y)}{dy} \frac{dy}{dx} =\frac{dx}{dy} \frac{dy}{dx} \)

\( \therefore \underline { \frac{dx}{dy}= \frac{1}{\frac{dy}{dx}} } \)

または:
\( \underline { \frac{dy}{dx}= \frac{1}{\frac{dx}{dy}} }  \)

となります。(上の2つの式は設問内容や微分のしやすさで決める)
さっそく次の例題に進み、実感してみましょう。

(1)\( y=\sin^{-1} x \ \)  
\( y=\sin^{-1} x \) とすると\( \ x=\sin y \ \)と表せるので
\( \frac{dy}{dx}= \frac{1}{\frac{dx}{dy}} = \frac{1}{\frac{d(\sin y)}{dy}} =\frac{1}{\underline{\cos y}}\) \(=\underline{\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}} \quad \tiny (a) \)
上の下線の項は \( \sin^2 y + \cos^2 y =1 \) から導出。
\( cos y =\pm \sqrt{1-\ sin^2 y}\)\(=\sqrt {1-x^2 } \)
また答え(a)の \( \sqrt{ \cdots } \)ルートにマイナスがないのは定義域を主値[-\( \pi \)/2,\(\pi\)/2](※1)を前提にしたからです。 (※1)は【コーヒーブレイク/閑話】にて説明。

  

(1')\( y=\sin^{-1} \frac{x}{a} \ \)

より一般化した式ができます。
\( \ \frac{x}{a}=\sin y →\) \( \ x=a\ sin y \ \)
\( cos y =\pm \sqrt{1-\ sin^2 y}\)\(=\sqrt {1- (\frac{x}{a})^2 } \)
\( \frac{dy}{dx}= \frac{1}{\frac{dx}{dy}} = \frac{1}{\frac{d( a\ sin y)}{dy}} =\frac{1}{\underline{ a\ cos y}}\) \( =\underline{ \frac{1}{ a \sqrt {1- (\frac{x}{a})^2 } } } \quad \tiny (a)' \)
  

(2)\( y=\tan^{-1} x \ \)

\( y=\tan^{-1} x \) とすると\( \ x=\tan y \ \)と表せるので
定義域 (-∞ < x < ∞)
\( x=tan\ y = \frac{sin\ y}{cos\ y} \)
\( (x)'=(tan\ y)'\) \( = \frac{(sin\ y)'(cos\ y)-(sin\ y)(cos\ y)'}{(cos\ y)^2} \)
\( = \frac{(cos\ y)^2 +(sin\ y)^2}{ {cos}^2y } = {1+{tan}^2y} \)
これより
\( \frac{dy}{dx}= \frac{1}{\frac{dx}{dy}} = \frac{1}{ \frac {d(\tan y)}{dy}} \) \(=\frac{1}{ {1+{tan}^2y}}= \underline{\frac{1}{ {1+x^2}}} \)
  

(2')\( \ y=\tan^{-1} 2x \ \)

商の微分を使い解く。
\( y=\tan^{-1} 2x \) とすると\( \ 2x=\tan y \ \)
定義域 (-∞ < 2x < ∞)
\( 2x=tan\ y \)
\( x=\frac{1}{2} tan\ y = \frac{1}{2} \frac{sin\ y}{cos\ y} \)
\( (x)'=(\frac{1}{2} tan\ y)'\) \( = \frac{1}{2} \frac{(cos\ y)^2 +(sin\ y)^2}{ {cos}^2y }\) \(= \frac{1}{2}({1+{tan}^2y}) \)
これより
\( \frac{dy}{dx}= \frac{1}{\frac{dx}{dy}}\) \(=\frac{1}{ \frac{d}{dy}(\frac{1}{2} tan\ y)}\) \(=\frac{1}{\frac{1}{2}({1+{tan}^2y})}= \underline{\frac{2}{ {1+4x^2}}} \)
  

(2'')\( \ y=\tan^{-1} \frac{b}{ax} \ \)

合成関数を使い解く

\(u=\frac{b}{ax}\) とおくと \(\ u=tan\ y\)
\(\frac{dy}{dx}=\frac{dy}{du} \frac{du}{dx} \)
\(\frac{dy}{du}=\frac{1}{ \frac{du}{dy} }\) \(=\frac{1}{ \frac{1}{cos^2 y} }\) \(=\frac{1}{ \frac{cos^2y +sin^2y}{cos^2y} }\) \(=\frac{1}{1+tan^2 y}\) \(=\frac{1}{1+u^2}\)
\(\frac{dy}{dx}\)\(=\frac{dy}{du} \frac{du}{dx}\) \(=\underline{ \frac{1}{1+u^2} \cdot (u)' }\) \(= \frac{1}{1+(\frac{b}{ax})^2} \cdot \frac{-b}{ax^2}\) \(= \frac{a^2b^2}{b^2+a^2x^2} \cdot\frac{-b}{ax^2}\)
\(\therefore \frac{dy}{dx}= \frac{-ab}{b^2+a^2x^2}\)

上記よりこの問題の解を一般化すると:
 \(y=tan^{-1}u \) に対して (u はxの関数)
\(\underline{\frac{dy}{dx}=\frac{1}{1+u^2} (u)'}\)

  

(3)\( y=x^{\frac{1}{3}} \ \)

\( \frac{dy}{dx}=\underline{ \frac{1}{3} x^{-\frac{2}{3}} }\)ですが、
これの逆関数を用いて解いてみる。
すなわち:
\(x=y^3\)
\(y=x^{\frac{1}{3}} \ \)
が既知とします。
\( \frac{dx}{dy}= \frac{d}{dy}(y^3)=3y^2\)
\( \frac{dy}{dx}= \frac{1}{\frac{dx}{dy}} \) \(= \frac{1}{3y^2}\)
\(= \frac{1}{ 3( x^{\frac{1}{3}})^2 } \) \(= \frac{1}{ 3 x^{\frac{2}{3}} }\) \(= \underline { \frac{1}{3} x^{-\frac{2}{3}} } \)

coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…主値とは(※1)

逆三角関数の主値(例題(1)の※1)

 
逆関数の主値

  【 \( cos^{-1} \)曲線 x-y(横-縦) 】

 
簡単にいうと、三角関数は周期関数なので、グラフを見ての通り、定義域の中の、例えば x=0.4 に対して y の値が多数、存在します。
そこでその中で基本となる一周期に限定した値域主値という。
 \( cos^{-1} x \) の場合:主値は\( [0, \pi]\) ( 定義域は[-1,1] )
 \( sin^{-1} x \) の場合:主値は\( [-\frac{\pi}{2} , \frac{\pi}{2}] \) ( 定義域は[-1,1] )
 \( tan^{-1} x \) の場合:主値は\( (-\frac{\pi}{2} , \frac{\pi}{2}) \) ( 定義域は\( (- \infty ,\infty)\) )
 (上の\( tan^{-1} x \) の定義域、値域は開区間で定義されているのにご注意。)