\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \frac{3n^2+5}{n^2+2}\) \(\quad (a_n=\frac{3n^2+5}{n^2+2})\)
【解】
\(n\rightarrow \infty\) のとき \(a_n \fallingdotseq \frac{3n^2}{n^2}=3\)
(多項式にある \(\infty\) に対して定数項の「5」「3」は無視できる )
実際に計算すると
\(a_1=\frac{8}{3},\ a_{10}=\frac{305}{102},\ a_{100}=\frac{30005}{10002} \)
従って、極限値を「3」と推測して、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n=3\) を証明する。
\(|\frac{3n^2+5}{n^2+2}-3|\lt ε\) を次のように展開する。
\(|\frac{3n^2+5}{n^2+2}-3|\)\(=|\frac{3n^2+5-3(n^2+2)}{n^2+2}|\)
\(=|\frac{-1}{n^2+2}|\)\(=\frac{1}{n^2+2}\)
\(\therefore |\frac{3n^2+5}{n^2+2}-3| =\frac{1}{n^2+2}\lt ε\)
\(\frac{1}{n^2+2}\lt ε\) \(,\quad\) \( n^2+2 \gt \frac{1}{ε} \)
\( n^2 \gt \frac{1}{ε}-2\) \(,\quad \) \(n \gt \sqrt{\frac{1}{ε}-2}\)
\(n \gt N \gt \sqrt{\frac{1}{ε}-2}\)
としてよいので
\(N=\sqrt{\frac{1}{ε}-2}\)
とする。(Nを求めたことになる)
確認を兼ねて次に進む
\( {|\frac{3n^2+5}{n^2+2}-3|}\)
\(=\frac{1}{n^2+2}\)\(\lt\)
\(\frac{1}{N^2+2}\)
\(=\frac{1}{ (\sqrt{\frac{1}{ε}-2})^2 +2}\)
\(=\frac{1}{\frac{1}{ε}}=\)
\(ε\)
(上記の青文字をつなげると:)
\(\therefore |\frac{3n^2+5}{n^2+2}-3|\) \(\lt\)\(ε\)
この数列の収束先は「0」を前回証明しました。
その時に以下の条件式の絶対値を外して、負側の「\(α-ε\)」を見ることはしませんでした。
( \(\underline{(α-ε)}<\frac{1}{n}<(α+ε)\) )
数列 \(\frac{1}{n}\) は「負」の値をとらないからでした。
収束の条件式:
\(|\frac{1}{n}-0.2|<ε\) ➀
慣れてくると式➀を見ると\(\frac{1}{n}\)は「0」に近づくから\(|-0.2|<ε\) となる。
これでは ε はいくらでも小さくならなので式➀の不等号は逆になり式➀は成り立たない。
これで証明は終わるが、以下に補足する。
式➀の絶対値を外すと:
負のとき:\(-ε\lt \frac{1}{n}-0.2 \)
(∵ 「0.2」の前後の収束状態をみるため)
\( (0.2-ε)<\frac{1}{n}<(0.2+ε)\)
\(ε=0.01\),\(\ n=10\)とすると
\(\underline{ (0.19)<0.1}<(0.21) \)
が成立せず、明らかに条件式➀が成り立たたない。
「\(α=0.1\)」に変えても同様であり、\(n=100\) を考れば0.1 に収束しないことが証明できる。
(すなわち「0」以外に収束する極限値はない)
収束しないときのε-N 論法
上記で収束しない場合について説明したが、これを ε-N 論法で定義すると:
正の数 \(ε\) をどんなに小さくしても、ある自然数\(\ N\ \)があって、
N より大きいn について
\(\underline{|a_n-α|>ε}\)
が成り立つ \(N\) が存在するとき、\(α\) は\(\{a_n\}\) の極限値ではない。
上の例題3 を ε-N 論法により簡単に解答できる
\(|\frac{1}{n}-0.2|>ε\)
\(\frac{1}{n}\rightarrow 0\) であることは、ここでは未知だが、0 に向かい減少することは明確。
従って上式が成り立つことは明らかであるので:
「正の数 \(ε\) をどんなに小さくしても、ある自然数\(\ N\ \)があって、\(|\frac{1}{n}-0.2|>ε\)であり、 「0.2」 は極限値になりえない」
と結論付けできる。(終り)---
(※1)
補足すると:
\(\frac{1}{n}\)は 0.2 より小さくなるのでその時は絶対値の中は負であり、絶対値を外す。
またn を N にして
\(\frac{1}{N} \lt 0.2-ε\) \(\quad N \gt \frac{1}{0.2-ε} \)
ε はいくらでも小さくできるので、上式に対応する N が存在する。従い上記の(※1)がいえる。
前回、数列の発散を次のように定義しました。 ここではこれを論理記号で表記します。
\( n, N \):自然数、 \(K\):実数 とすと:
任意の正の(大きな)実数 M について、ある N を適当に決めると、\(n\ge N\) を満たす、すべての n について
\( a_n >K \)ならば \(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n= + \infty \)
これを正の無限大に発散するという。
\( n, N \):自然数、 \(K\):実数 とすると:…
ⓐ
\(+ \infty\) に発散する場合:
\( \forall K ,\ \exists N \ \forall n\) \(: (\ n \ge N \Rightarrow a_n \gt K) \ \)ⓑ
上のコロン「:」は「such that」の意味。
⇒\( \displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n= + \infty \)
\(- \infty\) に発散する場合:
\( \forall K,\ \exists N \ \forall n\) \(: (\ n \ge N \Rightarrow a_n \lt K) \ \)©
⇒\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n= - \infty \)
注1:括弧の前の「:」は「s.t.」を表わす。
注2:「:」のあとの括弧「()」は計算の順序を表わす記号。
注3:上のⓐ
の記載がないとⓑは以下となる。
\( \forall K \color{red}{\in \mathbb{R}},\quad \exists N \color{red}{\in \mathbb{N}} \quad \forall n \color{red}{\in \mathbb{N}}\)
\(:( \ n \ge N \Rightarrow a_n \gt K) \) ⓑ
以上