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2020/06/26  

 楽しく学ぶ…イプシロン・デルタ論法

 関数の連続性
イプシロン・デルタ論法

 (function continuity and ε-δ definition of limit)
 --目 次--

関数の連続・不連続-イメージ図
ε-δ 論法1
例題1
例題2
ε-δ 論法2
ε-δ 論法3
例題3
閑話


 関数の収束性や連続性を証明する方法がイプシロン・デルタ論法です。
一般に関数f(x) が点 \(a\) で連続とは、「点 \(a\) で f(x) のグラフがつながっている」ことをいう。
しかし数学的に連続とは関数が点\(a\)で収束して極限値が存在すること、それを証明するのが\( ε-δ\) 論法です。
以下にグラフを示ので、イメージを直感して下さい。 (図の下に解説を付加している。)
  関数の連続・不連続-イメージ図  
 Fig1,2 は\( f(x)\) は目標値\(f(a)\)から\(ε\) 離れた位置内に収まっているイメージ。
【Fig1連続の場合1/2:ε が大】
ε・δ1
  【Fig2連続の場合2/2 εが小】 
ε・δ2

【Fig1 連続1/2 解説】
はじめに Y軸(f(x))上に 小さな \(ε\) をとって、それに対応するX軸(x)上に、さらに小さな \(δ\) がある。(図では太線)、
x とa の距離、すなわち \(|x-a|\) が \(δ\) より小さくなるようにできるならば、
さらに \(|f(x)-f(a)|\)は\(ε\) より小さくなり、\(ε\) 内に収まる

ε は任意(十分小さくな数)である。
どんな小さな ε があっても、それに対応できる δ がある。

これを式で表わすと:
\(0<|x-a|<δ\ \Rightarrow\ |f(x)-f(a)|<ε \):❶
\( \quad \ A\ \Rightarrow\ B \) 「A ならば B である」の意味。
注:\(δ\) は \(ε\) の関数として、\(δ(ε)\)と表わすこともある。

【Fig2 連続2/2 解説】さらに \(ε\) を小さくする
さらに小さな \(ε\) をとっても、それにあった十分小さな\(δ\)がとれれば、\(|x-a|<δ\) となる。
それによって、上記と同じ式❶で表せる。
 このことは、何回繰り返しても、いくらでも「\(ε,δ\)」が小さくなり、\(|x-a|\)が\(δ\)より小さくなる。
すなわち\(f(x)\)を\(f(a)\)にいくらでも近づけて \(|f(x)-f(a)|<ε\)となる。 

これより、「\(\ 0<|x-a|<δ\ \Rightarrow\ |f(x)-f(a)|<ε\ \)」 がいえて:
\(\underline{ \displaystyle \lim_{ x \to a} \ f(x)=f(a)=α }\)

となる。…極限値が存在し、点 a で連続である。
ポイント:

どんなに小さな\(\mathbf{ε}\) にも,対応できる\(\mathbf{δ}\) があること。
(\(\mathbf{ε}\)の指令に\(\mathbf{δ}\)が応えられること。)


 【Fig3不連続の場合1/2 εが大】
ε・δ1
 【Fig4不連続の場合2/2 εが小】
ε・δ2
 

【Fig3 不連続1/2 解説】
不連続な関数です。 \(ε\)が大きいときは連続と見える
しかし\(ε-δ\) 論法では「\(ε\)は任意で、いくらでも小さくなること」
が条件です。 ➝Fig4で不連続が判る。

【Fig4 不連続2/2 解説】
さらに小さな\(ε\)をとり、それにあった十分に小さい\(δ\)をとると \(0<|x-a|\)が\(δ\)より小さくできるが
\( |f(x)-f(a)| \) が \(ε\) より外れてしまい、 \(|f(x)-f(a)| > ε\)となる。
これより極限値が存在せず、不連続であることが判ります。

参考に高校での関数の極限の定義は:
x が限りなく a に近づき、f(a)が限りなく\(α\) に近ずくとき、\(α\) を f(x) の極限値という。
 \(\displaystyle \lim_{ x \to a} \ f(x)=f(a)=α \) となる。…ことでした。

以上で ε-δ 論法の本質的なことは理解されたでしょう!
次は 論理記号表記 による ε-δ 論法 とその説明です。
  \( ε-δ\) 論法1  
 \( \forall ε>0, \quad \exists δ \quad s.t.\)
\( \quad 0<|x-a|<δ\) \( \Rightarrow |f(x)-f(a)|<ε \)
 このとき \(\displaystyle \lim_{ x \to a} \ f(x)=f(a)\) となる。 

どんなに小さな正の数\(\mathbf{ε}\)とっても、\(|f(x)-f(a)|<\mathbf{ε}\) となるような 
\( 0<|x-a|<\mathbf{δ}\) となる \(\mathbf{δ}\) が存在すれば、\( \displaystyle \lim_{ x \to a} \ f(x)=f(a) \) となる。

大雑把にいうと:
\(|f(x)-f(a)|<ε\) となるどんなに小さな \(ε\) がきても、\( 0<|x-a|<δ\) となる\(δ\) が応えられるなら
その関数はその点で連続であるといえる。

論理記号の意味:
•\(\ \forall ε \):「すべてのε (all)」または「任意のε (any)」
•\(\ \exists δ \):「δが存在する (exist)」 
•\(\ s.t.A \):「Aのような (such that)」
•\(\ A \Rightarrow B \):「AならBである」 
論理記号表記は英文の流れだから、初めて見る日本人は困惑する、慣れるしかないですね!
参考に下の【閑話】に英文の「ε-δ論法」を載せておきました。

注: 「\(0<|x-a|<δ\)」は変数 \(x\) は外側から 「\(a\)に近づが、\(a\)にはならない」を意味する。


    
  【例題1】  次式を\( ε-δ\) 論法により証明せよ。

\( f(x)= 2x-5 \)
\( \displaystyle \lim_{ x \to 5} \ (2x-5) = 5 \)

ε は任意、それに対応する δ を \(\underline{ |x-5|<δ }\) として、\( ε-δ\)論法にあてはめて次のように証明する。

 \( \forall ε>0, \ \exists δ \quad s.t.\)
\( \quad 0<\underline{|x-5|}<δ\) \(\ \Rightarrow \ |(2x-5)-5|<ε \)
\(|x-a|<δ\)として
\(\mathbf{|x-5|<δ}\) \(\ (1)\) (x と δ の関係式)

\(\mathbf{|f(x)-f(a)|< ε}\):として
\(\mathbf{|(2x-5)-5|< ε }\) \(\ (2)\) (δ を求める)

\(\mathbf{2|x-5| <ε}\) \(\ (2)'\)

式(1)の\(|x-5|<δ\) から (2)' は:
\(2|x-5| <ε \rightarrow \underline{2δ <ε}\) となる。

この式は、どんなに小さな \(ε\) がきても \(δ\) が応えられることを意味する。

これより次のことがいえる
\(2|x-5|<ε\) となるよう \(|x-5|<δ\) となる δ が存在する。
\(\therefore |x-5|<δ \ \Rightarrow \ |(2x-5)-5|<ε \ \)が証明できた。 

表現を変えて:
\( \quad 5-δ <x < 5+δ\ \Rightarrow\ |(2x-5)-5|<ε \)
【確認】
求めた\(δ\)において
\( |f(x)-f(a)|\)が\(ε\)未満になることを確かめる。
 \(δ <\frac{ε}{2} \)より小さい、 \(δ=\frac{ε}{3}\) とする。

\( |f(x\pm δ)-f(a)|\)
\(\ = |(2(x\pm\frac{ε}{3})-5) -(2x-5)|\) \(\ = |(2(5\pm\frac{ε}{3})-5) -(10-5)|\) \(\ =|10\pm\frac{2ε}{3}-10|=\frac{2ε}{3}<ε\)

…証明終わり

 
  【例題2】  次式を\( ε-δ\) 論法により証明せよ。

\( f(x)=x^2\)

\( \displaystyle \lim_{ x \to 2} \ x^2=4 \)

証明することは:
εは任意、δは\(\underline{ |x-2|<δ }\) として
「どんなに小さな\(ε\)に対しても…になるような \(δ\) が存在して…」の以下が証明です。
 \( \forall ε>0, \ \exists δ \quad s.t.\)
\( \quad 0<\underline{|x-2|}<δ\)\( \Rightarrow |x^2-4|<ε \)
\(\mathbf{|x-a|<δ}\)として
\(\mathbf{|x-2|<δ } \quad (1) \)  (\(x\)と\(δ\)の関係式)

\(\mathbf{|f(x)-f(a)|< ε}\):として
\(\mathbf{|x^2-4|<ε} \quad (2) \)

要は\(|x^2-4|<ε\) になるような \(δ\) を求める。(※1)

まず式(2)を変形し次式が成り立つ。(式(1)を使う)
\(\color{blue}{|x^2-4|}= \underline{|x-2|}|x+2|<\underline{δ}\ \color{red}{|x+2|} \)(式(1)より)

\(|x+2|\)を以下に展開する。

\(\color{red}{|x+2|}=|x-2+4|=\underline{|(x-2)+(4)|}\) \(\underline{ \leq|x-2|+|4|}\leq δ+4\)(式(1)より)

(上記の下線部は三角不等式を使っている)
したがって式(2)は:

\(\color{blue}{|x^2-4|}<δ|x+2|<δ(δ+4) \) \(=δ^2+4δ < ε\)

\( \therefore δ^2+4δ-ε <0 \)

これを解いて:(※)

\(δ=-2 \pm \sqrt{4+ε} \)

\(δ\) は正の数なので
\(\color{red}{δ} \lt -2 + \sqrt{4+ε} \ \)である。

これは \(ε-δ\)論法を満足する \(δ\) を求めたことになる。(上記※1
\(\mathbf{|f(x)-f(a)|< ε}\) となるような \(\mathbf{|x-a|<δ}\) が存在
\( \Downarrow \)
以上より \(\color{blue}{|x^2-4|}<ε\) となるような \(|x-2|<\color{red}{δ}\) の存在を確認した。

\(|x-2|<δ\) \( \Rightarrow |x^2-4|<ε\) が証明できた。

注(※):2次関数の不等式
\(y=ax^2+bx+c \lt 0\)のときの解:
\(y=0\)のとき \(x=α,\ β\) かつ \(α \lt β\)とすると
解: \(\quad α\lt \color{red}{x\lt β}\)

【確認】
\(δ \lt -2 + \sqrt{4+ε} \ \)だから
\(\ δ=\frac{1}{2}(-2 + \sqrt{4+ε}) \ \)として:

\( |f(x)-f(a)|\)
\(\ =|\{x+\frac{1}{2}(-2 + \sqrt{4+ε})\}^2 - 2^2| \)

\( \  \color{red}{ =ε-\sqrt{4+ε} } <ε\) …証明終わり
ε-δ 論法にはあと2つのタイプがあります。
 \(\displaystyle \lim_{\color{red}{ x \to \infty} } \ f(x)= A \) \(\quad , \)  \(\displaystyle \lim_{\color{red}{ x \to -\infty} } \ f(x)= A \) です。

  この ε-δ 論法は数列の ε-N 論法によく似ています、比較すると:
\( \begin{array}{c|c} \hline ε-N\ 論法\quad & ε-δ\ 論法\quad \\ \hline N:自然数 & δ:実数\\ \hline n:自然数  & x:実数\\ \hline n \gt N & x \gt \delta\\ \hline \end{array} \)
(ε-δ 論法の|x| と |δ| は大きな数である)
この違いを意識し、また ε・N 論法を思いだしてください。

ε・N 論法では
\( \forall ε>0 \quad \exists N>0 \quad s.t.\ n >N\) \(\ \Rightarrow\ |a_n- α|<ε \)
これにより \(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n= α\)となる。

これから残る2つのタイプの ε-δ 論法を紹介します。
注:\(x \to \infty \)の極限だから、ここでの「\(δ\) は大きい数」に注意。

  \( ε-δ\) 論法2  \(\quad (x\rightarrow \infty\))
 \( \forall ε>0, \quad \exists δ>0 \quad s.t.\) \( \quad x>δ\ \Rightarrow\ |f(x)-α|<ε \)
 このとき \(\displaystyle \lim_{ x \to \infty} \ f(x)=α \) となる。 

どんなに小さな正の数 ε をとっても \(|f(x)-α|<ε\) となるような \(x>δ\) となる δ が存在すれば
\(\displaystyle \lim_{ x \to \infty} \ f(x)=α \) である。

  \( ε-δ\) 論法3   \(\quad (x\rightarrow -\infty\))
 \( \forall ε>0, \quad \exists δ<0 \quad s.t.\) \( \quad \color{red}{x<δ}\ \Rightarrow\ |f(x)-α|<ε \)
 このとき \(\displaystyle \lim_{ \color{red}{ x \to -\infty}} \ f(x)=α \) となる。 

どんなに小さな正の数 ε をとっても \(|f(x)-α|<ε\) となるような \(x <δ\) となる δ が存在すれば
\(\displaystyle \lim_{ x \to -\infty} \ f(x)=α \) である。

  【例題3】  次式を \( ε-δ\) 論法により証明せよ。

\(\underline{\displaystyle \lim_{ x \to \infty}\ \frac{x}{x+1}=1 } \)\(\quad\) (\( \quad f(x)=\frac{1}{1+\frac{1}{x}}\quad \) )

この証明は
\( x>δ\) \(\Rightarrow \) \(\underline{|\frac{x}{x+1}-1|<ε }\)
が成り立つための \(δ\) を見つけること。
\(\frac{x}{x+1}-1=\frac{1}{x+1}\) より上式の下線部は:
\(\frac{1}{x+1} \lt ε \) となり  \(\underline{ x \gt \frac{1}{ε}-1} \) である。

\( x>δ\) \(\Rightarrow \)\( \underline{x \gt \frac{1}{ε}-1} \) となるには:
\(δ \gt \frac{1}{ε}-1\) とすればよい。 これより \(x \gt δ = \frac{1}{ε}-1\) となる。 
\(ε\)はいくらでも小さくなる数だから\(x ,\ δ\) は大きい数である。
\(\therefore x \gt \frac{1}{ε}-1\) である。 

以上から どんな小さな ε に対しても:
\( \underline{|\frac{x}{x+1}-1|<ε}\) となるので関数 f は「1」に収束する。

…証明終わり


coffe

[コーヒーブレイク/閑話]…お疲れさまでした

【イプシロン・エヌ論法とイプシロン・デルタ論法】
1)ε-N 論法は数列\( \{a_n\}\)(n:自然数) が離散的に変化して収束することを証明する方法。
2)ε-δ 論法は実数の変数\(x\)が連続に変化してある定数\(a\)に限りなく近づき、関数が収束することを証明する方法。

【イプシロン・デルタ論法の英語版】  【出処】
The epsilon-delta definition(定義)
A function f from R to R is continuous at a point p ∈ R
if given ε > 0 there exists δ > 0 such that if |p - x| < δ then |f (p) - f (x)| < ε
(参考:A function f=関数 f、R=実数、 p=a、 f(p)=f(a)=α)